2005年 No.27 火山の概況 (平成17年6月30日〜平成17年7月6日)
【噴火した火山】
【活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山】
- 十勝岳
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。7日(期間外)にごく小規模な微動が発生した。
- 樽前山
- 噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- 浅間山
- 活発な噴煙活動、微弱な火映の発生、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。レベルは2。
- 三宅島
- 2〜3日に一時的に地震が増加した。多量の火山ガスの放出が継続していると推定される。
- 阿蘇山
- 中岳第一火口内の熱的な活動のやや活発な状態が続いている。降水の影響で湯だまり量の増加が見られた。レベルは2。
- 霧島山(御鉢)
- 活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。
- 桜 島
- 噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。レベルは2。
- 薩摩硫黄島
- 活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。
- 口永良部島
- 活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 記号の意味
▲:噴火した火山
●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
注3 本文の火山名の後ろの[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
変化があった観測データ項目を示す。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [噴煙・熱・微動] (やや活発な状況) (期間外の記述を含む)
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね300mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなかったと考えられ、高温の状態が続いていたと推定される。
7日(期間外)05時10分頃から継続時間約1分の振幅の小さな微動が観測された。地震活動や地殻変動に特段の変化はなかった。前期間の6月28日に発生した微動に比べ規模は小さかった。
● 樽前山 [熱] (やや活発な状況) (期間外の記述を含む)
6月29日(前期間)に実施した調査観測では、A火口の温度は約580℃1)と依然として高温であった(前回5月25日の観測では約560℃1))。
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなかったと考えられ、引き続き高温の状態が続いていたと推定される。
1) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 浅間山 [噴煙・火映・地震・微動] (やや活発な状況 【レベル2】)
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上300mであった。また、微弱な火映が3日と4日を除く毎日、山麓の高感度カメラ2)で観測された。
5日に行った上空からの観測3)では、多量の噴煙のため山頂火口内の状況は確認できなかったが、火口周辺に新たな噴出物は認められなかった。赤外熱映像装置による観測では、火口内に高温部分が認められたが、最高温度は噴煙のため不明であった。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり19〜47回、0〜5回であった。
2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
3)群馬県の協力により、気象庁と東京大学地震研究所が共同で実施。
● 三宅島 [地震・噴煙・火山ガス] (やや活発な状況)
2〜3日にかけて山頂火口直下を震源とするやや低周波地震が増加した。その間の3日10時59分、11時7分、14時16分には空振を伴う低周波地震が発生し、10時59分の地震では三宅村神着で震度1が観測された。いずれの地震発生時にも噴煙は雲による視界不良のため確認できなかったが、その他の観測データには特に異常は見られなかった。また、6日14時57分に山頂火口直下を震源とする振幅のやや大きな高周波地震が発生し、三宅村神着と三宅村坪田で震度1が観測された。地震発生時の噴煙は雲による視界不良のため確認できなかった。この地震の前後で地震の増加はなく、その他の観測データにも特に異常は見られなかった。
期間中の火山性地震の回数は、2日に80回、3日に335回観測された以外は少なく、1日あたり5〜15回であった。火山性微動は観測されなかった。山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上300mであった。
今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガス放出が続いていると推定される。
▲ 福徳岡ノ場 [海底噴火・変色水] (活発な状況)
海上自衛隊によると、2日17時45分頃から福徳岡ノ場で白色噴煙が目撃され、同日19時過ぎに行った調査で、海面から高さ約1,000mに達する白色噴煙と、海面上の幅100m長さ300m程度の範囲に噴火によると思われる浮遊物が確認された。
3日に海上自衛隊及び海上保安庁が上空から行った調査では、白色噴煙の高さが低くなるなど噴火活動は次第に低下し、4日及び5日の上空からの調査4)では、噴煙は見られず、3日までの噴火の浮遊物と変色水が確認される程度に収まっていた。
4) 4日は海上保安庁と東京工業大学、5日は海上保安庁と気象庁が共同で実施。
● 阿蘇山 [熱・土砂噴出・微動・地震] (やや活発な状況 【レベル2】)
中岳第一火口内の熱的な活動のやや活発な状態が続いている。降水の影響で湯だまり量の増加が見られた。
6日に実施した現地観測によると、中岳第一火口内の状況は、降水による影響で湯だまりの量が約1割から約4割に増加し、湯だまりの色が黒灰色から灰色に変色していた。湯だまりの表面温度は66℃1)とやや高い状態であった(前期間は68℃1))。湯だまりの北側で高さ約5m、その他で高さ2〜3mの多数の土砂噴出が引き続き観測された。
火山性連続微動は5日夜から振幅がやや大きくなった。孤立型微動の発生回数には大きな変化はなかった(今期間の発生回数は604回と前期間(405回)より回数はやや増加したが、通常レベルの範囲内である)。火山性地震の発生回数は141回とやや増加した(5月以降は1週間あたり100回未満の少ない状態が続いていた)。
噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
● 霧島山(御鉢) (やや活発な状況 【レベル2】)
火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は、天候不良のため、監視カメラ5)による観測では御鉢火口の噴気は確認できなかった。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特に変化はなかった。
5) 御鉢火口の南西約5kmに設置。
● 桜島 (比較的静穏な噴火活動 【レベル2】)
今期間、噴火は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動等その他の観測データにも特に変化はなかった。噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。
● 薩摩硫黄島 (やや活発な状況 【レベル2】)
火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は地震活動、噴煙活動等は低調であった。
● 口永良部島 (やや活発な状況 【レベル2】)
火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は地震活動、噴煙活動等は低調であった。
▲ 諏訪之瀬島 [爆発・微動・地震] (活発な状況 【レベル3】)
6日に爆発的噴火が4回発生した。噴煙の状況は悪天のため不明であった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。爆発的噴火が発生したのは、6月7日以来であった。
30日夕方から振幅のやや大きな火山性微動が発生し始め、期間を通して断続的に観測された。また、火山性地震の回数が7月1日から増加し、期間の終わりまでやや多い状態が続き、1日あたり7〜39回観測された。振幅のやや大きな連続微動及び地震の増加が観測されたのは、5月下旬から6月初旬に噴火活動が活発であった期間以来であった。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第177号 | 1日16:00 | 6月24日〜7月1日15時の活動状況(噴煙量、火山ガス放出量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測)。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報第359号 ↓(1日2回発表) 火山観測情報第372号 |
30日09:30 ↓ 6日16:40 |
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
福徳岡ノ場 | 火山観測情報第1号 | 3日19:30 | 海上自衛隊及び海上保安庁の観測により、小規模な海底噴火が確認された。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第33号 | 1日11:00 | やや活発な火山活動が継続(赤熱現象が継続)。レベルは2。 |