図表の見方

3.1 図1: エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値

図1」には、エルニーニョ監視海域の海面水温の推移と大気海洋結合モデルによる予測結果が示されています。大気海洋結合モデルは、大気と海洋が相互に影響を及ぼしあいながら変化する過程を物理法則に従って計算し、熱帯域の大気と海洋の将来の状態を予測する数値予報モデルのことです。
 図A1は、2016年8月発表の「図1」に相当します。図示されている値は、エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生の指標に用いられるエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値です。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の経過と予測
図A1 エルニーニョ/ラニーニャ現象の経過と予測(2016年8月発表)
エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値の推移。 5月までの経過(観測値)を折れ線グラフで、大気海洋結合モデルによる予測結果(70%の確率で入ると予想される範囲)をボックスで示している。指数が赤/青の範囲に入っている期間がエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間である。

 赤丸は観測値に基づいた過去11か月の値を発表日の3か月前まで示したものです。黄色のボックスは5か月移動平均値の予測値で、「エルニーニョ監視速報」発表月の2か月前から4か月後までの各月について、観測値に基づいた値が70%の確率で入る範囲を示したものです。  図A1の例では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が「2016年11月に-0.3℃から-1.4℃になる確率は70%」となることを示しています。
 エルニーニョ監視速報では、速報性の観点から、実況と予測を合わせたエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が+0.5℃以上の状態で6か月以上持続する場合に「エルニーニョ現象が発生」、-0.5℃以下の状態で6か月以上持続する場合に「ラニーニャ現象が発生」と表現しています。

3.2 図2: 5 か月移動平均値が各カテゴリー(エルニーニョ現象/平常/ラニーニャ現象)に入る確率

図2」には、発表月の2か月前から4か月先までのエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率が数値と棒グラフにより示されています。図A2は、2016年8月発表の「図2」に相当します。
 ここで示されるエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率は、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が+0.5℃以上と予測される場合に「エルニーニョ現象」、-0.5℃以下と予測される場合に「ラニーニャ現象」と表現したものです。エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間(季節単位)として掲載しているのは、ここで記述した「エルニーニョ現象」あるいは「ラニーニャ現象」が6か月以上持続した場合です。
 エルニーニョ現象の予測では、予測の不確実性を考慮し、より精度の高い予測結果を得るために、数値予報モデルによる複数の予測結果を用いる「アンサンブル手法」を導入しています。具体的には、複数の初期値日における予測結果を組み合わせる「LAF法(時間ずらし平均法)」と、大気と海洋に摂動を与える方法を合わせて採用しています。毎日3メンバーの予測を実施し、16日前からの計17初期値日分の予測結果を用い、合計51メンバーのアンサンブルとしています。 これら51メンバーの予測からは、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値(前年までの30年間の各月の平均値)との差の5か月移動平均値が+0.5℃以上/−0.4℃~+0.4℃/−0.5℃以下となる場合をそれぞれエルニーニョ現象/平常/ラニーニャ現象(注)とし、エルニーニョ現象/平常/ラニーニャ現象となるメンバーの割合が得られます。その際、1991~2020年の各月の過去360事例に対する各10メンバーの予測実験結果を用いてあらかじめ求めた「数値予報モデルが持つ予測誤差」も考慮して、エルニーニョ監視海域海面水温の基準値との差の5か月移動平均値がエルニーニョ現象/平常/ラニーニャ現象となる割合を決めて10%単位に修正した値を「エルニーニョ監視速報」の図2に掲載しています。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率
図A2 エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率(2016年8月発表)
エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が+0.5℃以上/-0.4℃~+0.4℃/-0.5℃以下の範囲に入る確率を、それぞれ赤/黄/青の横棒の長さで月ごとに示す。気象庁の定義では、5か月移動平均値が+0.5℃以上 (-0.5℃以下)の状態で6か月以上持続した場合にエルニーニョ(ラニーニャ)現象の発生としているが、エルニーニョ監視速報においては速報性の観点から、実況と予測を合わせた5か月移動平均値が+0.5℃以上(-0.5℃以下)の状態で6か月以上持続する場合に「エルニーニョ(ラニーニャ)現象が発生」と表現している。


「エルニーニョ監視速報」の主文におけるエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生 や持続の見通しについては、季節単位で記述することとし、 現象の発生を記述する場合はその季節の最後の月の発生確率値を、 現象の持続を記述する場合はその季節の最初の月の発生確率値を用いて 、下記の対応表(「エルニーニョ監視速報」に毎月掲載)のように表現しています。 ただし、発生確率値の推移によっては下記の対応表の表現を用いないことがあります。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率値と主文における見通しの表現

