平成26年 No.41 週間火山概況 (平成26年10月3日~10月9日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年10月3日~10月9日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日03時、09時、15時、21時 御嶽山 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 10月9日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 御嶽山、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(10月9日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態が継続していましたが、8月20日以降は少ない状態で経過しています(図2)。今期間、火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
 GNSS2)観測によると、湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
 湯釜火口から概ね1㎞の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

草津白根山日別地震回数

図2 草津白根山 火山性地震の日別回数(3月1日~10月9日)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 御嶽山では、火山灰を噴出するような噴火が継続しています。火山性地震は、噴火直後に比べてやや少ない状態で経過しました。9月27日の噴火前から連続して発生していた火山性微動は、10月7日に入ってからは検知できない程度の大きさになっています。
 7日と9日に航空自衛隊の協力で上空からの観測を実施しました。7日の観測では、剣ヶ峰山頂の南西側の火口列からは白色の噴煙が勢いよく火口縁上約400mまで上がり、時々火山灰混じりの灰白色の噴煙が認められました。前回(9月28日)実施した上空からの観測以降に、火山灰を広範囲に噴出、または大きな噴石を飛散させるような噴火が発生した痕跡は認められませんでした。9日の観測では、剣ヶ峰山頂およびその南西側の火口列の状況は雲に覆われ不明でしたが、噴煙が火口縁上300~400mまで上がり東に流れるのを確認しました。また、いずれの日も噴煙の風下側では硫化水素臭が認められました。
 今期間、山麓で実施している火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたりおおよそ500~1,000トンで推移し、火山活動に伴う二酸化硫黄の放出量としては多い状態となっています。
 火口から4km程度の範囲では大きな噴石1)の飛散や火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の高さは、火口縁上100m以下で経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊によると、活発な噴火活動が続きました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が時々発生しましたが、遠望カメラによると特段の変化は認められませんでした。
 GNSS2)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 阿蘇山では今期間、噴火は発生しませんでしたが、やや活発な火山活動が続いています。
 火山性地震及び孤立型微動3)は多い状態で経過しています(図3)。
 7日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,000トン(前回9月29日1,300トン)と多い状態でした。また、8日に実施した現地調査では、中岳第一火口の火口中央部噴気孔付近及び南側火口壁付近の温度は高い状態が継続していました。
 中岳第一火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の火映を時々観測しました。また、阿蘇火山博物館設置の火口カメラで夜間に火炎4)を時々観測しました。
 地殻変動観測では、特段の変化は認められませんでした。
 中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。

火山性地震及び孤立型微動の日別回数

図3 阿蘇山 火山性地震及び孤立型微動の日別回数(2014年8月1日~10月9日)


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は発生しませんでした。
 傾斜計5)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS2)連続観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
 今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
 新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき6))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が10回発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石1)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。 また、同火口では、夜間に高感度カメラ7)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 6日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,100トン(前回9月25日1,200トン)と多い状態でした。
 桜島島内の傾斜計5)では、2014年4月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃から山体が沈降する傾向となっています。
 GNSS2)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では今期間、噴火は発生しませんでしたが、火山活動の高まった状態が継続しています。
 火山性地震が時々発生しました。また、火山性微動は発生しませんでした。
 7日及び8日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は、両日とも1日あたり500トン(前回9月12日300トン)と噴火前に比べて多い状態が続いています。また、新岳火口及び西側割れ目付近で噴煙が上がっているのを確認した他、新たに新岳の南西斜面で噴気が上がっているのを確認しました。赤外熱映像装置による観測では、引き続き新岳火口縁の西側及び割れ目付近で高温域を確認した他、南西斜面の噴気地帯も高温域となっているのを確認しました。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、4日に継続時間が約1分の火山性微動を観測しました。御岳(おたけ)火口では、3日から8日にかけて夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


蔵王山 [噴火予報(平常)]

 8日に山形大学が行った現地調査によると、御釜の東側湖面の一部に白濁した部分がみられました。この現象は15分程度継続したのち消滅しました。  9日には気象庁も現地調査を実施しましたが、御釜の湖面に変色等はみられず、湖水の温度は11度と従来の状態から変化はみられませんでした。また、御釜の周辺にも地熱8)は認められませんでした。
 5日16時22分、9日05時05分及び10日06時44分(期間外)に各1回の火山性微動が発生しました。坊平観測点(山頂の南西約5km:上下成分)で観測したこれらの微動の最大振幅は小さく、継続時間も短いものでした。
 坊平観測点の傾斜計5)で、9月30日夕方頃からわずかな東(山側)上がりの傾向がみられています。GNSS3)による山体及びその周辺の地殻変動観測に特段の変化はありません。
 今期間、火山性地震の発生状況や空振計の観測に特段の異常はみられていません。
 8月以降、火山活動の高まりがみられますので、今後の活動の推移に注意してください。

霧島山(新燃岳及び御鉢以外) [噴火予報(平常)]

 霧島山のえびの高原(硫黄山)周辺では、2013年12月頃より火山性地震が時々発生しています(図4)。今期間も火山性地震が時々発生しましたが、火山性微動は観測されませんでした。
 今後の火山活動の推移に注意してください。
 えびの高原(硫黄山)周辺では、噴気や火山ガスなどが噴出する可能性がありますので注意してください。
 えびの高原(硫黄山)周辺の火山活動については、これまでも霧島山(新燃岳)の火山情報に含めてお知らせしていましたが、今後はえびの高原(硫黄山)周辺の情報としてお知らせします。

火山性地震の日別回数

図4 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 火山性地震の日別回数(2013年12月1日~2014年10月9日)


上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
2)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
3)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。
4)高温の噴出物が炎のように見える現象
5)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
6)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
7)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
8)赤外熱映像装置による観測。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の温度よりも低く測定される場合があります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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