平成26年 No.40 週間火山概況 (平成26年9月26日~10月2日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
27日に御嶽山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引上げ、大きな噴石に対する警戒範囲を4kmとしました。また、28日に火口周辺警報を切り替え、火砕流に対する警戒を加えました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年9月26日~10月2日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
27日12時36分 | 御嶽山 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベル3(入山規制)へ引上げ |
28日19時30分 | 御嶽山 | 火口周辺警報 | 火口周辺警報切り替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続) |
27日13時35分、15時50分、21時18分、28日03時13分、06時20分、 09時13分、15時12分、21時09分、29日03時07分、06時05分、 09時05分、15時05分、21時05分、30日03時05分、09時05分、 15時05分、21時05分、10月1日03時05分、09時05分、15時05分、 21時05分、2日03時05分、09時07分、15時05分、21時05分 |
御嶽山 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
28日10時55分、15時36分、29日17時46分、10月2日08時27分 | 桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 10月2日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 御嶽山、桜島、口永良部島 |
入山危険 | 西之島※ | |
レベル2(火口周辺規制) | 草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(10月2日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)] ←27日に噴火警戒レベル3(入山規制)に引上げ。28日に火口周辺警報の切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
御嶽山では9月27日11時52分頃に噴火が発生しました。噴火発生時は視界不良のため山頂付近の状況は不明でしたが、中部地方整備局が設置している滝越カメラにより南西方向に火砕流が流下し、3kmを超えたことを観測しました。噴煙の高度は、気象レーダーの観測によると、噴火発生時の噴煙は火口上約7,000mで東に流れていると推定しています。27日12時36分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引き上げました。28日19時30分に噴火警戒レベル3(入山規制)を切り替え、火砕流への警戒を追加しました。火山性微動は27日11時41分頃から発生し、その後振幅の増減を繰り返しながら継続しています。
28日に中部地方整備局と陸上自衛隊の協力で実施した上空からの観測では、剣ヶ峰山頂の南西側で北西から南東に伸びる火口列から活発な噴煙が上がり、大きな噴石1)が火口列から1km の範囲に飛散しているのを確認しました。また、赤外熱映像装置2)による観測で、活発な噴煙が上がっている火口付近に高温域を観測しました。
自治体等への聞き取り調査の結果、御嶽山の西側の岐阜県下呂市荻原町から東側の山梨県甲府市飯田にかけて降灰が確認されました。
28日から実施している現地調査では、二酸化硫黄の放出量は、1日あたりおおよそ500トンから1,500トン(速報値)で推移しており、火山活動に伴う二酸化硫黄の放出量としては多い状態となっています。
火口から4km 程度の範囲では大きな噴石1)の飛散や火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。

図2 御嶽山 火山性地震の日別回数(8月1日~10月2日)
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態が継続していましたが、8月20日以降は少ない状態で経過しています(図3)。今期間、火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
GNSS3)観測によると、湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
湯釜火口から概ね1㎞の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

図3 草津白根山 火山性地震の日別回数(3月1日~10月2日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙の高さは、火口縁上100m以下で経過しました。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
9月26日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200トン(前回8月5日300トン)で、やや少ない状態でした。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊によると、活発な噴火活動が続きました。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、火山性地震はやや少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が時々発生しましたが、遠望カメラによると特段の変化は認められませんでした。
GNSS3)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
阿蘇山では今期間、噴火は発生しませんでしたが、やや活発な火山活動が続いています。
火山性地震及び孤立型微動4)は多い状態で経過しています(図4)。
9月26日及び29日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は、1日あたり1,300トン(前回9月8日1,200トン)と多い状態でした。また、中岳第一火口の火口中央部噴気孔付近 及び南側火口壁付近の温度は高い状態が継続していました。
中岳第一火口では、26日及び27日の夜間に高感度カメラで確認できる程度の火映を観測しました。また、阿蘇火山博物館設置の火口カメラで27日から30日の夜間に火炎5)を観測しました。
地殻変動観測では、特段の変化は認められませんでした。
中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。

図4 阿蘇山 火山性地震及び孤立型微動の日別回数(2014年8月1日~10月2日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計6)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
GNSS3)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき7))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続きました。
昭和火口では、爆発的噴火が17回発生し、多量の噴煙が火口縁上3,000mまで上がり、大きな噴石1)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。また、同火口では、2日から3日にかけての夜間に高感度カメラ8)で明瞭に見える火映を観測しました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
桜島島内の傾斜計6)では、2014年4月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃から山体が沈降する傾向となっています。
GNSS3)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき7))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
口永良部島では、火山活動の高まった状態が継続しています。
今期間、噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からは白色の噴煙が最高で火口縁上600mまであがりました。
火山性地震が時々発生しました。また、火山性微動は発生しませんでした。
新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では活発な噴火活動が続いています。
27日15時55分の噴火では、灰白色の噴煙が火口縁上500mまで上がりました。
火山性地震はやや多い状態で経過し、26日から29日にかけて火山性微動を観測しました。
御岳火口では、28日から10月2日にかけて、夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
30日16時49分頃に火山性微動が発生しました。微動の継続時間は約4分、最大振幅は2.3μm/sと、 これまでに発生している微動の中では平均的なものでした(図5)。微動発生時、御釜付近は雲に覆われていて周囲の状況を確認できませんでしたが、空振計による観測では異常はみられませんでした。
火山性地震は10月1日6時頃から2日の14時頃にかけて散発的に9回発生し、やや多い状況となりました(図5)。
傾斜計6)では、火山性微動発生後の30 日19 時頃から10 月1日の17 時頃にかけて、南東(山頂の南 側)上がりの変化がみられました。今回のような1日程度継続するような傾斜変化は、これまでも火山 性微動や火山性地震増加時に時々みられています。
GNSS3)連続観測では特段の変化はみられませんでした。
直ちに噴火する兆候は認められませんが、8月以降、地震活動の高まりがみられますので、今後の活動の推移に注意してください。

図5 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日~2014年10月2日)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
2)赤外熱映像装置による観測。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の温度よりも低く測定される場合があります。
3)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
4)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。
5)高温の噴出物が炎のように見える現象
6)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
7)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
8)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。