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アパレル(衣料品販売)分野における気候リスク評価の実例:
気温と売り上げの関係は?

気候リスク管理において気候リスクの評価を行うことは最初のステップになります。 このページでは実際のアパレル分野のデータ(販売数量・売上高)と気象データ(気温)とを用いた気候の影響の分析の実例を紹介します。 実データを用いた分析により

  • 気候の影響が明瞭に売り上げに現れる商品・季節があること
  • 分析の結果と予測を用いて気候の影響を軽減・利用できる可能性があること

が示されました。以下に概要を紹介します。
この調査に関する詳しい報告については下記をご覧ください。

*本調査は気候リスク管理の推進を目的に、気候が業務に与える影響の分析の実例を作成するために実施しました。
    調査においては(一社)日本アパレル・ファッション産業協会にご協力いただきました。

1. はじめに ~気温が×℃を超えると○○が売れ始める?~

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コートなどの売り上げが気温により大きく影響を受けるということは当たり前と感じられることでしょう。実際アパレル分野では「最高気温が×℃を超えると○○が売れ出す」といった業界の常識があるそうです。 しかし、これらの“業界の常識”は経験から語られることが多く、データを用いての分析はあまり行われていないというのが実情のようです。

気象データと実際の売り上げデータを用いて“定量的に”分析することにより、これらの常識が本当に信頼できるものかを確認することできます。また、これまで気づかなかったあらたな関係を見つけることができるかもしれません。

2. 分析 ~気温とコートの売り上げを比べてみる~

気温とコート売上高の関係

図1 気温とコートの売上高の散布図

横軸は東京の一週間の平均気温 縦軸は女性用コートの売上高
データの期間は2009~2011年の8月中旬から12月上旬

図1は横軸に東京の月曜から日曜日を単位とする一週間の平均気温を、縦軸に同じ一週間における女性用コートの売上高をとったグラフです(散布図といいます)。データの期間は2009~2011年の8月中旬から12月上旬です。

ある温度を下回るとコートは売れ始め、その後は気温が下がるのに比例してほぼ直線的に売り上げが増えていくという大変明瞭な関係を見ることができます。 このことから気温の値が分かれば、おおよその売り上げも予想できるといえます。

気温とコート販売数の関係

図2 気温とコート販売数の時系列図

横軸は月曜から日曜日を単位とする一週間
縦軸は上が東京の日最低気温の週平均 下が女性用コートの販売数
データの期間は2009~2011年の9月から12月

図2のグラフは2009~2011年の9~12月の 東京における日ごとの最低気温を月~日曜日で週平均したもの(最低気温の週平均)と、同じ期間の女性用コートの販売数をプロットしたものです。 気温が下がるにつれコートの販売数が増えていく様子に加えて、年ごとの変動も見受けられます。

年ごとの販売数が違うことから単純には比較できませんが気温が15℃付近を下回ると販売数が伸びていく様子が見えます。 他の年に比べて気温の下がる時期が早かった2010年は販売数が伸びるタイミングが早くなっています。(図中の赤の破線で囲んだ部分)

販売数のピークの時期も気温と関連しているように見えます。(図中のピンクの破線で囲んだ部分)


気象だけですべてがわかるわけではないのでは・・・?

もちろん気温だけで売り上げがわかるわけではありません。 アパレル分野でいえばその時の流行や父の日、母の日などのイベントが売り上げに大きく影響します。 しかし、お手持ちの業務のデータが気候以外のどのような要素に影響を受けているかを理解しておけば、気候の影響の分析をさらに正確に行うことができます。

例えば今回紹介した事例では月~日曜日を単位とした一週間ごとにデータを見ています。これは日ごとにデータを見たのでは平日に比べ客足が多く売り上げが増加する土・日曜日の影響を小さくするためです。また、多くのアパレル企業で月~日曜日を基準に売り上げなどを集計していることも理由として挙げられます。

3. 応用 ~分析の結果を業務に活用する~

このような結果をどのように業務に活用すればよいでしょうか。 調査に協力いただいた日本アパレル・ファッション産業協会の会員企業からは以下のようなコメントをいただきました。

  • 気象との関係が深い製品については生産、販売計画を立てる上で一つの示唆になる。
  • 商品導入期における品揃え調査結果をデータベース化することで、商品の売れ始めからピーク週を見込む事ができる。
  • 気温予報を把握することで、店舗への最適な商品供給と店舗展開が可能となる。

例えば販売計画を立てる際には平年値などの過去の統計値を利用することが考えられます。 また、3番目のコメントのように予報で気温などがいつもの年に比べて偏りが大きいと予想された場合には、予報に応じた対応をとることも考えられます。 対応を行うにはある程度の時間が必要となりますが、2週間から1か月先の気温の定量的な予測を利用することで対応までにある程度の準備期間を確保することができます。

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