平成21年 No.14 週間火山概況 (平成21年3月27日 〜 平成21年4月2日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
3月31日に、安達太良山、磐梯山、那須岳及び箱根山に噴火警戒レベルを導入した(いづれの火山についてもレベル1、平常)。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。
表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(3月27日〜4月2日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
3月31日10時00分 | 安達太良山 | 噴火予報 | 噴火警戒レベル導入(レベル1、平常) |
3月31日10時00分 | 磐梯山 | 噴火予報 | 噴火警戒レベル導入(レベル1、平常) |
3月31日10時00分 | 那須岳 | 噴火予報 | 噴火警戒レベル導入(レベル1、平常) |
3月31日10時00分 | 箱根山 | 噴火予報 | 噴火警戒レベル導入(レベル1、平常) |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 4月2日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 浅間山、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 雌阿寒岳、三宅島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢) |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(4月2日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
雌阿寒岳 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
ポンマチネシリ火口の噴煙は火口縁上200m以下で推移し、噴火前と比べ依然やや多い状態であるが、噴出の勢いは次第に弱まってきている。
火山性地震は一日あたり数回〜30回程度とやや少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。
GPSによる地殻変動観測では、2008年10月初め頃よりやや広域の地殻変動が認められるが、浅部の膨張は認められない。
雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰に注意が必要である。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。また、夜間には、高感度カメラ2)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測されるなど、熱活動の高まった状態が続いている。
火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
30日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり1,500〜1,900トン(前回3月19日、2,300〜3,600トン)と多い状態が続いている。
傾斜計では火山活動による特段の変化は観測されていない。
GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃から深部へのマグマ貫入を示すわずかな伸びの傾向がみられている。
浅間山では、居住地域の近くまで影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から4kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
2)国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラによる。
図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2009年4月2日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
4月1日16時17分頃、山頂火口でごく小規模な噴火が発生し、灰色の噴煙が火口縁上600mまで上がり、東に流れるのを観測した。同日行った現地調査では、島の東側の山麓(山頂火口から約3km)で降灰が確認された。また、この噴火により、空振3)を伴う振幅のやや大きな低周波地震を観測した。そのほかの観測データには変化はみられなかった。噴火が発生したのは2008年5月8日のごく小規模な噴火以来である。
噴火した以外の時間は、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
火山性地震はやや多い状態が続いている。
三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流にも注意が必要である。
2)噴火などで発生した空気の急激な圧力変化が大気中を周囲に伝わる現象。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は継続している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では、4月2日に7回の爆発的噴火を含む噴火が度々発生し、このうち15時04分の爆発的噴火では、大きな噴石1)が4合目(昭和火口より800〜1300m)まで達した。南岳山頂火口では、3月27日及び29日にごく小規模な噴火が発生した。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いているが、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
桜島では、昭和火口及び南岳山頂火口から2kmを超えた居住地域近くまでの範囲では、噴火に伴う大きな噴石及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき4))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
島内に設置した遠望カメラにより、白色噴煙が時々観測され、高さは火口縁上20〜40mで推移した。
火山性地震および火山性微動は少ない状態が続いている。
GPSによる地殻変動観測では、2008年9月以降続いていた新岳火口浅部のわずかな膨張を示す変化が2009年2月以降鈍化している。
口永良部島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、爆発的噴火が時々発生した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。