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気候リスク管理技術に関する調査(アパレル分野):
売り場作りに2週間先までの気温予測を活用する

気象庁では、「気候リスク管理」の有効性を示す実例(成功事例)を示すため、 (一社)日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の協力を得て、アパレル分野における気候リスク管理技術に関する委託調査を実施しました。詳しくは下記をご覧ください。

この調査の結果、様々な産業への応用が期待できる成果が得られました。

このページでは、アパレル分野における気候リスクへの対応策として、2週間先までの気温予測を売り場作りに活かす方法について紹介します。


1. はじめに

挿絵

気候リスク評価の実例(アパレル分野)で示したように、様々なファッションアイテムにおいて、販売数と気温との間に明瞭な関係があります。また、上記の調査により、一部のアイテムでは販売構成比(販売シェア)と気温との間に明瞭な関係が見出されました。このような分析結果に基づき、平年から大きく隔たる気温が予想された場合に、本来展開すべきアイテム以外でどのような別アイテムを代替展開するべきかの参考にすることができます。

2. 分析 ~気温と販売構成比を比べてみる~

気温とインナー販売構成比の関係

図1 気温とインナー販売構成比の時系列図

左軸が販売構成比、右軸が東京の7日平均気温
上が2011年 下が2013年

図1は2011年と2013年の東京の7日平均気温と首都圏店舗におけるインナー主要5アイテムの販売構成比をプロットしたものです。9月下旬頃から秋冬用の肌着トップ、肌着ボトムの販売構成比が徐々に高まり、2011年は10月初めにかけて気温が平年を下回ったことで両者の販売シェア率が拡大しています(図中①)。一方、2013年は10月初めの顕著な高温に対応して肌着トップ、肌着ボトムのシェア率の停滞がみられ、その後の気温の急降下に伴い両者の販売シェアの急拡大がありました(図中②)。 また、11月上旬の冷え込みに対応して、肌着トップ・肌着ボトムのシェア率の一時的な高まりがみられました(図中③)。

この2013年10月前半の顕著な高温とその後の低下を2週間程度前から見通すことができれば、店舗に陳列するアイテムの構成比の変更などに活用できる可能性があります。

この他にも、サンダルやブーツなど靴類の構成比やニットや編み物など帽子の素材別構成比、ウールやダウンなどコートの種類別構成比、コートやカットソーなどの品目別構成比などについても分析した結果、それぞれについて気温の変動と一定の関係がありました。


【アパレル協力社からのコメント】
アイテム間の売上構成比が、気温の変化に明瞭に対応して変化することは大きな発見だった。各アイテムの売上絶対量はもちろんだが、売場に投入できる在庫量は一定であることを考えると、相対量という観点も重要である。その際に、こうした気温との関連性が見出せたことは、今後、気温の影響を考慮した売場を検討する上で非常に参考となる。

3. 対策 ~売り場作りに気温予測を活用してみませんか?~

それでは2週間先の気温予測に基づく対応策を考えてみましょう。ここでは販売数と気温との関係が特に明瞭であったロングブーツをとりあげます。

図2のグラフは2009~2013年の8~12月の東京における気温と首都圏店舗におけるロングブーツの販売数をプロットしたものです。販売数の出だしは9月中旬頃の年が多く、10月前半に販売数が大きく伸びる時期がみられます。詳しく見ると、2009年(赤)や2011年(緑)は10月初めに販売数が伸びているの対して、2012年(青)や2013年(紫)は10月初めまではほとんど売れておらず、10月中旬に入って伸びている状況です。

この違いは何がもたらしているのでしょうか?
販売数が大きく伸びている時期は、平均気温がちょうど20度を下回る時期にほぼ一致しており、販売数と気温との関係が明瞭と言えます。

気温とロングブーツ販売数の関係

図2 気温とロングブーツ販売数の時系列図

左軸が東京の平均気温、右軸がロングブーツの販売数
対象日(横軸)を中心とする7日移動平均をしている

【アパレル協力社からのコメント】
販売開始から徐々に販売数は増加しているが、気温が20度を下回るタイミングで販売数が急増していることがわかる。急増の時期は年によって違い、2から3週間のずれになる場合もあるが、20度がある程度の目安と見える。

次に、2週間先の気温予測を活用した対応策を、2013年の実際の予測を例に示します。
ロングブーツの販売数が大きく伸びる目安は、図2より平均気温が20度ということが分かりましたので、20度を下回る予測確率を対応の有無を判断するトリガーとして考えてみます。

図3の左のグラフは、平成25年10月8日の時点で予測された2週間先までの東京の7日平均気温がある閾値に入る確率を表したものです。赤く塗られた部分は気温がかなり高くなる確率の大きさを示していて、このグラフによるとこの期間の初めはかなりの高温が続く予想ですが、期間の中頃には気温のかなり高い状態がおさまることを示しています (①)。

図3の右のグラフは、10月16日からの7日平均気温を確率密度分布(緑)と累積確率分布(青)で表したものです。このグラフによると、20度を下回る確率は10月16日からの1週間で83%と分かります (②)。
この予測結果から、本部から支部や支店に以下のような対応を指示することが考えられます。

【対応策案】
気温が20度を下回る可能性が大きく、ロングブーツの販売数が伸びることが見込まれることから、色やサイズの欠品をなるべくしないよう、こまめな在庫補充を指示する。

