気候系監視速報 ~気候系の診断情報~

 気象庁では、世界各地で起こった異常気象、それをもたらしたと考えられる大気大循環、海洋の状態等気候系を監視しています。これらの監視結果に基づき、月々の気候系の特徴をとりまとめた「気候系監視速報」を作成しています。
 なお、年間の異常気象・天候や気候系の特徴に関する総合的な情報は「気候変動監視レポート」をご覧ください。
※「気候系監視速報」は、利便性向上のため、2025年5月号(2025年6月発表)より、従来のPDF形式からウェブサイト形式に変更して掲載しています。

気候系の特徴(2025年7月)

  • 海面水温は、太平洋赤道域の中部~東部で弱い負偏差となり、NINO.3海域の基準値との差は-0.1℃だった。西太平洋熱帯域とインド洋赤道域および北太平洋中緯度帯では顕著な正偏差となった。一方、アラビア海西部や南シナ海は顕著な負偏差で、小笠原諸島の南からマリアナ諸島北部にかけても負偏差となった。
  • 対流活動は、北西太平洋亜熱帯域で非常に活発で、アジアモンスーン全体としても平年と比べて活発で、北東偏が顕著だった。
  • 対流圏上層では、北半球の亜熱帯ジェット気流は顕著に北偏しており、チベット高気圧が全般に強く、極東方面にも張り出した。また、中部太平洋トラフが深く、北太平洋中部亜熱帯域~中国南部まで低気圧性循環偏差が帯状に広がった。
  • 対流圏下層では、インド~南シナ海~フィリピンの東海上が低気圧性循環偏差となり、モンスーントラフが東偏して深かった。インド洋赤道域は西風偏差、太平洋赤道域は東風偏差が卓越した。
  • 500hPa高度では、極渦はグリーンランド北部に位置し、夏の北極振動指数は正となった。中緯度帯はほぼ正偏差で、中央アジア~太平洋西部は顕著な正偏差となり、北日本付近の正偏差は標準偏差の3倍を超えた。
  • 日本の月平均気温偏差は+2.89℃で、1898年の統計開始以降、2024年を上回り7月として最も高い値となった。地域平均気温は、北・東・西日本でかなり高かった(いずれも1946年以降7月として1位の高温)。一方、沖縄・奄美は低かった。降水量は、北・東・西日本日本海側と北日本太平洋側でかなり少なかった一方、沖縄・奄美ではかなり多かった。日照時間は、北・東・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側でかなり多かった一方、沖縄・奄美ではかなり少なかった。

日本の天候図1図2図3図4日本の地域平均気候表

  • 平均気温:北・東・西日本でかなり高かった一方、沖縄・奄美では低かった。日本の月平均気温偏差は+2.89℃で、1898年の統計開始以降、2024年を上回り7月として最も高い値となった。7月の日本の平均気温は、上昇傾向が続いており、長期的な上昇率は約1.38℃/100年である。
  • 降水量:北・東・西日本日本海側と北日本太平洋側でかなり少なかった一方、沖縄・奄美ではかなり多かった。
  • 日照時間:北・東・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側でかなり多かった一方、沖縄・奄美ではかなり少なかった。
  • 天候経過:偏西風が平年より顕著に北に偏って流れ続け、北・東・西日本は暖かい空気に覆われた。また、太平洋高気圧が本州付近に張り出し、梅雨前線の活動が弱かったため、北・東・西日本では晴れて気温が高い日が多かった。このため、記録的な高温で顕著な多照となった所が多かった。1946年の統計開始以降の7月として、北・東・西日本では1位の高温、東日本日本海側では1位の少雨、東・西日本日本海側では1位の多照となった。一方、太平洋高気圧の軸の南側に位置した沖縄・奄美では、台風や湿った空気の影響を受けやすかったため、曇りや雨の日が多く、顕著な多雨・寡照となった。

世界の天候

  • 世界の月平均気温偏差は+0.42℃(速報値)で、1891年の統計開始以降、7月として3番目に高い値となった。7月の世界の平均気温は、上昇傾向が続いており、長期的な上昇率は約0.75℃/100年(速報値)である(図5)。
  • 主な異常天候発生地域は次のとおり(図6)。
    • 東シベリア南部~東アジア~中央アジア南部、東南アジア中部、中東北西部~北アフリカ北西部~ヨーロッパ北部、コロンビア及びその周辺で異常高温となった。
    • 沖縄・奄美~中国南東部、ヨーロッパ東部~アルジェリア北部、アルゼンチン北部、オーストラリア南東部で異常多雨となった。

海況

  • 太平洋赤道域の海面水温は、南米西方沖を除く東部~中部で負偏差、西部で顕著な正偏差となった(図7)。NINO.3海域の月平均海面水温偏差は0.0℃、基準値との差は-0.1℃だった(図8)。
  • 北太平洋では、熱帯の西部及び中緯度帯で顕著な正偏差、父島近海では顕著な負偏差となった。
  • 南太平洋では、西部及び中部、亜熱帯の東部で顕著な正偏差となった。
  • インド洋熱帯域の中部と東部で顕著な正偏差、アラビア海の西部、南シナ海で顕著な負偏差となった。
  • 大西洋では、北半球の亜熱帯西部と中緯度帯東部、赤道域の西部で顕著な正偏差、赤道域の東部で顕著な負偏差となった。