発生確率
エルニーニョ平常ラニーニャ主文における表現(発生確率は例)
現象現象
50%以上30%以下エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性が高い(50%)
60%40%0%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
エルニーニョ50%40%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生50%50%0%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)40%40%20%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
40%50%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
40%60%0%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
30%以下50%以上ラニーニャ現象が発生する可能性が高い(50%)
0%40%60%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
ラニーニャ10%40%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生0%50%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)20%40%40%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
10%50%40%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
0%60%40%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
平常の状態
への移行30%以下50%以上30%以下平常の状態になる(が続く)可能性が高い(50%)。
(持続)

(注):気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上(−0.5℃以下)となった場合を「エルニーニョ(ラニーニャ)現象」と定義していますが、「エルニーニョ監視速報」においては速報性の観点から、実況と予測を合わせた5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上(−0.5℃以下)となる場合に「エルニーニョ(ラニーニャ)現象が発生」と表現しています。

3.3 図3: 各監視指数の最近10年の経過

「エルニーニョ監視速報」の図3には、エルニーニョ監視海域(NINO.3)、西太平洋熱帯域(NINO.WEST)、インド洋熱帯域(IOBW)の範囲と南方振動指数に関連するタヒチとダーウィンの位置を示すとともに、(a)エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差、(b)南方振動指数、(c)西太平洋熱帯域の海面水温の基準値との差、および(d)インド洋熱帯域の海面水温の基準値との差、の推移を示しています。 図B2がこの図に相当します。

3.3.1 エルニーニョ監視海域(NINO.3)の月平均海面水温と基準値

エルニーニョ監視海域は、北緯5度と南緯5度、西経150度と西経90度で囲まれた海域です( 図B2「エルニーニョ監視速報」の図3)。エルニーニョ監視海域で平均した海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値(例えば2006年の基準値は1976〜2005年の各月の30年平均値)です。

NINO.3 海面水温の推移
図B1  エルニーニョ監視海域の海面水温の推移(1980年1月〜2011年1月)
エルニーニョ監視海域の月平均海面水温(青線)とその基準値(黒線)(℃)。基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値。黄(黄緑)色の陰影は月平均海面水温が基準値より高(低)いことを示す。


NINO.3 、タヒチおよびダーウィンの場所
エルニーニョ監視海域(NINO.3で示された橙色の枠内)、西太平洋熱帯域(NINO.WEST)、インド洋熱帯域(IOBW)、 および南方振動指数に算出に関連するタヒチ(TAHITI)とダーウィン(DARWIN)の位置


(a)  エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差  (℃) エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差と南方振動指数
(b)  南方振動指数


(c)  西太平洋熱帯域の海面水温の基準値との差  (℃) 西太平洋熱帯域・インド洋熱帯域の海面水温の基準値との差
(d)  インド洋熱帯域の海面水温の基準値との差  (℃)

図B2  エルニーニョ監視海域の海面水温と南方振動指数の推移(1996年1月〜2006年12月)
(a) エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(℃)。 (b) 南方振動指数。太線は5か月移動平均値を示す。 (c) 西太平洋熱帯域の月平均海面水温の基準値との差(℃)。 (d) インド洋熱帯域の月平均海面水温の基準値との差(℃)。 折線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値を示し、正の値は基準値より高いことを示す。 エルニーニョ現象の発生期間は赤で、ラニーニャ現象の 発生期間は青で、それぞれ陰影を施してある。

図B1の青線は、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の値の時間変化を、黒線は、海面水温の基準値の時間変化を示しています。海面水温の基準値には、4月に最も高くなり、8月から11月にかけて最も低くなるという季節変化が見られますが、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の時には、海面水温がこのような変化から大きくずれています。例えば、顕著なエルニーニョ現象が起こっていた1997年の秋には、この海域の海面水温はほとんど下がっていません。

図B2(a)の細線は、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差の時間変化を示したもので、正の値は基準値より高いことを示しています。太線は、月々の値を平滑化するため、5か月移動平均した値を示しています。エルニーニョ現象やラニーニャ現象のように時間変化がゆっくりとした現象の監視には、細かい変化のある月々の値よりも平滑化した値の方が適しています。気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としています。この定義に適合するエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間を「エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間(季節単位)」のページに示すとともに、図B2ではエルニーニョ現象の発生期間に赤の、ラニーニャ現象の発生期間に青の陰影を施しています。

3.3.2 南方振動指数

エルニーニョ現象等と関係の深い南方振動の動向を把握するため、東部の代表地点として南太平洋のタヒチ、西部の代表地点としてオーストラリア北部のダーウィンをとり( 図B2「エルニーニョ監視速報」の図3)、この2地点の月平均海面気圧の平年偏差から東西の気圧差を表す指数を求め、これを南方振動指数と呼んでいます。この指数は、太平洋赤道域を吹いている貿易風の強さの目安となり、正の値は貿易風が強いこと、負の値は弱いことに対応しています。

