気候系監視速報 ~気候系の診断情報~

 気象庁では、世界各地で起こった異常気象、それをもたらしたと考えられる大気大循環、海洋の状態等気候系を監視しています。これらの監視結果に基づき、月々の気候系の特徴をとりまとめた「気候系監視速報」を作成しています。
 なお、年間の異常気象・天候や気候系の特徴に関する総合的な情報は「気候変動監視レポート」をご覧ください。
※「気候系監視速報」は、利便性向上のため、2025年5月号(2025年6月発表)より、従来のPDF形式からウェブサイト形式に変更して掲載しています。

気候系の特徴(2025年11月)

  • 海面水温は(図7)、太平洋熱帯域では、西部で顕著な正偏差、中部~東部は負偏差とラニーニャ現象時に特徴的な偏差分布となり、NINO.3は-0.5だった(図8)。負のインド洋ダイポールモード現象が継続し、ダイポールモード指数は-1.0で11月としては過去最低だった。北西太平洋と南西太平洋の亜熱帯域は顕著な正偏差だった。
  • 熱帯の対流活動は(図9)、海洋大陸付近で対流活動が顕著に活発、インド洋で顕著に不活発で、大規模発散は波数1が卓越した。
  • 熱帯域の対流圏の循環は、上層では(図11)、海洋大陸の経度帯で南北両半球対の高気圧性循環偏差となった他は広く低気圧性循環偏差が卓越し、下層では(図12)、海洋大陸を中心にインド洋東部~太平洋西部で南北両半球対の顕著な低気圧性循環偏差となる一方、太平洋中部~東部は南北両半球対の高気圧性循環偏差が卓越した。海面気圧は、海洋大陸~太平洋西部で負偏差、太平洋中部~東部とインド洋で正偏差となり、南方振動指数は+1.3だった。
  • 北半球の亜熱帯ジェット気流は(図14)、帯状平均ではやや北偏した。東アジアではやや北偏し、日本の東海上ではやや南偏していずれも平年より強かった。東アジアの寒帯前線ジェット気流は、60~70°N付近で平年より強かった。
  • 500hPa高度では(図13)、極渦は中央シベリアに位置し、ユーラシア北部が負偏差となる一方、カナダ北部からグリーンランドは正偏差だった。中緯度は、中央アジアで顕著な正偏差、北米は西部で顕著な正偏差、東部で顕著な負偏差となった。 日本付近は偏差小さく、弱い東谷の場だった。
  • 海面気圧は(図16)、北極海が正偏差となる一方、その周囲のユーラシア北部、北太平洋北部、北米東部~北大西洋北部は負偏差となり、アリューシャン低気圧が平年より強かった。シベリア高気圧は、シベリアでは平年より弱かったものの、東アジア南部に張り出した。
  • 日本の天候は(図1)、気温は、沖縄・奄美で高かった他は平年並だった。日本の月平均気温偏差は+0.25℃だった。降水量は、沖縄・奄美でかなり多く、北日本でも多い一方、東日本太平洋側と西日本日本海側ではかなり少なく、西日本太平洋側でも少なかった。日照時間は、沖縄・奄美を除いて多く、東日本日本海側ではかなり多かった。

日本の天候図1図2図3図4日本の地域平均気候表

  • 平均気温:沖縄・奄美で高かった。日本の月平均気温偏差は+0.25℃であった。11月の日本の平均気温は、上昇傾向が続いており、長期的な上昇率は約1.38℃/100年である。
  • 降水量:東日本太平洋側と西日本日本海側でかなり少なかった。沖縄・奄美ではかなり多かった。
  • 日照時間:東日本日本海側でかなり多かった。
  • 天候経過:日本の北を低気圧が通過することが多かったため、北日本日本海側と北日本太平洋側では月降水量が多かった。一方、東・西日本を中心に移動性高気圧に覆われやすく、低気圧や前線の影響を受けにくかったため、月間日照時間は、東日本日本海側でかなり多く、北・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側で多かった。月降水量は東日本太平洋側と西日本日本海側でかなり少なく、西日本太平洋側で少なかった。沖縄・奄美では、上・中旬を中心に台風第26号や前線の影響を受けたため、月降水量はかなり多かった。また、暖かい空気に覆われやすかったため、沖縄・奄美の月平均気温は高かった。

