1. はじめに

『日本の気候変動2025』の背景

 地球温暖化に伴う 気候変動1 地球温暖化に伴う気候の変化は英語で"climate change"とされ、直訳すると「気候変化」であるが、一般に「気候変動」と呼ばれる。詳細編用語集参照のこと。 は、気温の上昇や海面水位の上昇、大雨の頻度や強度の増加、干ばつの増加、大気中の二酸化炭素濃度増加による海洋酸性化など、世界の様々なところで進行していることが報告されている。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)2 人為起源による気候の変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された政府間組織。詳細はIPCCのウェブサイト(https://www.ipcc.ch/)参照のこと。 が2021年から2023年にかけて公表したIPCC第6次評価報告書では、「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない」と評価された。温暖化そのものは、IPCC第5次評価報告書でも「疑う余地がない」と評価されていたが、人間の影響についても「疑う余地がない」と評価されたのは今回が初めてである。また、IPCC第6次評価報告書では、大気中の温室効果ガス濃度の増加に伴い世界的な気温上昇が続いており、その影響で大雨・高温など極端な現象(以下「極端現象」と表記。)の発生頻度と強度が増加していること、今後より一層強化した対策がとられなければ影響は更に大きくなることも報告されている。

 気候変動は国境を越えて社会、経済、人々の生活に影響を及ぼす問題であり、国際社会そして国内が一丸となっての取り組みが不可欠である。世界的な気候変動対策を議論する場である国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21、2015年開催)においては、「工業化以前と比べた世界全体の平均気温の上昇を2°Cより十分低く保つとともに、1.5°Cまでに抑える努力を追求すること(以下「2°C目標」と表記。)」等を世界共通の長期目標とする「パリ協定」が採択された。これにより、全ての締約国が気候変動対策に取り組む公平かつ実効的な2020年以降の枠組みが構築された。

  IPCC1.5°C特別報告書3 正式名称は「1.5°Cの地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における、工業化以前の水準から1.5°Cの地球温暖化による影響及び関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関するIPCC 特別報告書」である。 (2018年10月公表)によると、 世界平均気温4 世界の平均気温の推定方法は目的等により複数存在し、本報告書で言及している平均気温についても、項目によって異なる推定方法を用いた値を指している。このため、以下のように表記を分けることで区別している。
①「世界平均気温」(主に4-1 気温-観測結果で使用)…陸地及び海氷上の表面付近の気温と海氷のない海域の海面水温による全球平均値。IPCC(2021)では、GMST(Global mean surface temperature)と表記され、古気候、過去、及び現在の観測による推定のほとんどで使われている。
②「世界平均地表気温」(主に4-2 気温-将来予測で使用)…陸域及び海域の表面付近の気温の平均値から推定した値。IPCC(2021)では、GSAT(Global surface air temperature)と表記され、一般に気候モデルによる解析に用いられる。
なお、①と②は、正負いずれかの方向に最大で10%の差異がある(確信度が高い)が、気候モデルや観測精度の問題、理論の不完全性から、②の推定には不確実性を伴うため、現時点では、両者の長期変化傾向は同一と評価されている(IPCC, 2021; Cross-Section Box TS.1)。
の上昇を2°Cではなく、1.5°Cに抑えることによって、多くの気候変動の影響を回避できることが示されている。しかしながら、IPCC第6次評価報告書によると、世界平均気温は2011年から2020年に既に1.1°Cまで上昇したとされている。また、近年、高温となる年が頻出する中、2023年、2024年の世界平均気温はそれまでの観測史上最高値を連続して上回った。世界気象機関(WMO)は、2024年の世界平均気温は工業化以前より1.55°C高かったと発表し、単年でのみではあるが 「初めて1.5°Cを超えた年」となった5 パリ協定の下での議論の前提となる科学的根拠を提供する「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価報告書では、気候変動を、通常は数十年以上の長期間にわたって続く気候状態の変化と定義しており、気候変動は長期的な気温の変化をもって評価するものとされている。WMOのサウロ事務局長も「単年で1.5°Cを超えたからといってパリ協定の長期気温目標を達成できなかったことにはならない」と強調している。 。こうした事実を受けて、グテーレス国連事務総長は「最悪の事態を回避する時間はまだ残されているが、指導者たちは今すぐに行動を起こさねばならない」と強く訴えるなど、気候変動の影響を回避し低減するための取り組みは世界的な急務となっている。