図B2(b)は、南方振動指数の時間変化を示しています。細線は月毎の値、太線は5か月移動平均した値を示しています。図B2(a)と併せて見ると、一般に、エルニーニョ現象の時には南方振動指数が負に、ラニーニャ現象の時には南方振動指数が正になっていることが分かります。

3.3.3 西太平洋熱帯域(NINO.WEST)の海面水温と基準値

西太平洋熱帯域は、北緯15度と赤道、東経130度と東経150度で囲まれた海域です( 図B2「エルニーニョ監視速報」の図3)。西太平洋熱帯域で平均した海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値に、30年間の各月の単一上昇傾向を加味した値となります。例えば2009年の基準値は、1979〜2008年の各月の30年平均値に、1979〜2008年の上昇傾向から推定される2009年の単一上昇分を加えた値です。海面水温の基準値から差をとることにより、地球温暖化による水温の上昇傾向や数十年よりも長い変動の影響を除いています。

図B2(c)は、西太平洋熱帯域の海面水温の基準との差の時間変化を示しています。細線は月毎の値、太線は5か月移動平均した値を示しています。図B2(a)と併せて見ると、エルニーニョ現象時に負の値、ラニーニャ現象時には正の値になる傾向のあることが分かります。

3.3.4 インド洋熱帯域(IOBW)の海面水温と基準値

インド洋熱帯域は、北緯20度と南緯20度、東経40度と東経100度で囲まれた海域です( 図B2「エルニーニョ監視速報」の図3)。インド洋熱帯域で平均した海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値に、30年間の各月の単一上昇傾向を加味した値となります。例えば2009年の基準値は、1979〜2008年の各月の30年平均値に、1979〜2008年の上昇傾向から推定される2009年の単一上昇分を加えた値です。海面水温の基準値から差をとることにより、地球温暖化による水温の上昇傾向や数十年よりも長い変動の影響を除いています。

図B2(d)は、インド洋熱帯域の海面水温の基準との差の時間変化を示しています。細線は月毎の値、太線は5か月移動平均した値を示しています。図B2(a)と併せて見ると、エルニーニョ現象発生(終息)時にはエルニーニョ監視海域の基準値との差の上昇(下降)に1季節程度遅れて上昇(下降)する傾向が、ラニーニャ現象時には逆に1季節程度遅れて下降(上昇)する傾向のあることが分かります。

3.4 表: エルニーニョ監視海域の海面水温と南方振動指数の最近1年間の値

には、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の値、この値の基準値との差、基準値との差を5か月移動平均した値、及び南方振動指数の過去1年間の値を示しています。5か月移動平均値は、月々の値を平滑化するために、該当する月と前後2か月の計5か月分の値を平均したもので、例えば7月の値は5、6、7、8、9月の平均となります。表中の5か月移動平均値のうち、最新の2か月分の値は決まらないので、該当する欄は空白となっています。表中では、5か月移動平均値が+0.5℃以上となった月の値を下線で、-0.5℃以下となった月の値を斜字体で示しています。

3.5 図4: 海面水温および平年偏差の分布図 (発表の前月)

「エルニーニョ監視速報」の図4には、発表日前月における太平洋及びインド洋の赤道域の海面水温の状況を見るために、月平均海面水温の分布と平年(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差の分布(下で説明する 図C3下 図C4下と同じもの)が示してあります。 図C1は、平年の海面水温の分布を、1月、4月、7月、10月について示しています。赤道域の海面水温は、年間を通して太平洋西部及びインド洋で高く、太平洋東部で低くなっています。また、太平洋東部に見られる低温域の水温は、北半球の春に高くなり、秋に低くなる季節変化をしています。

海面水温の平年値(1月)
海面水温の平年値(4月)
1月
4月
海面水温の平年値(7月)
海面水温の平年値(10月)
7月
10月
図C1  1月、4月、7月、10月における平年(1991〜2020年の30年平均)の海面水温図
太線は5℃毎、細線は1℃毎の等値線を示す。

エルニーニョ現象やラニーニャ現象が起こっている時の太平洋熱帯域における海面水温分布がどうなっているか見るため、 図C2に平年の11月の海面水温分布、 図C3にエルニーニョ現象が最盛期にあった1997年11月の海面水温分布(上)と平年偏差分布(下)、及び 図C4にラニーニャ現象が最盛期にあった1988年11月の海面水温分布(上)と平年偏差分布(下)を示します。1997年11月の水温の図( 図C3上)では、平年(図C2)で見られる赤道域東部の低温域が見られず、東西の海面水温の差がほとんどなくなっています。偏差の図( 図C3下)では、赤道に沿って日付変更線の東から南米沿岸まで正偏差が見られます。これがエルニーニョ現象の時の特徴です。ラニーニャ現象の時には、この付近の偏差が負になり( 図C4下)、東西の海面水温の差が平年より大きくなっています( 図C4上)。
西太平洋熱帯域(フィリピンの東)の海面水温は、エルニーニョ現象時の1997年11月に平年並だったのが、ラニーニャ現象時の1988年11月には平年より高くなってなっているのが分かります。
インド洋の海面水温の変動が日本を含む東アジアの気候に影響を与えているとの研究もあることから、インド洋の状況も記述しています。インド洋熱帯域は、ラニーニャ現象時の1988年11月( 図C4)よりもエルニーニョ現象時の1997年11月( 図C3)に海面水温が高くなっているのが分かります。