このように2週間先の予測を使うことにより、事前に余裕をもって在庫の確認や準備をしておくことができます。

挿絵
予測資料

図3 平成25年10月8日(火)に発表された気温予測情報

確率時系列は こちら、確率密度分布は こちらから、最新の予測情報を参照できます。
また、確率密度分布の詳しい見方や操作方法については こちら(PDF形式:300KB)を参照ください。

4. 売り場変更のシミュレーション ~レディースニットとカットソー~

レディースニットとカットソー、それぞれの販売数と気温の関係の違いを利用し、気象庁が発表する異常天候早期警戒情報の2週間先の気温予測を用いて、注目する温度の確率値に応じた対応シミュレーションの例を示します。

図4のグラフは、2009~2013年の8~11月の東京における気温と首都圏店舗におけるニットとカットソーの販売数をプロットしたものです。カットソーは20~25度の温度帯で販売ピークとなりますが、それより低い温度になると、気温低下とともに単調に販売数は少なくなります。一方、ニットは27度を下回る頃(東京では8月末頃)から販売数の伸びが大きくなり、17度位(東京では10月下旬頃)の温度で販売ピークに達し、それ以下の温度帯ではほぼ横ばいの販売数となります。

このグラフから、ニットとカットソーは22度付近で販売シェアの逆転が起こることが分かります。

気温とニット又はカットソー販売数の関係

図4 気温とニット又はカットソー販売数の散布図

横軸が東京の平均気温、縦軸がニット又はカットソーの日別販売数
関係を見やすくするために7日移動平均をしている


シミュレーションにあたって以下の条件を仮定して、異常天候早期警戒情報の気温予測において平均気温が22度を下回る確率に着目し、カットソー主体からニット主体の売り場に変更する判断を行います。

仮定条件

カットソー ニット

平均価格

3,000円 7,000円

粗利率

70% 70%

1枚あたりの粗利益額

2,100円 4,900円

両アイテムの1店舗あたりの合計日販売数

50枚

平均気温26度のときの販売比率

70% 30%

平均気温22度のときの販売比率

50% 50%
表1 シミュレーションの仮定条件

また、売り場変更に係るコスト(資材、造作、残業手当、本部コストなど業務に係る経費)を20,000円と試算します。

平均気温が26度の状態から平均気温22度となると予想された場合、温度変化に対応した売り場変更を行う場合と行わない場合、以下のような差が生じると考えられます。

売り場変更シミュレーション

カットソー ニット 結果

売り場の状況

販売数 粗利益額 販売数 粗利益額 販売数 計 粗利益額 計

Before(現時点の売り場)

26度に対応 35枚 73,500円 15枚 73,500円 50枚 147,000円

After(売り場変更実施)*1

22度に対応 25枚 52,500円 25枚 122,500円 50枚 175,000円

After(売り場変更せず)

26度に対応 25枚 *2 52,500円 15枚 *3 73,500円 40枚 126,000円
表2 シミュレーションの結果

*1 カットソー:ニットの売り場面積を50%:50%にすることで両販売数が25枚ずつになります。
*2 22度の日のカットソーの販売力は25枚。35枚分の売り場面積があったが気温が下がったため、10枚が売れ残ります。
*3 22度の日の販売力は25枚ですが、15枚分の売り場面積しかもっていなかったため、差分10枚相当は売り逃しました。



以上のシミュレーションの結果、気温低下にあわせて売り場変更対応を行わない場合、49,000円分の粗利益額喪失につながります。しかしながら気温予測は100%適中するわけではなく、実際気象庁の異常天候早期警戒情報の気温予測においてはその温度に到達する確率が公表されるため、下表のように確率の値によって対応策を行うかどうかの判断を行い、プラスの効果が得られるかどうかの指標とすることができます(効果シミュレーショングラフは図5参照)。

確率

10% 20% 30% 40% 50%

10回あたりの獲得粗利額(円)

49,000円 98,000円 147,000円 196,000円 245,000円

10回あたりのコスト(円)

200,000円 200,000円 200,000円 200,000円 200,000円

差額(円)

-151,000円 -102,000円 -53,000円 -4,000円 45,000円

確率

60% 70% 80% 90% 100%

10回あたりの獲得粗利額(円)

294,000円 343,000円 392,000円 441,000円 490,000円

10回あたりのコスト(円)

200,000円 200,000円 200,000円 200,000円 200,000円

差額(円)

94,000円 143,000円 192,000円 241,000円 290,000円
表3 確率値別のシミュレーション結果


予測資料

図5 売り場変更の効果シミュレーショングラフ

5. 事例集 ~様々なアイテムの販売数などに気象との関係がみられます~

本調査にご協力いただいた各社の販売データを基に、気象要素(主に気温)との関係及び対策案について各アイテムごとにまとめました。

  アイテム別の販売数と気温との関係

  秋冬用肌着トップ    ロングブーツ    サンダル    ニット帽子    ブルゾン   ニット    コート(  F社  D社  地域別

  アイテム別の販売構成比の気温との関係

  レディースウェア    インナーアイテム   

  素材別の販売構成比と気温との関係

  コート    帽子

  気温以外との関係

  日傘   雨用靴

販売数と気象要素との関係を調べた事例一覧

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