海面水温の将来予測(日本近海)

令和8年3月5日 気象庁発表

  • 日本近海の海域平均海面水温は21世紀末にかけて上昇する予測となっています。
  • 4℃上昇シナリオでは、日本近海の海域平均海面水温は上昇傾向が続き、21世紀末(2081~2100年平均)には、20世紀末(1986~2005年平均)と比べて、+3.45℃上昇すると予測されています。一方、2℃上昇シナリオでは、海面水温の上昇が2060年頃以降はほぼ止まり、21世紀末にかけて+1.13℃になると予測されています。
日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の将来予測

図1  日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の推移

日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の20世紀末(1986~2005年平均)との差(℃)。図中の丸とエラーバー(青系:2℃上昇シナリオ、赤系:4℃上昇シナリオ)は10年毎に計算した20年間(前9年~後10年)の平均値と90%信頼区間の幅を表しています。陰影(青系:2℃上昇シナリオ、赤系:4℃上昇シナリオ)は、2016〜2090年まで1年毎に計算した20年間(前9年~後10年)の90%信頼区間を表しています。黒線は1980~2025年までの5年移動平均した観測値を表しています。モデルによる予測では、観測でみられる10年規模の自然変動を十分に表現できないため、年によっては観測値がモデルによる将来予測の範囲から外れることがあります。

日本近海の海域平均海面水温(年平均)の20世紀末からの21世紀末における上昇幅(2℃上昇シナリオ) 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の20世紀末からの21世紀末における上昇幅(4℃上昇シナリオ) 海域区分

図2  21世紀末における日本近海の海域平均海面水温(年平均)の20世紀末からの上昇幅(℃)
(左図:2℃上昇シナリオ、中央図:4℃上昇シナリオ)と海域区分(右図)

図中の値は20世紀末(1986~2005年平均)を基準とした21世紀末(2081~2100年平均)の上昇幅を表しており、値のみの海域は海面水温が上昇すると予測される海域、値に「∗」を付した海域は海面水温の上昇傾向が現れると予測される海域、値に「#」を付した海域は予測結果に明確な変化傾向はみられない海域をそれぞれ表しています(参考:海面水温の将来予測(日本近海)の不確実性の目安について)。

解説

日本近海の海面水温の将来予測の特徴

21世紀末(2081~2100年平均)における日本近海の海域平均海面水温(年平均)は、20世紀末(1986~2005年平均)と比べて、パリ協定の2℃目標が達成された場合(2℃上昇シナリオ)では+1.13℃(90%信頼区間:+0.48~+1.78℃)、追加的な温室効果ガス削減対策がほとんど取られなかった場合(4℃上昇シナリオ)では+3.45℃(90%信頼区間:+2.15~+4.75℃)上昇すると予測されています(図1)。これらの予測は、日本の気温の上昇幅(2℃上昇シナリオ:+1.4℃、4℃上昇シナリオ:+4.5℃)と比べて小さく、世界平均海面水温の上昇幅(2℃上昇シナリオ:+0.86℃、4℃上昇シナリオ:+2.89℃)と比べて大きくなっています(文部科学省及び気象庁, 2025)。日本近海の海面水温の上昇幅が世界平均よりも大きい要因として、海面水温の長期変化傾向(日本近海)と同様に、日本に近い大陸での大きな気温の上昇の影響を受けている可能性が考えられます(IPCC, 2021)。

また、4℃上昇シナリオでは、21世紀末まで上昇傾向が続くのに対し、2℃上昇シナリオでは2060年頃以降は上昇がほぼ止まると予測されています(図1、表1)。

海域別の海面水温の将来予測の特徴

日本近海の海面水温の上昇は一様ではなく、2℃上昇シナリオでは黄海、4℃上昇シナリオでは、釧路沖や三陸沖で上昇幅が大きいと予測されています(図2)。今回、計算に使用したモデルでは、偏西風の北上に伴い北太平洋の亜熱帯循環が北上する傾向がみられており、確信度は中程度と評価されています(文部科学省及び気象庁, 2025)。このことが釧路沖や三陸沖が含まれる海面水温の変化が大きい海域(参考:親潮前線と黒潮前線、混合域)での大きな水温上昇につながっている可能性が考えられます(Yamanaka et al, 2021)。

