平成26年 No.38 週間火山概況 (平成26年9月12日~9月18日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年9月12日~9月18日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 9月18日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(9月18日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態が継続していましたが、8月20日以降は少ない状態で経過しています(図2)。今期間、火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
 湯釜火口から概ね1㎞の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

草津白根山日別地震回数

図2 草津白根山 火山性地震の日別回数(3月1日~9月18日)


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の高さは、火口縁上100m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。
 17日に実施した現地調査では、前回の観測(7月25日)と比べて火口内の地形及び地熱域に特段の変化は認められませんでした。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。
 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊及び海上保安庁によると、活発な噴火活動が続きました。
 17日に海上保安庁が実施した上空からの観測によると、8月26日に確認された溶岩マウンド3)は、一部を残して溶岩マウンドの北側に形成された新たな火砕丘に埋没しているのが確認されました。この新たな火砕丘の北側に3つの火口が並ぶ新たな火口列が認められました。新たな火口列からは、溶岩流が北方向に流出して広がり、西之島旧島の大部分を覆っていました(以上、図3)。また、新たな陸地の大きさは、東西方向に約1,570m、南北方向に約1,440m、面積は約1.49 ㎞(前回8月26日:1.21 ㎞)でした。島の周辺では、褐色から薄い緑色の変色水が幅50~400mで分布していました(図4①~③)。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

西之島の活動状況

図3 西之島の活動状況(17日 海上保安庁提供)

西之島の変色水の状況

図4 西之島の変色水の状況(17日14時31分撮影 海上保安庁提供)


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は3月からやや多い状態で経過していましたが、8月に入ってからは減少しています。今期間は少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が時々発生しましたが、遠望カメラによると特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 12日に海上自衛隊が実施した上空からの観測によると、変色水等は認められませんでした。
 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 阿蘇山では今期間、噴火は発生しませんでしたが、やや活発な火山活動が続いています。
 火山性地震及び孤立型微動4)は多い状態で経過しています(図5)。中岳第一火口では、17日から18日にかけて夜間に高感度カメラで火映を観測しました。また、阿蘇火山博物館設置の火口カメラで夜間に火炎5)を時々観測しました。
 地殻変動観測では、特段の変化は認められませんでした。
 17日に実施した中岳第一火口の現地調査では、火口中央部噴気孔付近及び南側火口壁付近の温度は高い状態が継続していました。
 中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。

火山性地震及び孤立型微動の日別回数

図5 阿蘇山 火山性地震及び孤立型微動の日別回数(2014年8月1日~9月18日)


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計6)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
 今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
 新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき7))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が27回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。また、同火口では、夜間に高感度カメラ8)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 桜島島内の傾斜計6)では、2014年4月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃から山体が沈降する傾向となっています。
 GNSS1)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき7))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では今期間、噴火は発生しませんでしたが、火山活動の高まった状態が継続しています。
 12日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300トン(前回8月28日:400トン)と噴火前に比べて多い状態が続いています。
 火山性地震が時々発生しました。また、火山性微動は発生しませんでした。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。また、火砕流に警戒してください。 風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では活発な噴火活動が続いています。
 16日には、噴火に伴う灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がりました。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、16日に集落で降灰が確認されました。
 火山性地震は多い状態で経過し、火山性微動を12日から18日にかけて連続して観測しました。御岳火口では、夜間に高感度カメラで火映を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


御嶽山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 10日、11日(期間外)に剣ヶ峰山頂付近の火山性地震が50回を超え、地震回数は多い状態となっていましたが、今期間はやや多い状態で経過しました(図6)。地震の振幅はいずれも小さく、火山性微動は発生していません。
 噴煙及び地殻変動の状況には特段の変化はありませんでした。
 御嶽山では、2007年にごく小規模な噴火が発生した79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので、引き続き警戒してください。

御嶽山 時間別地震回数

図6 御嶽山 火山性地震の時間別回数(9月5日~9月18日)


上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)火口内に湧き出した溶岩が丘状に高まりを作ったもの。
4)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。
5)高温の噴出物が炎のように見える現象
6)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
7)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
8)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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