海面水温の平年値(11月)
図C2  平年の11月の海面水温
太線は5℃毎、細線は1℃毎の等値線を示す(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。
1997年11月
1988年11月
図C3  1997年11月の海面水温図(上)及び平年偏差図(下)
海面水温図の太線は5℃毎、細線は1℃毎の、平年偏差図の太線は1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す (平年値は1991〜2020年の30年平均値)。
図C4  1988年11月の海面水温図(上)及び平年偏差図(下)
海面水温図の太線は5℃毎、細線は1℃毎の、平年偏差図の太線は1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す (平年値は1991〜2020年の30年平均値)。

3.6 図5: 赤道に沿った水温および平年偏差の深度400mまでの断面図 (発表の前月)

図5図7は、海洋データ同化システムによって解析した海洋内部の水温データを用いて作成したものです。海洋データ同化システムは、実際の観測データと海洋の数値予報モデルを組み合わせることによって、観測データの少ない海域についても物理法則にもとづいて海洋の状況を推定できるシステムです。海洋内部の観測データは数が十分でなく、また、空間的にも時間的にも偏った分布をしていますが、このシステムを用いることによって、海洋内部の状況をより詳しく知ることができます。 図D1 図D2 図D3及び 図E2は海洋データ同化システムで作成したデータを用いており、平年値は1991〜2020年の30年平均値です。「エルニーニョ監視速報」の図5図7においても同様で、図8図10で示す大気の状態で用いる平年値の期間と同じになっています。

平年の赤道に沿った年平均水温の断面図
図D1  平年の赤道に沿った年平均水温の断面図
等値線間隔は1℃で、太線は5℃毎(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。
1997年11月
1998年5月
図D2  1997年11月のインド洋から太平洋の赤道に沿った水温(上)及び平年偏差(下)の断面図
上図は太線が5℃毎、細線が1℃毎の等値線を示し、下図は太線が1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す (平年値は1991〜2020年の30年平均値)。図中白く抜けている部分は陸地である。
図D3  1998年5月のインド洋から太平洋の赤道に沿った水温(上)及び平年偏差(下)の断面図
上図は太線が5℃毎、細線が1℃毎の等値線を示し、下図は太線が1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す (平年値は1991〜2020年の30年平均値)。図中白く抜けている部分は陸地である。

エルニーニョ現象やラニーニャ現象で現れる海面の水温分布の変化は、海洋内部の温度構造の変化も伴います(「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」の図2)。「エルニーニョ監視速報」の図5には、海洋内部の状況を見るために、前月の月平均の水温と平年偏差の赤道に沿った断面図(下で説明する 図D2 図D3と同じもの)が示してあります。 図D1は、赤道に沿った断面の水温分布の平年値を示しています。横軸は経度で、アフリカ沿岸から南米沿岸までが描かれています。縦軸は深さです。水温は、深いところほど低くなっていますが、その下がり方は一様でなく、20℃付近では、水温が深さとともに急激に変化しています。この付近は水温躍層と呼ばれています。また、太平洋赤道域の海面から深度およそ200mまでの水温は、東ほど低く、等温線は、右上がりに傾いています。これは、赤道上を吹く東風(貿易風)によって暖かい水が西部に吹き寄せられているためです。

赤道に沿った断面における水温分布がエルニーニョ現象の時にどのくらい変わるかを、1997/98年のエルニーニョ現象を例に示します。 図D2はエルニーニョ現象の最盛期にあたる1997年11月の、 図D3はエルニーニョ現象の終息直前の1998年5月の、それぞれ赤道に沿った断面の水温分布(上)と平年偏差の分布(下)を示しています。平年( 図D1)では、水温躍層が最も深いのは西部ですが、1997年11月には日付変更線よりも東で最も深くなっています( 図D2上)。偏差図では、日付変更線付近を境として、西側で負偏差、東側では正偏差となっています( 図D2下)。これは、エルニーニョ現象の最盛期に見られる特徴です。1998年5月には、1℃以上の正偏差は東部の海面付近に限られ、ほぼ全域で負偏差となっています( 図D3下)。このことからも、エルニーニョ現象が終息に向かっていることが分かります。 このように、赤道に沿った水温の断面図は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生から終息までの過程の中で、どの段階にあるのかなどを判断するのに有効な資料です。