 日本は、パリ協定を締結(2016年11月)するとともに、国内では「地球温暖化対策の推進に関する法律」(いわゆる、地球温暖化対策推進法)に基づく地球温暖化対策計画を閣議決定(2016年5月策定。2021年10月、2025年2月改定。)し、温室効果ガスの削減目標を設定するなど、地球温暖化の進行を抑えるための取り組み(緩和策)を推進している。2020年10月には、菅内閣総理大臣(当時)が所信表明演説において、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。加えて、2021年4月、菅内閣総理大臣(当時)が米国主催気候サミットにおいて、2050年カーボンニュートラル目標と整合的で野心的な目標として、2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、更に50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明した。一方で、気候変動適応法に基づく気候変動適応計画を閣議決定(2018年11月策定。2021年10月改定、2023年5月一部変更。)し、既に顕在化、あるいは将来予測される気候変動による生命・人間社会への影響を軽減するための取り組み(適応策)も進めている。

 また、地方公共団体に対しては、地球温暖化対策推進法では温室効果ガス排出量削減等のための措置に関する計画の策定が、気候変動適応法では努力義務として地域気候変動適応計画の策定が求められている。

 これらの計画において、気候変動対策は科学的知見に基づいて実施することとされており、国の取り組みとして、科学的知見の継続的な集積や信頼性の高い情報の分かりやすい形での提供等が挙げられている。


『日本の気候変動2025』の目的と構成

 文部科学省及び気象庁は2020年12月に、気候変動適応法等に基づく国の責務として、気候変動に関する最新の自然科学的知見を総合的に取りまとめた『日本の気候変動2020 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —』(『日本の気候変動』2020年版。以下略して『日本の気候変動2020』と表記。)を作成した。『日本の気候変動2020』は、気候変動に関する政策や取り組み等を立案・実施する国、地方公共団体及び事業者等(以下「利用者」と表記。)が、気候変動緩和・適応策や影響評価の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、必要とされる自然科学的な知見に関する情報を提供したものである。実際、『日本の気候変動2020』は、気候変動適応法に基づき環境省がおおむね5年ごとに作成する『気候変動影響評価報告書』(本編コラム7を参照)のほか、農林水産省の「農林水産省気候変動適応計画」や国土交通省の「港湾における気候変動適応策の実装に向けた技術検討委員会」による「港湾における気候変動適応策の実装方針」等に活用されたり、各地方公共団体が作成した地域気候変動適応計画に参照されたりしている。

 今回、文部科学省及び気象庁は、次の『気候変動影響評価報告書』が作成されるタイミングに合わせ、『日本の気候変動』の2025年版となる『日本の気候変動2025 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —』(以下略して『日本の気候変動2025』と表記。)を作成した。『日本の気候変動2025』では、新たに極端現象の発生頻度に関する情報を提供する等、『日本の気候変動2020』以降の最新の知見及び成果を積極的に盛り込んだ。(『日本の気候変動2020』からの主な改善点及び評価が更新された点は、本章後半に記載しているので参照していただきたい。)また、主要な利用者として想定している地方公共団体の担当者からの意見も踏まえ、簡潔かつ分かりやすい記述になるよう、表現についても工夫を重ねた。さらに、気候変動緩和・適応策や影響評価の基盤情報のほか、2050年カーボンニュートラル目標を実現し、様々な主体が経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引していく取り組みや、顕在化する気候変動の影響をリスク・機会と認識し、企業が経営戦略に盛り込み公表していく取り組み(TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース)等、近年の進展している取り組みに参照されることも想定している。

 『日本の気候変動2025』では、想定される様々な読者及び場面に応じて利用しやすく、かつ、効果的に活用していただけるよう、「本編」及び「詳細編」の2種類の報告書と、広報資料として 「概要版」6 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/
ccj/2025/pdf/cc2025_gaiyo.pdf
及び 「都道府県別リーフレット」7 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/
gw_portal/region_climate_change.html
を提供することとした。「本編」は、利用者が各種施策の判断材料に利用できるよう、日本の気候変動に関する観測結果( 過去~現在8 これ以降、過去から現在までの観測事実や評価結果を「観測結果」と表記する場合がある。 )と将来予測( 未来9 将来予測と比較するために併せて実施された、過去の期間のシミュレーション結果を併記している場合がある。 )を簡潔に示した資料である。「詳細編」は、「本編」の各記述に関する確信度の根拠及び参考文献なども記載しており、利用者がより詳細な情報を知りたい場合に参照できる資料となっている。このため、研究者や個別の分野で対策を検討する専門家の利用も想定している。「概要版」は、勉強会や講演等でそのまま利用されること(あるいはその例となること)を想定し、「本編」の概要を簡略にプレゼンテーション形式でまとめた資料である。「都道府県別リーフレット」は、地域ごとの気候変動の観測結果及び将来予測並びにその地域特性も含めて見開きで概観いただけるリーフレットである。


