2021年10月2日は、前日に東日本に悪天をもたらした台風第16号が日本の東に進んで温帯低気圧に変わり、関東地方は東シナ海に中心を持つ高気圧に緩やかに覆われ、天気は回復していました。しかし、夜になって下層に暖湿気が流入し、そこへ上空に寒気を伴った気圧の谷（トラフ）が通過したため、大気の状態が不安定になり、関東地方の広い範囲で雷雨となりました。羽田空港でも3時間にわたり雷を観測し、ダイバート（目的地外着陸）やホールディング（空中待機）が多数発生するなど航空交通流にも影響が出ました。今回のWEATHER TOPICSではこの日の事例について紹介します。

 関東地方では夏季になると気温の上昇により大気の状態が不安定となり、多くの雷が発生します。雷は離着陸する航空機や空港の施設、これらに関わる人たちの命に危険を及ぼすことから、雷の観測情報は航空機の運航関係者、空港内で働く方々にとって非常に重要です。

 雷はどのように観測されるのでしょうか。

 これまで本誌「羽田空港 WEATHER TOPICS」では雨や風の観測方法についてお伝えしてきましたが、今回は雷の観測方法をご紹介します。

 2020年7月11日夜は、日本海の低気圧からのびる寒冷前線が関東地方まで南下し、神奈川県から静岡県にかけて活発な対流雲が発生しました。対流雲の一部は羽田空港まで流れ込み、雷を観測しました。雷は深夜の時間帯に発生したため、航空交通流には影響ありませんでした。今回は、この日の事例解析と、新しく始まりました東京国際空港CDMでの気象台の取り組みをご紹介します。

 4～5 月頃は、日本付近の上空に寒気が流入すると、大気の状態が不安定となり広い範囲で雷雲が発達し、航空機の運航に大きな影響を及ぼすことがあります。

 今回は2015年5月に雷雲が急発達して羽田空港で雷や強風を観測する等の激しい現象をもたらした事例を中心に、上空の寒気の影響について解説します。

 2018年9月17日と18日は、関東地方で大気の状態が不安定となり、羽田空港および周辺では活発な対流雲が発生しました。17日は羽田空港の北側を中心に雷を観測し、18日は空港周辺での雷観測はありませんでしたが、東京湾上空で急発達した対流雲によりRWY05では強い下降気流に伴うマイクロバーストを観測しました。今回は両日の事例を紹介します。

 雷雲は落雷や短時間の強い雨、突風、風向の急変、一時的な視程の悪化などを引き起こし、航空機の運航に重大な影響を及ぼします。今回は東京国際空港（以下、羽田空港）で観測した雷について、統計期間2006年から2015年の10年間で出現しやすい季節や時間帯、長時間雷が継続した事例について紹介します。

 航空気象観測では、風向風速計などの機器(観測装置)による観測のほかに、人間が目や耳で観測する「目視観測」を行っています。観測項目には雲(量・形・雲底の高さ、雲底の状態など)、視程(空港とその周辺の見通せる距離)、大気現象(雷・雨・雪・霧など)があり、第64号では「視程」を取り上げました。今回は「大気現象」についてご紹介します。

 2015年9月9日から11日にかけて、関東地方から東北地方で記録的な大雨になり、茨城県内を流れる鬼怒川のはん濫をはじめ、各地で大きな被害が発生しました（平成27年9月関東・東北豪雨）。

 気象庁気象研究所の報道発表（9月18日）では、今回の大雨の要因は、北上する台風第18号の東側のアウターバンドから変わった幅100～200kmの南北に伸びた降雨域に、台風第17号の周辺からの南東風を主体とする温かい湿った空気が継続的に流入した。

 また、東日本の上空では気圧の谷の東側で南風が強まり、このような気象状態が持続したことで、降雨域の中で多数の線状降水帯が南北に連なって発生して降水の集中が引き起こされたとしています。

 羽田空港でも9日午後から10日朝にかけ線状降水帯が断続的にかかり、雷雨になりました。今回はこの事例での羽田空港の実況経過を説明します。

 2014年7月20日15時の地上天気図では、千島の東に中心を持つ高気圧が本州付近を覆っていて、羽田空港では高気圧縁辺から南よりの風の暖湿気が流入していました。一方、東日本の上空には500hPaで－9℃以下の寒気を伴う気圧の谷が通過中で、関東地方を中心に大気の状態が不安定となっていました。

 雷監視システム（LIDEN:LIghtning DEtection Network system）は、雷により発生する電波を受信し、その位置、発生時刻などを求め、情報を作成するシステムです。この情報は航空会社などに直ちに提供されて、空港における地上作業の安全確保や航空機の安全運航に利用されています。2013年は雷監視システムについて、照会を受けることが多かったので、雷監視システムの構成、測定原理、雷実況図について紹介します。

 天気予報などで「大気の状態が不安定で雷を伴う見込みです。」と、よく表現される場合があります。

 ｢大気の状態が不安定｣とは、以下の様な気象条件となった時をいいます。①上空に寒気が流れ込んだ場合②下層に暖かく湿った空気が入った場合③日射の影響で地上の気温が上昇する場合

 このような気象条件になると、上昇気流が発生して雲を作り、積乱雲にまで発達すると局地的な大雨や雷となることがあります。

 発達した積乱雲は、強い雨や落雷、突風（竜巻やダウンバースト）などの激しい現象を発生させる場合があります。2012年5月に関東地方で発生した竜巻の事例と2011年8月に羽田空港で観測された大雨の事例について解説します。

 雷は、落雷、雲間放電や短時間の強い雨、突風、風向の急変、一時的な視程の悪化などを引き起こし、航空機の運航に大きな影響を及ぼす顕著現象です。気象台では、これらの発生等の予想を行っており、運航用飛行場予報（TAF）や飛行場気象情報でお伝えしています。