世界の天候

  • 世界の月平均気温偏差は+0.50℃(速報値)で、1891年の統計開始以降、11月として3番目に高い値となった。11月の世界の平均気温は、上昇傾向が続いており、長期的な上昇率は約0.75℃/100年(速報値)である(図5)。
  • 主な異常天候発生地域は次のとおり(図6)。 
    • ロシア南西部~中東北西部、カナダ北部、米国西部~メキシコ 、ニューカレドニア~ニュージーランドで異常高温となった。
    • モンゴル~ロシア北西部、タイ及びその周辺で異常多雨、カスピ海周辺、米国東部で異常少雨となった。

海況

  • 太平洋赤道域の海面水温は、中部~東部で負偏差、西部で顕著な正偏差となった(図7)。NINO.3海域の月平均海面水温偏差は-0.6℃、基準値との差は-0.5℃だった(図8)。
  • 北太平洋では、熱帯の西部及び中緯度帯の広い範囲で顕著な正偏差となった一方、オホーツク海~ベーリング海西部は顕著な負偏差となった。
  • 南太平洋では、西部と中緯度帯の東部で顕著な正偏差となった。
  • インド洋では、熱帯の南東部で顕著な正偏差、北西部で顕著な負偏差となった。
  • 北大西洋では、中緯度帯の西部を除き顕著な正偏差となった。
  • 南大西洋では、中緯度帯の西部で顕著な負偏差、東部で顕著な正偏差となった。

熱帯の対流活動と循環

  • 対流活動は、平年と比べて東南アジアで活発、インド洋西・中部、太平洋赤道域の日付変更線付近、大西洋で不活発だった(図9)。
  • 赤道季節内振動に伴う対流活発な位相はインドネシア~太平洋西部にみられ、下旬には太平洋東部へ東進した(図10)。
  • 対流圏上層では、インドネシアで南北半球対の高気圧性循環偏差、アフリカ~インド洋西部、太平洋中部~南米では南北半球対の低気圧性循環偏差となった(図11)。
  • 対流圏下層では、インド洋東部~インドネシアで南北半球対の低気圧性循環偏差、太平洋中部では南北半球対の高気圧性循環偏差となった(図12)。
  • 海面気圧は、熱帯域では東南アジア周辺で負偏差、太平洋中部~大西洋~インド洋では広く正偏差となった。赤道域では、インド洋東部で西風偏差、太平洋西・中部で東風偏差となった。南方振動指数は+1.3だった(図8)。

北半球の循環

  • 500hPa高度(図13)より、極渦は中央シベリアにあり、ユーラシア北部では負偏差、カナダ北部~グリーンランドでは正偏差となった。中緯度では、中央アジアでは顕著な正偏差、北米の西部では顕著な正偏差、東部では顕著な負偏差となった。
  • 200hPa風速(図14)より、亜熱帯ジェット気流は平年よりもやや北偏し、日本付近では平年よりも強かった。ユーラシア大陸の寒帯前線ジェット気流は、北緯60~70度帯で強かった。
  • 海面気圧(図15)は、北極海では正偏差、ユーラシア北部、北太平洋北部、北米北部~北大西洋北部では負偏差となり、アリューシャン低気圧は平年よりも強かった。東アジア南部では正偏差となり、シベリア高気圧が南に張り出した。
  • 850hPa気温(図16)は、高緯度では概ね、西半球側で正偏差、東半球側で負偏差となった。中緯度では、ユーラシア大陸では正偏差となり、中央シベリアでは顕著な正偏差となった。北米の西部では正偏差、東部では負偏差となった。

