2006年 No.17 火山の概況 (平成18年4月21日 〜 平成18年4月27日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
27日に小規模な噴火が観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。また、火山性地震のやや多い状態が続いている。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
25日と26日に変色水が確認された。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発な状態であるが、今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
17日夕方(前期間)から川奈崎沖を中心に小規模な地震が多発していたが、地震活動は24日以降低調な状態が続いている。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。
 火山性地震は1日あたり概ね5〜15回で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では、特段の変化は観測されなかった。
 26日に北海道の協力を得て行った上空からの観測では、赤沼火口の噴煙活動は噴火直後に比べ低下傾向にあるものの、火口底北西部の複数の箇所から、白色の噴煙が比較的強い勢いで噴出していた。これらを含め火口底には噴出域や地熱域が環状に点在しており、11日に北海道大学が行った調査結果と比べ熱活動等の状況には特段の変化は認められなかった。火口周辺への新たな噴出物は認められなかった。山頂の北西側斜面の噴気孔群の上部からは依然活発な噴気活動を確認した。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
 26日に行った火山ガス観測1)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300〜600トンと、依然としてやや多い状態が続いている(前回18日:200〜900トン/日)。
 26日に上空から行った観測1)では、火口底の地形に大きな変化はなく、火口周辺への新たな噴出物は認められなかった。赤外熱映像装置2)による観測では、今回の調査では最高温度は約500℃と、火口内は依然として高温状態にあることが確認された。
 火山性地震の回数は1日あたり27〜66回とやや多い状態で経過した。火山性微動は22日に4回、23日に1回観測された。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

1) 陸上自衛隊の協力により実施。
2) 赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況] <期間外の記述を含む>

 17日(前期間)夕方から発生し始めた伊東市川奈崎沖の地震活動は、27日までに震度1以上を観測した地震は41回発生している。このうち最大の地震は21日2時50分のM(マグニチュード)5.4(暫定値)で、伊東市や東伊豆町などで震度4を観測した。24日以降発生回数は減少し、低調な状況が続いている。
 この地震活動に伴い東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計や伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計、また、国土地理院によるGPS観測で地殻変動に伴う変化がみられていたが、24日以降は同様にほぼ落ち着いた状態になっている。なお、噴火に結びつくような現象は現在のところ観測されていない。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 23日04時03分には空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震3)が発生し、三宅村神着と三宅村坪田で震度1を観測した。地震発生時の噴煙の状況やその他観測データには特段の変化はなかった。三宅島測候所が行った現地調査では降灰は確認されなかった。火山性地震の回数は1日あたり1〜24回とやや多い状態が継続している。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

3) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。


● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]

 25日と26日に海上保安庁が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場を中心とした半径約50m程度で、火山活動によるとみられる青みがかった乳白色の変色水が確認された。また、25日には福徳岡ノ場の南側約500mに位置に北東方向に白色の浮遊物が幅約1m、長さ約50mにわたって確認された。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間13回、前期間14回)。今期間、火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では、噴煙活動は引き続きやや活発な状態であるが、今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。継続時間が短く振幅の小さな火山性微動を1回観測したが、火山性地震は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった(前期間は爆発的噴火4)が1回発生)。噴煙の最高高度は25日の600m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11㎞)で降灰は観測されなかった。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動の発生状況や、GPSによる地殻変動には特段の変化はなかった。

4) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳山頂火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間57回、前期間106回)。火山性微動は観測されなかった。今期間、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、爆発的噴火は観測されなかった。火山性地震は少ない状態で経過しているが、26日夜から火山性連続微動を観測した。27日に御岳の南南西約4kmにある集落で降灰があったことが十島村役場諏訪之瀬島出張所によって確認された。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第25号 24日16:00 活発な火山活動が継続。17日〜24日(15時)の活動状況(噴火はなし)。
浅 間 山 火山観測情報第16号 21日16:00 14日〜21日15時の活動状況。18日に行った火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第111〜117号
(1日1回発表)
21日〜27日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。23日には空振を伴う振幅の大きな低周波地震を観測したが、降灰はなし。


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