3.7 図6: 赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図 (発表の前月)

太平洋の赤道に沿った海面水温
太平洋の赤道に沿った海面水温の平年偏差
図E1  インド洋から太平洋の赤道に沿った海面水温(左図)とその平年偏差(右図)の経度-時間断面図
左図では太線は2℃毎、細線は1℃毎の等値線を示す。 右図では太線は1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。 図中白く抜けている部分は陸地である。

図E1(左)は、赤道に沿った海面水温の経度−時間断面図を示しています。図の横軸は経度で、アフリカ沿岸から南米沿岸までが示してあります。縦軸は時間で、上から下に時間が進んでいきます。1996年の秋には中部、東部の海面水温が下がり、東西の温度傾度が強くなっていることが分かります。ところが、エルニーニョ現象が起こっていた1997年の秋には、中部、東部の海面水温の低下があまり見られず、東西の温度傾度が小さくなっています。 図E1(右)は、 図E1(左)から平年の値を引いたもので、赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図を示しています。エルニーニョ現象が起こっていた1997年春以降、中部、東部で顕著な正偏差となっていることが分かります。インド洋赤道域では、東部太平洋赤道域で現れた11〜12月の正偏差のピークに1季節程度遅れて1〜3月に正偏差のピークが現れていることが分かります。 「エルニーニョ監視速報」の図6には、 図E1(右)と同じ、赤道に沿った海面水温の平年偏差の経度−時間断面図が示してあります。

3.8 図7: 赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図 (発表の前月)

インド洋から太平洋の赤道に沿った表層水温
インド洋から太平洋の赤道に沿った表層水温の平年偏差
図E2  インド洋から太平洋の赤道に沿った海洋貯熱量(海面から深度300mまでの平均水温)(左図)と その平年偏差(右図)の経度-時間断面図
左図では太線は2℃毎、細線は1℃毎の等値線を示す。 右図では太線は1℃毎、細線は0.5℃毎の等値線を示す(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。 図中白く抜けている部分は陸地である。

3.6で述べたように、エルニーニョ現象やラニーニャ現象には赤道付近の水温躍層の深さの変化が重要な役割を果たしています。この水温躍層の時間変化を見る上で、 図E2(左)に示した、海面から深度300mまでの水温の平均値(海洋貯熱量)の経度−時間断面図が有効です。図の横軸は経度で、アフリカ沿岸から南米沿岸までが示してあります。縦軸は時間で、上から下に時間が進んでいきます。海洋貯熱量が大きいということは、一般に、水温躍層が深く、高い海面水温が維持されやすいことを意味します。海洋貯熱量は西ほど大きな値になっており、東風によって暖かい水が西に蓄えられ、西部の水温躍層が東部に比べて深くなっている( 図D1参照)ことを示しています。ところが、エルニーニョ現象が最盛期にあった1997年後半には、中部から東部にかけての水温躍層が深くなり( 図D2上参照)、そこでの海洋貯熱量の値が大きくなっています。

図E2(右)は、 図E2(左)から平年の値を引いたもので、赤道に沿った海洋貯熱量の平年偏差の経度−時間断面図を示しています。赤道に沿った海洋表層の変動は、西から東に伝わる性質があります。この図でも、偏差の等値線の多くが右下に傾いていて、時間とともに変動が西から東に伝わっていることが分かります。1997年のエルニーニョ現象の場合にも、3月頃に東経150度付近から東に向かって正偏差の極大が伝わり、これがエルニーニョ現象の発生に結びついていることが分かります。また、エルニーニョ現象の最盛期以降は、西部に負偏差が現れ、次第に東に拡大していることが分かります。このような正偏差や負偏差の東への伝搬は、必ずしもエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生・終息につながるとは限りませんが、一つの目安となるものです。 「エルニーニョ監視速報」の図7には、 図E2(右)と同じ、赤道に沿った海洋貯熱量の平年偏差の経度−時間断面図が示してあります。

3.9 図8: 熱帯域の大気の監視指数(OLR指数、赤道東西風指数)の最近10年間の経過

ここで、太平洋赤道域の大気の東西循環(ウォーカー循環)について説明します。インドネシア付近では海面水温が高いことから、その上空で上昇気流が生じて対流活動が活発になり、降水量が増加して、地上気圧は低くなっています。太平洋赤道域西部で上昇した空気は、太平洋では対流圏上層を西から東に向かい、海面水温の低い太平洋東部で下降し、東部では地上気圧が高くなっています。赤道域では、太平洋の西部と東部の地上気圧の差から、地上付近では東から西に向かう風(貿易風)が吹くことになります。一方、インド洋では対流圏上層を東から西に向かう流れが生じます。このように太平洋やインド洋の赤道域における対流圏では、空気が地上から上層にかけて東西方向に大きく循環しており、この循環はウォーカー循環と呼ばれています。 太平洋赤道域の西部と東部の海面水温の温度差がウォーカー循環の強さ(貿易風の強さ)を決めることから、ラニーニャ現象の発生時(温度差が大きい場合)には、ウォーカー循環が強まって貿易風が強くなります。逆に、エルニーニョ現象の発生時(温度差が小さい場合)には、ウォーカー循環が弱まって貿易風は弱くなります。

