平成29年 No.33 週間火山概況 (8月11日~8月17日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 8月17日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、御嶽山、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山*
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。
*2017年6月20日に活火山として選定された男体山については、準備が整い次第噴火予報(活火山であることに留意)を発表する予定です。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(8月17日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の状況は雲のため不明の期間が多いですが、山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね500m以下で推移しています。また山頂火口では、高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映1)が観測されました。
 山頂付近直下の火山性地震は、多い状態で経過しており、11日には日回数で177回観測しました(図2)。火山性微動は、多い状態で経過しました。
 山頂の南南西にある塩野山の傾斜計2)では、北または北西上がりのわずかな変化が続いています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石4)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年8月17日)
(▲はごく小規模な噴火を示す)
 

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年8月17日) (▲はごく小規模な噴火を示す)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の状況は雲のため不明の期間が多いですが、山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で推移しています。
 山頂付近直下の火山性地震は、少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
 GNSS4)連続観測によると、山体付近の収縮によると考えられる縮みの傾向が続いています。
 2014年10月以降噴火の発生はなく、噴煙活動や山頂直下付近の地震活動は緩やかな低下が続いており、火山活動は静穏化の傾向がみられています。噴火が発生する可能性は低くなっていますが、当面は火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 第三管区海上保安本部が11日に実施した上空からの観測では、気泡が確認され、火山活動に関連する湧昇流によると考えられる低温部が確認されました。浮遊物等は確認されませんでした。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測では、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 第三管区海上保安本部が11日に実施した上空からの観測では、25分間の観測中噴火は認められず、島の中央部やや南に位置する火砕丘の山頂火口縁から白色噴気が認められました。島西岸の溶岩流先端から白色蒸気が発生しており、溶岩流の海への流入が継続していると考えられます。また、島の周囲には青白色の変色水が分布していました。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、噴火活動の継続が確認されており、火山活動は活発な状態で経過しています。今後も噴火が継続する可能性がありますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね80m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、島の隆起が継続しています。
 8月8日から10日にかけて実施した現地調査では、阿蘇台陥没孔の周辺に泥が噴出した跡を確認しました。同様な現象は、過去の現地観測でも時々観測されています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 えびの高原(硫黄山)周辺では、2015年12月頃に出現した熱異常域5)が次第に拡大し、噴気の量が増加しています。こうした中で、2017 年4月25日から硫黄山南西観測点の傾斜計で、硫黄山方向が隆起する傾斜変動が続いています。
 17日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量6)は、1日あたり10トン未満(前回7月13日、20トン)でした。また、硫黄山周辺で引き続き明らかに感じる程度の火山ガスの臭気や大きな噴気音を伴う噴気活動が認められました。
 監視カメラによる観測では、白色の噴気が最高で稜線上100mまで上がるなど、活発な噴気活動が続いています。
 火山性地震は13日及び17日に一時的に増加しましたが、それ以外の日は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 硫黄山周辺の噴気活動の活発化は過去にみられていた領域に限定されていますが、硫黄山火口のごく浅いところでわずかな膨張が続いており、火口周辺に火山灰を降らせる噴火が発生する可能性があります。えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、小規模な噴火に警戒してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、噴火を54回観測し、このうち2回が爆発的噴火でした。噴煙が最高で火口縁上1,800mまで上がり、弾道を描いて飛散する大きな噴石が最大で6合目(昭和火口より300mから500m)まで達しました。同火口では、12日及び13日に高感度の監視カメラで明瞭に見える火映を観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は観測されていません。
 16日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり1,000 トン(前回8月3 日、400 トン)と増加しました。1日あたりの放出量で1,000トンを超える火山ガス(二酸化硫黄)を観測したのは、2017年5月8日以来です。
 火山性地震は、12日以降、やや多い状態で経過しています。噴火に伴う火山性微動が発生しました。
 姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流7)に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき8))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新岳火口では、白色の噴煙が最高で火口縁上500mまで上がりました。
 11日から17日にかけて東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり100~300トン(前回8月7日、200トン)でした。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は2017年4月以降、わずかに増加しています。
 火山性地震は、13日に一時的にやや多い状態となりましたが、概ね少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過しています。このため、2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低くなっているものの、引き続き噴火の可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、12日にごく小規模な噴火が発生し、乳白色の噴煙が最高で火口縁上600mまで上がりました。
 同火口では、夜間に高感度の監視カメラで火映を時々観測しました。
 火山性微動は時々発生しました。火山性地震は少ない状態で経過しています。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西4kmの集落では降灰は確認されませんでした。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

焼岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]

 10日に噴気が観測された山頂の西側の火口及び周辺では、11日以降、噴気は観測されておらず、火山性地震も少ない状態で経過しています。地殻変動等、その他の観測データにも特段の変化は認められません。また、従来からみられている場所の噴気活動にも変化は認められません。
 以上のように、現時点で火山活動が活発化する様子は認められません。
 山頂付近では噴気や火山ガスの噴出に注意して下さい。
 登山する際はヘルメットを持参するなどの安全対策をしてください。
 噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)の予報事項に変更はありません。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
2) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
3) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置とは、物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
6) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
7) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
8) 桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (8月11日~8月17日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)
桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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