帯状平均場

  • 帯状平均した対流圏の東西風より、両半球ともに亜熱帯ジェット気流は平年の位置よりやや北偏した。
  • 帯状平均した対流圏の気温は、北半球極域と南半球緯度50度付近を除いて広い範囲で高温偏差となった。北半球の成層圏の気温は、北緯60度以南で低温偏差、北緯60度以北で高温偏差となった。

その他の情報


図1 月平均気温、月降水量、月間日照時間の平年差(比)(2025年11月)
平年値は1991〜2020年の平均値。

図2 旬降水量及び旬間日照時間地域平均平年比の時系列(2025年9月〜2025年11月)
それぞれの上側が降水量(%)、下側が日照時間(%)。平年値は1991〜2020年の平均値。


図3 地域平均気温平年差の5日移動平均時系列(2025年9月〜2025年11月)
平年値は1991〜2020年の平均値。


図4 11月の日本の月平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の平均値。


図5 11月の世界の月平均気温偏差の経年変化(1891〜2025年:速報値)
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の平均値。


図6 異常天候発生地点分布図(2025年11月)


図7 月平均海面水温平年差(2025年11月)
等値線の間隔は0.5°C毎、灰色陰影は海氷域を表す。平年値は1991〜2020年の平均値。


図8 エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(°C)(上)と南方振動指数(下)の推移
細線は月平均値、太線は5か月移動平均値を示す(海面水温の基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値、南方振動指数の平年値は1991〜2020年の平均値)。赤色の陰影はエルニーニョ現象の発生期間を、青色の陰影はラニーニャ現象の発生期間を示している。


図9 月平均外向き長波放射量(OLR)平年差(2025年11月)
陰影の間隔は10W/m2毎。平年値は1991〜2020年の平均値。米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)より提供されたBlended OLRを用いて作成。

図10 赤道付近(5°N~5°S)の5日移動平均200hPa速度ポテンシャル平年差(左)、850hPa東西風平年差(右)の時間・経度断面図(2025年6月〜2025年11月)
等値線の間隔は、4x106m2/s毎(左)、2m/s毎(右)。平年値は1991〜2020年の平均値。


図11 月平均200hPa流線関数・平年差(2025年11月)
等値線の間隔は10x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。


図12 月平均850hPa流線関数・平年差(2025年11月)
等値線の間隔は2.5x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

図13 北半球月平均500hPa高度・平年差(2025年11月)
等値線の間隔は60m毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図14 北半球月平均200hPa風速・風ベクトル(2025年11月)
等値線の間隔は15m/s毎。平年の30m/s毎の等値線を茶色で表す。平年値は1991〜2020年の平均値。
図15 北半球月平均海面気圧・平年差(2025年11月)
等値線の間隔は4hPa毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図16 北半球月平均850hPa気温・平年差(2025年11月)
等値線の間隔は4°C毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

季節の気候系の特徴(2025年9月〜2025年11月)

