平成26年 No.30 週間火山概況 (平成26年7月18日~7月24日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年7月18日~7月24日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 7月24日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(7月24日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、その後、消長を繰り返しながら多い状態が継続しています(図2)。23日21時頃から、湯釜付近を震源とする振幅の小さな火山性地震が増加しましたが、24日に入って、徐々に減少しています(図3)。火山性微動の発生はなく、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は小規模なものであったとみられ、7月以降は停滞しています。
 湯釜火口から概ね1㎞の範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

草津白根山日別地震回数

図2 草津白根山 日別地震回数(1月1日~7月17日)

草津白根山時間別地震回数

図3 草津白根山 時間別地震回数(7月23日00時~7月24日24時)


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の高さは、火口縁上200m以下で経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁等によると、西之島では活発な噴火活動が続いています。
 23日に海上保安庁が実施した上空からの観測によると、島の東岸に白色の噴煙を連続的に噴出する新たな火口(図4矢印①)が確認されました。火口からの溶岩流は東側に向かって流下し、海面に接した場所で白煙を上げていました。北側火口(図4矢印②)では灰色の噴煙を噴出していました。5月21日に確認された北側火口と南側火口の間の火口(図4矢印③)は青白色の噴煙を噴出していました。南側火口(図4矢印④)では噴煙は確認できませんでした。新たな陸地の大きさは、東西方向に約1,150m、南北方向に約1,050m、面積は約1.08㎞(前回5月21日:0.86㎞)でした。島の周辺では、褐色から黄緑色の変色水が幅約100~500mで分布していました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

西之島の状況

図4 西之島の状況(23日11時11分)


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は3月からやや多い状態で経過しています。
 GNSS1)観測によると、地殻変動は2014年1月頃から停滞していましたが、2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向が見られます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
 新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が3回発生し、大きな噴石3)が5合目(昭和火口より500~800m)まで達しました。同火口では、夜間に高感度カメラで明瞭に見える火映を24日に観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 地殻変動観測では、桜島島内で山体が隆起・膨張する傾向がみられます。また、姶良カルデラ深部の膨張は、停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では今期間、噴火は発生しませんでした。御岳(おたけ)火口では19日から21日にかけて夜間に高感度カメラで火映を観測しました。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動を18日に観測しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 23日18時頃から島北部を震源とする火山性地震が一時的に増加しました(図5、図6)。24日の日中には伊豆大島町元町で震度1を観測する地震が4回発生しました。火山性微動の発生はなく、体積ひずみ計5)や傾斜計2)にも特段の変化はみられていません。
 GNSS1)による観測では、地下深部のマグマの供給によると考えられる島全体の長期的な膨張傾向が続いていますが、2011年頃から鈍化してきています。火山性地震が増加する前の期間も含め、その他の観測データに特段の変化はみられず、噴火の兆候は認められません。

伊豆大島時間別地震回数

図5 伊豆大島 時間別地震回数(7月23日00時~24日24時)

伊豆大島 地震活動図

図6 伊豆大島 地震活動図(2002年4月1日~2014年7月24日)

伊豆大島 地震活動図凡例

阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 阿蘇山では、16日から孤立型微動6)及び火山性地震の多い状態が続いています。
 22日に実施した現地調査では、中岳第一火口内で小規模な土砂噴出を確認しましたが、前回(17日)と比べて、大きな変化は認められませんでした。二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり、1,700トン(前回11日1,500トン)と多い状況でした。
 中岳第一火口の火山活動は、わずかに高まった状態で経過していることから、今後の火山活動の推移には注意する必要があります。大きな噴石を飛散するなど、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、火口内及び火口近傍に土砂や火山灰を噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。

上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがあります。
6) 阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0 秒、継続時間10 秒程度で振幅が5μm/s以上のものを孤立型微動としています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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