OLR-DL, U200-CP及びU850-CPの時系列
図F1   日付変更線付近のOLR指数(OLR-DL)、対流圏上層(200hPa)の 赤道東西風指数(U200-CP)、 対流圏下層(850hPa)の赤道東西風指数(U850-CP)、インド洋における対流圏上層(200hPa) の赤道東西風指数(U200-IN)の時系列(上から順に)
折れ線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値を示す(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。 赤色の陰影はエルニーニョ現象の発生期間を、青色の陰影はラニーニャ現象の発生期間を示している。

図F1(「エルニーニョ監視速報」の図8に相当)に掲載した日付変更線付近におけるOLR指数(OLR-DL)、対流圏上層(200hPa)の赤道東西風指数(U200-CP)、対流圏下層(850hPa)の赤道東西風指数(U850-CP)時系列は、太平洋におけるウォーカー循環の強さの推移を図示しています。インド洋における対流圏上層(200hPa)赤道東西風指数(U200-IN)時系列は、インド洋におけるウォーカー循環の強さの推移を図示しています。

OLR-DLは日付変更線(北緯5度〜南緯5度、東経170度〜西経170度)付近で領域平均したOLRの平年差を標準偏差で割って規格化したものの符号を逆にした上層雲量の指数で、正の値は積乱雲が多いすなわち対流活動が平年よりも活発であることを、負の値は対流活動が平年よりも不活発であることを表します。なお指数を作成する際、符号を逆にして定義しているため、OLR指数の正負はOLRの正負とは逆になっていることにご注意ください。赤道東西風指数は赤道付近の東西循環の指標の1つで、正(負)の値は西風(東風)偏差であることを示します。

1997/98年のエルニーニョ現象の時には、OLR-DLが正に、U200-CPが負に、U850-CPが正に、U200-INが正になっています。これは、エルニーニョ現象が発生しているときには、 図F3で示した結果と同様に日付変更線付近の対流活動が活発になっており、太平洋における対流圏上層の風が東風偏差、下層の風が西風偏差になって、ウォーカー循環が弱くなっていることを示しています。また、1998年から2000年にかけてのラニーニャ現象の時には、それぞれの指数の符号が逆になり、OLR-DLが負に、U200-CPが正に、U850-CPが負に、U200-INが負になっています。ラニーニャ現象が発生しているときには、 図F4で示した結果と同様に日付変更線付近の対流活動が不活発になるとともに、ウォーカー循環が強くなることを示しています。

3.10 図9: 外向き長波放射量(OLR)および平年偏差の分布図 (発表の前月)

外向き長波放射量(Outgoing Longwave Radiation:OLR)とは、極軌道気象衛星によって観測された地表面や雲頂からの赤外線のエネルギー量のことです。一般に物質はその温度に応じた赤外線を放出しています。赤道域で上空1万メートルにも到達する積乱雲の頂上は低い雲に比べると温度が低いので、積乱雲の雲頂から放出されるOLRは小さくなります。つまり、OLRが小さいことは、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。このように、赤道域ではOLRが対流活動の強さの指標として用いられており、「エルニーニョ監視速報」図9にはOLRとその平年偏差の分布図を示してあります。

図F2は、南緯30度から北緯30度における11月のOLRの平年値(1991〜2020年の30年平均値)の分布図を示しています。インドネシアからベンガル湾にかけてとアフリカ大陸中西部及び南アメリカ大陸北西部がOLRの小さい領域すなわち対流活動の活発な領域となっています。また、太平洋赤道域では海面水温が西部で高く、東部で低いこと( 図C1)を反映して、対流活動は、西部で活発、東部で不活発となっています。 図F3はエルニーニョが最盛期にあった1997年11月のOLR及びその平年偏差の分布図を示しています。日付変更線から西経120度付近にかけて平年よりもOLRが小さくなっているのに対し、インドネシア付近からベンガル湾にかけて平年よりもOLRが大きくなっています。エルニーニョ現象が発生しているときには、対流活動の活発な領域が東に移動し、平年に対流活動が活発な太平洋赤道域西部で対流活動が不活発であることが分かります。また、 図F4はラニーニャ現象が最盛期にあった1988年11月のOLR及びその平年偏差の分布図を示しています。インドネシアからベンガル湾にかけて平年よりもOLRが小さくなっており、対流活動が平年よりも活発になっていることが分かります。