参考図表:各海域での海面水温の将来予測(日本近海)

季節別の海面水温の将来予測の特徴

すべての季節で日本近海の海域平均海面水温は上昇する予測となっており、上昇幅は2℃上昇シナリオ及び4℃上昇シナリオともに、夏季に最も大きく、冬季に最も小さくなると予測されています(表2)。

* 海面水温の将来予測では、冬季を1~3月、春季を4~6月、夏季を7~9月、秋季を10~12月としており、気温の季節(冬季(前年12月~2月)、春季(3~5月)、夏季(6~8月)、秋季(9~11月))とは、1か月ずれています。

参考図表:季節別にみた海面水温の将来予測(日本近海)

計算に使用しているデータセットやシナリオについて

海面水温の将来予測は、日本の気候変動2025でも用いられた日本域海洋予測データを使用しています。ここで使用している2℃上昇シナリオ及び4℃上昇シナリオは、IPCC第5次評価報告書で用いられたRCP2.6シナリオ及びRCP8.5シナリオをそれぞれ表しています。詳細は海面水温の将来予測(日本近海)のデータをご覧ください。

将来予測の不確実性

気候変動の将来予測には「不確実性」が必ず含まれています。不確実性とは「気候モデルによる予測結果に含まれるばらつき」のことです(参考:海面水温の将来予測(日本近海)の不確実性の目安について)。本情報で使用した将来予測データでは、観測でみられる10年規模の自然変動を十分に表現できないため、年によっては実際の値が将来予測の示す範囲から外れることがあります。しかし、20年程度の期間で平均してみると、短期的な自然変動によるばらつきの影響が小さくなることから、ここでは将来予測情報として20年間(前9年~後10年)で平均した上昇幅を示しています(図1、表1)。現在、時空間的に高解像度化した将来予測情報の提供を目指し、開発に取り組んでいます。

参考文献

  • 文部科学省及び気象庁 (2025), 日本の気候変動 2025—大気と陸·海洋に関する観測·予測評価報告書—(詳細編), 389pp.
  • IPCC (2021), Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change[Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S.L. Connors, C. Péan, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M.I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T.K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekçi, R. Yu, and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 2391pp, https://doi.org/10.1017/9781009157896.
  • Yamanaka, G., H. Nakano, K. Sakamoto, T. Toyoda, L.S. Urakawa, S. Nishikawa, T. Wakamatsu, H. Tsujino and Y. Ishikawa (2021), Projected climate change in the western North Pacific at the end of the 21st century from ensemble simulations with a high-resolution regional ocean model. J Oceanogr 77, 539 – 560, https://doi.org/10.1007/s10872-021-00593-7.

表1  全海域平均海面水温(年平均)の20世紀末からの10年ごとの上昇幅

海域名 シナリオ名 20世紀末を基準とした上昇幅(℃)
2031~2050年
平均
2041~2060年
平均
2051~2070年
平均
2061~2080年
平均
2071~2090年
平均
2081~2100年
平均

数字の上段は20世紀末(1986~2005年平均)からの上昇幅、下段の数字は90%信頼区間の範囲を表しています。無印の上昇幅は統計的に99%有意な値、「∗」が付加してある上昇幅は95%有意な値を表しています。

表2  21世紀末における年・季節別にみた全海域平均海面水温の20世紀末からの上昇幅

海域名 シナリオ名 20世紀末を基準とした上昇幅(℃)
冬(1~3月) 春(4~6月) 夏(7~9月) 秋(10~12月)

数字の上段は20世紀末(1986~2005年平均)を基準とした21世紀末(2081~2100年平均)の上昇幅、下段の数字は90%の範囲を表しています。無印の上昇幅は統計的に99%有意な値、「∗」が付加してある上昇幅は95%有意な値を表しています。

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