  • 海面水温は(図S3)、太平洋熱帯域では、西部で顕著な正偏差となる一方、中部~東部は負偏差となり、ラニーニャ現象時に特徴的な偏差分布となった。インド洋では、東部で顕著な正偏差、西部で顕著な負偏差となり、負のダイポールモード現象が発生し、1950年以降最も強い負の現象となった。東シナ海や西日本周辺は標準偏差の3倍を超える著しい正偏差だった。
  • 熱帯の対流活動に伴う上層の大規模発散は波数1が卓越して、海洋大陸付近が発散中心となった。特に、インドシナ半島~フィリピンとインドネシア南部~オーストラリア北部で対流活動が顕著に活発だった(図S4)。
  • 熱帯の循環は、インド洋~海洋大陸で、南北両半球対で上層(図S5)が高気圧性、下層(図S6)が低気圧性循環偏差となった一方、太平洋では、南北両半球対で上層が低気圧性、下層が高気圧性循環偏差となった。また、北西太平洋亜熱帯域では下層の高気圧性循環偏差が顕著だった。
  • 北半球の亜熱帯ジェット気流は(図S8)、帯状平均では平年の位置で強かった。東アジアでは、夏以降10月までは顕著な北偏だったが、11月はやや南偏となり、季節内の変化が大きかった。ユーラシア大陸中緯度の上層の循環は帯状に高気圧性循環偏差がみられ、中東と東アジアで顕著だった(図S5)。
  • 500hPa高度(図S7)では、極渦は、やや東シベリア側にシフトしてカムチャツカの南にかけて負偏差となる一方、カナダ~グリーンランドは顕著な正偏差だった。中緯度は、大西洋が負偏差となった他は概ね正偏差で、中東~東アジアは顕著な正偏差となり、中国東部~東シナ海は標準偏差の3倍を超える顕著な正偏差だった。
  • 海面気圧(図S9)は、グリーンランド周辺およびロシア西部~中央シベリアで正偏差となった他は、概ね負偏差で、アリューシャン~アラスカ~カナダ北部は顕著な負偏差だった。
  • 日本の天候は(図S1)は、全国で気温がかなり高く、沖縄・奄美は1946年の統計開始以降最も高い記録となった。日本の秋平均気温偏差は+1.37℃で、1898年の統計開始以降、第3位の高温だった。降水量は、北・東日本日本海側で多く、東・西日本太平洋側で少なくなり、東日本のそれらはいずれも顕著だった。日照時間は、西日本日本海側と東日本太平洋側を除いて多く、沖縄・奄美と北日本太平洋側ではかなり多かった。

図S1 3か月平均気温、3か月降水量、3か月間日照時間の平年差(比)(2025年9月〜2025年11月)
平年値は1991〜2020年の平均値。


図S2 異常天候発生地点分布図(2025年9月~2025年11月)



図S3 3か月平均海面水温平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は0.5°C毎、灰色陰影は海氷域を表す。平年値は1991〜2020年の平均値。


図S4 3か月平均外向き長波放射量(OLR)平年差(2025年9月〜2025年11月)
陰影の間隔は10W/m2毎。平年値は1991〜2020年の平均値。米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)より提供されたBlended OLRを用いて作成。


図S5 3か月平均200hPa流線関数・平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は10x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。


図S6 3か月平均850hPa流線関数・平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は2.5x106m2/s毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

図S7 北半球3か月平均500hPa高度・平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は60m毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図S8 北半球3か月平均200hPa風速・風ベクトル(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は15m/s毎。平年の30m/s毎の等値線を茶色で表す。平年値は1991〜2020年の平均値。
図S9 北半球3か月平均海面気圧・平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は4hPa毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。
図S10 北半球3か月平均850hPa気温・平年差(2025年9月〜2025年11月)
等値線の間隔は4°C毎。陰影は平年差。平年値は1991〜2020年の平均値。

季節の情報

過去の気候系監視速報(2007年3月~2025年10月)

2011年5月号から2021年4月号までは、平年の期間を1981~2010年として記述しています。
2011年4月号までは、平年の期間を1979~2004年として記述しています。
2014年1月号まではJRA-25/JCDASによる大気循環場データに基づいて記述しています。
2014年2月号から2023年4月号まではJRA-55による大気循環場データに基づいて記述しています。
2023年5月号からは気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)による大気循環場データに基づいて記述しています。

項目別の詳細情報

大気の循環・雪氷・海況図表類

2024年3月18日 「大気の循環・雪氷・海況図表類」について、気象庁第3次長期再解析(JRA-3Q)を用いた図表を、熱帯低気圧解析の品質が改善されたデータに基づくものに更新しました。外向き長波放射量(OLR)に基づく1991年以降のすべての図を、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)より提供されたBlended OLRを用いたものに更新しました。
※外向き長波放射量(OLR)関連の図表や指数の値は、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)によるデータの提供状況によっては、更新が遅れる場合や灰色で塗られた欠損表示となる場合があります。

関連情報

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