平成29年 No.14 週間火山概況 (3月31日~4月6日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 4月6日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、浅間山、御嶽山、霧島山(新燃岳) 、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、新潟焼山、焼岳、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(4月6日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 東京工業大学によると、2014年以降、湯釜湖水の化学組成は火山活動の活発化を示す状態であることが確認されています。また、全磁力観測1)によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示唆する変化は、2014年7月に停滞したものの、温度低下を示唆する変化には転じていません。
 なお、監視カメラによる観測では、引き続き湯釜北側噴気地帯や湯釜火口内の状況に特段の変化は認められません。火山性地震は少なく、地殻変動観測に特段の変化は認められません。
 小規模な噴火が発生する可能性があるため、湯釜火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。また、ところどころで火山ガスの噴出がみられ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂直下のごく浅い所を震源とする火山性地震は、多い状態で経過しています(図2)。山頂の南南西にある塩野山の傾斜計3)では、2016年12月頃から北または北西上がりのわずかな変化が観測されています。国土地理院のGNSS4)連続観測によると、浅間山を南北に挟む基線で2016年秋頃から小さな伸びがみられています。
 4月6日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量5)は1日あたり1,500トン(前回3月28日1,200トン)と多い状態でした。山頂火口では、2016年12月末頃から高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映6)が時々観測されています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年4月6日)
(矢印はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年4月6日) (矢印はごく小規模な噴火を示す)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね400m以下で経過しています。
 山頂直下の地震活動は、回数は少ないながらも継続しています。
 GNSS連続観測によると、2014年10月以降、山体付近の収縮によると考えられる縮みの傾向がみられています。
 2014年10月以降噴火の発生はなく、火山活動は緩やかな低下傾向が続いていますが、山頂火口の噴煙活動や地震活動は続いているため、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 明神礁付近では、3月24日及び25日に海上保安庁が実施した上空からの観測により、変色水が確認されました。4月3日及び4日に同庁が実施した上空からの観測によると、変色水は確認されませんでした。なお、海上保安庁が観測データを精査したところ、3月14日にもごく薄い変色水が確認されています。
 現在も火山活動の活発な状態が続いていると考えられ、今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は、やや少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、地殻変動は長期的に隆起及び停滞を繰り返しています。最近では、2017年1月頃から隆起速度がやや上がった状態が続いています。
 監視カメラでは特段の変化は認められません。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 傾斜計では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 噴煙は火口縁を越えるものは認められず、火口内で消散しました。
 GNSS連続観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2015年1月頃から停滞しています。
 新燃岳では、火口内及び西側斜面で弱い噴気や熱異常域7)が引き続き確認されていることから、今後の火山活動に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 南岳山頂火口では、4月4日10時02分に噴火が発生し、噴煙が火口縁上1,200mまで上がりました。
 4月4日に実施した現地調査では、桜島島内の鹿児島市桜島小池町付近(南岳山頂火口から北西側約3km)で、この噴火に伴って降ったと推定されるやや多量の火山灰を確認しました。
 昭和火口では、噴火は観測されていません。
 火山性地震は概ね少ない状態で経過しています。4日の噴火に伴う火山性微動が観測されました。
 4月3日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり200トン(前回3月7日300トン)と少ない状態でした。
 地殻変動観測では、姶良カルデラの地下深部の膨張が継続していることから、今後も噴火活動が継続すると考えられます。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流8)に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき9))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、噴火は観測されていません。
 新岳火口では、白色の噴煙は最高で火口縁上200mまで上がりました。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 3月26日に、東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり200トンでした。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 新岳火口付近のごく浅い地震の増加が時々みられることや、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低くなっているものの、引き続き噴火の可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、噴火が時々発生し、4月1日06時39分と08時14分の噴火で灰白色の噴煙が最高で火口縁上1,200mまで上がりました。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西4kmの集落で降灰は確認されませんでした。
 同火口では、期間を通して夜間に高感度の監視カメラで火映が観測されました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。振幅の小さな火山性微動が時々発生しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

蔵王山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]

 4月1日及び3日に火山性微動が1回ずつ発生しました(図3)。微動発生前後で地震活動の状況に特段の変化はみられていません。
 坊平の傾斜計では、3月26日頃から、わずかな南東上がりの変化が観測されています。
 2013年から2015年にかけて、火山性地震や火山性微動が増加するなど火山活動の高まりがみられました。その後も火山性微動が時々発生していますので、今後の火山活動の推移に注意してください。
 蔵王山 火山性微動の発生状況(2010年9月1日~2017年4月6日)  

図3 蔵王山 火山性微動の発生状況(2010年9月1日~2017年4月6日)



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火山体の南側で全磁力を観測した場合、全磁力値が減少すると火山体内部で温度上昇が、全磁力値が増加すると火山体内部で温度低下が生じていると推定されます。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
6) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
7) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置とは、物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
8) 火砕流とは、火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
9) 桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (3月31日~4月6日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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