2005年 No.40 火山の概況 (平成17年9月30日 〜 平成17年10月6日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- 噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
- ● 白山 [静穏な状況]
- 有感地震が山体付近で発生したが、噴気活動等の表面現象の異常は認められていない。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
- 3日に変色水が確認された。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震のやや多い状態が続いている。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていたと推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上おおむね500mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が10月1日〜5日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いている。
9月30日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200〜300トンで、少ない状態であった。
火山性地震および火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり25〜62回、1〜4回であった。
1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
● 白山 [静穏な状況]
3日13時59分、白山付近の浅いところを震源とするM(マグニチュード)4.5の地震が発生し、白山市白峰で震度2を観測したほか、石川県と岐阜県で震度1を観測した(白山付近でM4を超える地震が発生したのは1993年5月8日のM4.2以来)。その後、この地震の余震と見られる地震が14時台に14回発生しているが、いずれもM2未満と小さく、震度1以上は観測されていない。
白山付近ではこれまでにも時々、浅いところを震源とする小さな地震(最大M3程度)が一時的に多発することがあった。現在のところ、短期的には地震活動は終息し、噴気活動などの表面現象の異常は認められていない。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね400mで推移した。6日に上空から行った火山ガス観測2)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,800〜3,900トンで、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
地震活動等の状況については、5日11時頃から14時頃にかけてと6日06時頃から08時頃にかけて、やや低周波の地震が増加し、5日11時45分、13時18分、13時22分及び6日07時40分には振幅のやや大きな低周波地震が発生した。5日11時45分、13時18分及び6日07時40分の低周波地震は空振を伴っており、うち5日11時45分の地震では三宅村坪田、三宅村神着で震度1を、6日07時40分の地震では三宅村神着で震度1を観測した。これらの地震活動が発生した時の噴煙の状況は雲による視界不良で確認できなかったが、その他の観測データに特に異常な変化はみられなかった。5日及び6日の地震回数はそれぞれ47回及び15回となったが、その他の日は1日あたり0〜3回と少なかった。火山性微動は観測されなかった。
2) 警視庁の協力による。
● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
海上保安庁が3日に行った上空からの調査によると、福徳岡ノ場付近から東へ延びる長さ約300m、最大幅約50mの青白色の変色水が確認された。福徳岡ノ場は7月2日〜3日に噴火し、以降、7月中と9月11日、15日にも付近海面で変色水が確認されている。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
6日に行った現地観測では、火口内の湯だまり3)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は70℃(赤外放射温度計4)による)と依然として高い状態であった(前期間70℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測された。
火山性連続微動は5日06時28分から振幅がやや大きくなっているが、他の観測データには特に変化はみられていない。
孤立型微動は前期間に比べやや増加したが発生状況に変化はなく(今期間1日あたり70〜111回、前期間は59〜89回で推移)、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
3) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
4) 赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口の噴気活動はやや活発で、2日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。また、3日に振幅の小さな火山性微動が1回観測された。地震活動及び地殻変動等の観測データには特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
2日に噴火が2回観測された5)。爆発的噴火は観測されなかった(前期間はごく小規模な噴火を時々観測)。噴煙の最高は2日の噴火で観測された火口縁上1,100m以上(灰白色、頂部は雲に入り不明)であった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は、1日あたりの発生回数に増減はあるもののやや多い状態が続いている(今期間1日あたり1〜8回、前期間は2〜11回で推移)。火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、6日朝に集落(御岳の南南西約4km)で降灰が確認され、その後13時過ぎから、火山灰を含む噴煙が火口縁上600mまで上がり西に流れているのが確認された。監視カメラ(御岳の北北東約25kmの中之島に設置)による観測では、灰白色の噴煙が火口縁上800mまで上がっているのが、6日13時43分頃から日没(18時25分頃)まで確認された。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第190号 | 30日16:00 | 9月22日〜30日15時までの活動状況。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第518〜524号 (1日1回発表) |
30日〜6日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第46号 | 30日11:00 | やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度高い、湯だまり量約6割)。レベルは2。 |