平年のOLRの分布図
図F2  11月の外向き長波放射量(OLR)の平年値(1991〜2020年の30年平均値)の分布図
OLRの値が小さいほど、対流活動が活発であることを示しており、
220W/m2以下の領域に青の陰影を施している。 等値線間隔は20W/m2
1997年11月
1988年11月
図F3  1997年11月の外向き長波放射量(OLR)(上)及び平年偏差図(下)
OLRの値が小さいほど、対流活動が活発であることを示しており、 上図では220W/m2以下の領域に青の陰影を施している。 下図ではOLRが平年値より小さく、対流活動が活発な領域に青の陰影を、OLRが平年値より大きく、 対流活動が不活発な領域に緑〜黄〜赤の陰影を施している(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。 上図は20W/m2毎、下図は10W/m2毎に等値線を描いている。 OLRデータは米国海洋大気庁(NOAA)から提供されたものである。
図F4  1988年11月の外向き長波放射量(OLR)(上)及び平年偏差図(下)
OLRの値が小さいほど、対流活動が活発であることを示しており、 上図では220W/m2以下の領域に青の陰影を施している。 下図ではOLRが平年値より小さく、対流活動が活発な領域に青の陰影を、OLRが平年値より大きく、 対流活動が不活発な領域に緑〜黄〜赤の陰影を施している(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。 上図は20W/m2毎、下図は10W/m2毎に等値線を描いている。 OLRデータは米国海洋大気庁(NOAA)から提供されたものである。

3.11 図10: 赤道に沿った速度ポテンシャル(200hPa)と東西風速(850hPa)の平年偏差の経度−時間断面図 (最近の9か月)

エルニーニョ現象の発生時には太平洋赤道域における海面付近の東風(貿易風)が弱まり、ラニーニャ現象の発生時には貿易風が強まります。インド洋赤道域では逆に、エルニーニョ現象発生時には東風偏差、ラニーニャ現象発生時には西風偏差となります。対流圏下層(850hPa)の東西風速の平年偏差の経度−時間断面図( 図G1)を見ると、太平洋では、1997/98年のエルニーニョ現象時には西風偏差(赤色)となり、1998/99年にかけてのラニーニャ現象時には東風偏差(青色)になっています。インド洋では、太平洋と逆向きの偏差になっているのが分かります。
熱帯大気には、「赤道季節内振動」と呼ばれる30〜60日程度の周期の変動が見られます。この変動は、マッデンとジュリアンによって見出されたことから、マッデン−ジュリアン振動(MJO)とも呼ばれます。 図G2は赤道季節内振動の模式図で、時間は上から下に経過することを示しています。赤道季節内振動は赤道上の鉛直面内で東西に広がった大規模な大気の循環の変動で、対流活動の活発な領域が東進しながら30〜60日かけて地球を一周するのに伴って、東西風や海面気圧の変化もあわせて東に移動していく様子が見られます。赤道季節内振動にともなう対流活動は、インド洋からインドネシア近海、西太平洋にかけてゆっくり進み、海面水温の低い東太平洋に向かうにつれて弱まります。

赤道に沿った対流圏下層の東西風速の平年偏差の経度-時間断面図
MJOの模式図
図G1  赤道に沿った対流圏下層(850hPa)の東西風速の平年偏差の経度-時間断面図
等値線の間隔は1.5m/s(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。
図G2  赤道季節内振動の赤道上における時間変化
南緯20度~北緯20度の熱帯域における対流活発域(黄色で囲まれた赤の陰影) と地上気圧の分布の変化を示す。くすんだ赤(青)の陰影は平年より気圧が 高い(低い)ことを示す(平年値は1991〜2020年の30年平均値)。緑の矢印は対流活発域の移動を示す。
描画期間は2005年3月27日~2005年6月4日の約2か月で5日ごとの変化を表している。

対流活動の活発な地域の移動は、赤道付近における対流圏上層(200hPa)の速度ポテンシャル(風の収束・発散を表す指標)の平年偏差の経度−時間断面図で見ることができます。対流活動の活発な領域では、対流圏下層で上昇した空気が対流圏上層で発散(湧き出)しています。 図G3左では、青色の陰影で示される負偏差域(対流活動が平年より活発な地域に対応)が約40日間かけて地球を一周しているのが見られ、これが「赤道季節内振動」に当たります。対流活動の活発な地域では、対流圏の下層で東側からは東風、西側からは西風が吹き込むので、対流活動の活発な領域の進行方向前方で東風偏差が、後方で西風偏差が現れます。 最近の研究から、赤道季節内振動がエルニーニョ現象やラニーニャ現象の発生や終息に大きく関わることが分かってきました。例えば2002年のように、赤道季節内振動に伴う強い西風(西風バースト)がきっかけとなって海洋貯熱量の正偏差域が東進し、エルニーニョ現象が発生した例が見られます。  このように、エルニーニョ/ラニーニャ現象の動向と関わりの深い、赤道季節内振動や西風バーストを監視するために、対流圏上層(200hPa)の速度ポテンシャルの平年偏差と対流圏下層(850hPa)の東西風速の平年偏差の経度−時間断面図( 図G3)を「エルニーニョ監視速報」図10に示しています。