熱帯の対流活動と循環

  • 対流活動は、平年と比べてインド北西部、フィリピン周辺~北太平洋西部の亜熱帯域、インドネシア東部で活発、ベンガル湾~南シナ海南部、太平洋東部~大西洋~アフリカで不活発だった(図9)。アジアモンスーン全体の対流活動は平年と比べて活発で、北東偏が顕著だった。
  • 赤道季節内振動に伴う対流活発な位相は、月の前半は振幅が小さかったが、その後は海洋大陸周辺〜太平洋~大西洋を東進した(図10)。
  • 対流圏上層では、インドネシア周辺で南北半球対の高気圧性循環偏差となった。パキスタンの北~中国~日本で高気圧性循環偏差、北太平洋中緯度帯~中国南部で低気圧性循環偏差となり、チベット高気圧や中部太平洋トラフは平年と比べて強かった(図11)。
  • 対流圏下層では、インド洋~太平洋西部で南北半球対の低気圧性循環偏差となった。南シナ海~フィリピンの東海上は顕著な低気圧性循環偏差となり、太平洋高気圧の北への張り出しが平年と比べて強かった。太平洋では南北半球対の高気圧性循環偏差となった(図12)。
  • 海面気圧は、赤道域では広く正偏差、中東西部~インド洋~フィリピンの東海上では負偏差となった。南方振動指数は+0.9だった(図8)。

北半球の循環

  • 500hPa高度(図13)より、極渦はグリーンランド北部で平年と比べて強かった。中緯度帯では広く正偏差となり、特に東アジア北部で顕著だった。
  • 200hPa風速(図14)より、亜熱帯ジェット気流は半球規模で北偏し、特に東アジアで顕著だった。ユーラシア大陸の寒帯前線ジェット気流は、ヨーロッパ北部や東シベリアで北へ、西シベリアでは南へ蛇行した。
  • 海面気圧(図15)は、北太平洋~北米の広い範囲で正偏差、グリーンランド周辺やユーラシア大陸で負偏差となった。日本の南海上で顕著な負偏差となり、太平洋高気圧の日本への張り出しが平年と比べて強かった。
  • 850hPa気温(図16)は、ヨーロッパ北部、東シベリア海、日本周辺を含むユーラシア大陸の中緯度帯の広い範囲で正偏差、カナダ北部~米国西部は負偏差となった。

帯状平均場

  • 帯状平均した対流圏の東西風より、北半球では亜熱帯ジェット気流の北偏が顕著だった。南半球の亜熱帯ジェット気流は北偏した。
  • 帯状平均した対流圏の気温は、南半球高緯度を除いて高温偏差となり、特に北半球中緯度で顕著だった。

その他の情報


図1 月平均気温、月降水量、月間日照時間の平年差(比)(2025年7月)
平年値は1991〜2020年の平均値。

図2 旬降水量及び旬間日照時間地域平均平年比の時系列(2025年5月〜2025年7月)
それぞれの上側が降水量(%)、下側が日照時間(%)。平年値は1991〜2020年の平均値。


図3 地域平均気温平年差の5日移動平均時系列(2025年5月〜2025年7月)
平年値は1991〜2020年の平均値。


図4 7月の日本の月平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の平均値。


図5 7月の世界の月平均気温偏差の経年変化(1891〜2025年:速報値)
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の平均値。


図6 異常天候発生地点分布図(2025年7月)


図7 月平均海面水温平年差(2025年7月)
等値線の間隔は0.5°C毎、灰色陰影は海氷域を表す。平年値は1991〜2020年の平均値。


図8 エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(°C)(上)と南方振動指数(下)の推移
細線は月平均値、太線は5か月移動平均値を示す(海面水温の基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値、南方振動指数の平年値は1991〜2020年の平均値)。赤色の陰影はエルニーニョ現象の発生期間を、青色の陰影はラニーニャ現象の発生期間を示している。


図9 月平均外向き長波放射量(OLR)平年差(2025年7月)
陰影の間隔は10W/m2毎。平年値は1991〜2020年の平均値。米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)より提供されたBlended OLRを用いて作成。

図10 赤道付近(5°N~5°S)の5日移動平均200hPa速度ポテンシャル平年差(左)、850hPa東西風平年差(右)の時間・経度断面図(2025年2月〜2025年7月)
等値線の間隔は、4x106m2/s毎(左)、2m/s毎(右)。平年値は1991〜2020年の平均値。


図11 月平均200hPa流線関数・平年差(2025年7月)
等値線の間隔は10x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。


図12 月平均850hPa流線関数・平年差(2025年7月)
等値線の間隔は2.5x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

図13 北半球月平均500hPa高度・平年差(2025年7月)
等値線の間隔は60m毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図14 北半球月平均200hPa風速・風ベクトル(2025年7月)
等値線の間隔は10m/s毎。平年の20m/s毎の等値線を茶色で表す。平年値は1991〜2020年の平均値。
図15 北半球月平均海面気圧・平年差(2025年7月)
等値線の間隔は4hPa毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図16 北半球月平均850hPa気温・平年差(2025年7月)
等値線の間隔は3°C毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

過去の気候系監視速報(2007年3月~2025年6月)

2011年5月号から2021年4月号までは、平年の期間を1981~2010年として記述しています。
2011年4月号までは、平年の期間を1979~2004年として記述しています。
2014年1月号まではJRA-25/JCDASによる大気循環場データに基づいて記述しています。
2014年2月号から2023年4月号まではJRA-55による大気循環場データに基づいて記述しています。
2023年5月号からは気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)による大気循環場データに基づいて記述しています。

項目別の詳細情報

大気の循環・雪氷・海況図表類

2024年3月18日 「大気の循環・雪氷・海況図表類」について、気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)を用いた図表を、熱帯低気圧解析の品質が改善されたデータに基づくものに更新しました。外向き長波放射量(OLR)に基づく1991年以降のすべての図を、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)より提供されたBlended OLRを用いたものに更新しました。
※外向き長波放射量(OLR)関連の図表や指数の値は、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)によるデータの提供状況によっては、更新が遅れる場合や灰色で塗られた欠損表示となる場合があります。

関連情報

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