赤道付近の対流圏上層の速度ポテンシャルの平年偏差
赤道付近の対流圏下層の東西風速の平年偏差
図G3  赤道付近における対流圏上層(200hPa)の速度ポテンシャルの平年偏差(左) 及び対流圏下層(850hPa)の東西風速の平年偏差(右)の経度−時間断面図
左図の等値線の間隔は2×106m2/sで、平年よりも発散が強く、 対流活動が活発な領域に青の陰影を、平年よりも発散が弱く、対流活動が不活発な領域に 緑〜黄〜赤の陰影を施している。右図の等値線間隔は1.5m/sで、西風偏差の領域には緑〜黄〜赤 の陰影を、東風偏差の領域には青の陰影を施している(両者の平年値は1991〜2020年の30年平均値)。

3.12 図11: エルニーニョ監視海域の海面水温予測 (基準値との差)

エルニーニョ監視海域の海面水温予測
図H1  エルニーニョ監視海域の海面水温予測

大気海洋結合モデルは、大気と海洋が相互に影響を及ぼしあいながら変化する過程を物理法則に従って計算し、熱帯域の大気と海洋の将来の状態を予測する数値予報モデルのことです。
エルニーニョ監視海域の海面水温予測については、発表の前月に行われた大気海洋結合モデルによる51例の予測結果に、過去事例に対して行った多数の予測実験結果に基づく統計的な処理を施し、 図H1の形式で示しています(「エルニーニョ監視速報」の図11)。
赤丸は、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差を過去11か月について示したものです。黄色のボックスは、「エルニーニョ監視速報」発表月と6か月後までの各月について、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差が70%の確率で入る範囲を示しています。
図中の薄い赤の背景は、エルニーニョ監視海域の海面水温が基準値より高い範囲(+0.5℃以上)を示しています。薄い青の背景は、エルニーニョ監視海域の海面水温が基準値より低い範囲(-0.5℃以下)を示しています。白の背景は、エルニーニョ監視海域に海面水温が基準値に近い範囲(-0.4℃~+0.4℃)を示しています。エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値です。

3.13 図12: 西太平洋熱帯域の海面水温予測 (基準値との差)

西太平洋熱帯域の海面水温予測
図H2  西太平洋熱帯域の海面水温予測

西太平洋熱帯域の海面水温予測については、発表の前月に行われた大気海洋結合モデルによる51例の予測結果に、過去事例に対して行った多数の予測実験結果に基づく統計的な処理を施し、 図H2の形式で示しています(「エルニーニョ監視速報」の図12)。
赤丸は、西太平洋熱帯域の海面水温の基準値との差を過去11か月について示したものです。黄色のボックスは、西太平洋熱帯域の海面水温の基準値との差が70%の確率で入る範囲を示しています。
図中の薄い赤の背景は、西太平洋熱帯域の海面水温が基準値より高い範囲(+0.15℃以上)を示しています。薄い青の背景は、西太平洋熱帯域の海面水温が基準値より低い範囲(-0.15℃以下)を示しています。白の背景は、西太平洋熱帯域の海面水温が基準値に近い範囲(-0.14℃~+0.14℃)を示しています。西太平洋熱帯域の海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値に、30年間の各月の単一上昇傾向を加味した値です。

3.14 図13: インド洋熱帯域の海面水温予測 (基準値との差)

インド洋熱帯域の海面水温予測
図H3  インド洋熱帯域の海面水温予測

インド洋熱帯域の海面水温予測については、発表の前月に行われた大気海洋結合モデルによる51例の予測結果に、過去事例に対して行った多数の予測実験結果に基づく統計的な処理を施し、 図H3の形式で示しています(「エルニーニョ監視速報」の図13)。
赤丸は、インド洋熱帯域の海面水温の基準値との差を過去11か月について示したものです。黄色のボックスはインド洋熱帯域の海面水温の基準値との差が70%の確率で入る範囲を示しています。
図中の薄い赤の背景は、インド洋熱帯域の海面水温が基準値より高い範囲(+0.15℃以上)を示しています。薄い青の背景は、インド洋熱帯域の海面水温が基準値より低い範囲(-0.15℃以下)を示しています。白の背景は、インド洋熱帯域の海面水温が基準値に近い範囲(-0.14℃~+0.14℃)を示しています。インド洋熱帯域の海面水温の基準値は、その年の前年までの30年間の各月の平均値に、30年間の各月の単一上昇傾向を加味した値です。

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