本編(本報告書)について

 本報告書は、『日本の気候変動2025』における主要成果物であり、自然科学的知見に基づく内容の正確性を担保しつつも、その表現については、主な利用者として想定している国や地方公共団体の気候変動担当部署の職員が、気候変動緩和・適応策や影響評価の基盤情報(エビデンス)として利用しやすいように、専門的な表現はできる限り使わず、簡潔な表現を用いている。そのため、気候変動を仕事として扱う利用者のみならず、一般国民向けにも活用しうる内容となっている。詳細・厳密な根拠や解説等の情報は「詳細編」で扱っており、本報告書の各記載の中で、「詳細編」における参照すべき章番号も併記しているので、必要に応じて参照いただきたい。

 本報告書では、本章「はじめに」に続く第2章で気候変動の概観を、第3章で温室効果ガスの大気中濃度について記載し、第4章以降に、気温、降水等の要素ごとに一つの章を割り当てて解説をしている。また、観測結果を1節目(第4章であれば4-1)、将来予測を2節目(第4章であれば4-2)として示している。また、各章冒頭には、日本での観測結果と将来予測のポイントを箇条書きでまとめ、各章の内容を把握しやすいよう構成している。

 なお、「地球温暖化」及び「気候変動」という言葉は既に様々な機会で使われているが、本報告書では各記載内容・対象を明確にする観点から、次のように使用する。すなわち、「地球温暖化対策の推進に関する法律」における定めにならい、人為起源の温室効果ガスの排出等によって地球の平均気温が上昇することを「地球温暖化」と記載する。一方、自然変動や地球温暖化が原因となって、気温や降水量などの気候の諸要素にもたらされる様々な変化を「気候変動」と記載する。


本報告書で使用した観測データについて

 本報告書の気候変動の観測に関する記載は、気象庁の陸上観測施設、観測船及び人工衛星による観測データ、世界各国で観測され世界気象機関(WMO)の枠組みで交換・共有された観測データ、 再解析データ10 様々な観測データを過去にさかのぼって解析し直して作成した、気圧、気温、風など様々な気象要素に関する、長期にわたり品質が均質なデータセットをいう。過去・現在気候の定量的な比較や異常気象要因の分析等、様々な用途に活用されている。例えば、気象庁が1947年以降の気象要素について作成した「気象庁第3次長期再解析 (JRA-3Q)」がある。 並びに気象庁が船舶等の観測データを解析した結果に基づいている。


本報告書で使用した将来予測について

 本報告書の気候変動の予測に関しては、IPCC第6次評価報告書で用いられた共通社会経済経路(SSP)シナリオにおける、SSP1-2.6シナリオ(持続可能:以下「2°C上昇シナリオ(SSP1-2.6)」と表記。)及びSSP5-8.5シナリオ(化石燃料依存:以下「4°C上昇シナリオ(SSP5-8.5)」と表記。)に基づく予測結果を可能な限り記述している。一方で、本報告書作成時点では、参照可能な研究結果の多くがIPCC第5次評価報告書で用いられた代表的濃度経路(RCP)シナリオを用いていることから、RCPシナリオにおけるRCP2.6シナリオ(以下「2°C上昇シナリオ(RCP2.6)」と表記。)及びRCP8.5シナリオ(以下「4°C上昇シナリオ(RCP8.5)」と表記。)に基づく予測結果が中心となっていることはご理解いただきたい。パリ協定の「2°C目標」は、その達成に向けた努力が「気候変動のリスク及び影響を著しく減少させる」との認識に基づいている。「2°C上昇シナリオ」に基づく予測結果は、この「2°C目標」が達成された状況下でありうる気候の状態を示すものである。一方、「4°C上昇シナリオ」に基づく予測は、IPCC第5次及び第6次評価報告書で取り上げられている中で将来の気温上昇量が最大となるものであり、予測される気候の変化や影響も最も大きい。両者の結果を比較することで、
パリ協定の目標が達成された状態と、目標が達成されず地球温暖化が著しく進行した状態
との違いが分かると考えられる。

 本報告書に記載している確信度のうち斜体で表記しているものは、IPCCによる評価である。下線を付しているものは本報告書独自の評価で、CMIP5及び CMIP611 世界気候研究計画(WCRP)による結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP: Coupled Model Intercomparison Project)。第5期(CMIP5)及び第6期(CMIP6)の成果は、それぞれIPCC第5次及び第6次評価報告書で使用された。詳細については、詳細編付録A.1.4項を参照。 の多数のモデルによる予測との比較等に基づき評価したものである(詳細編付録B及びC参照)。斜体+下線で表記しているものは、IPCCによる評価と本報告書独自の評価の確信度が一致しており、まとめて記載していることを示す。


長期変化12 本報告書では、変化はある一方向へ変わることを指し、地球温暖化による各現象の長期間の変化傾向等を示す際に使用する。一方、変動は両方向への上下動等を含むものを指し、十年間の変動や年々変動等を示す際に使用する。 傾向の評価について

 気候は、数十年以上の長期間にわたる地球温暖化だけでなく、数年から十年、又は年ごとに起こる周期的あるいはランダムな 自然の変動12 本報告書では、変化はある一方向へ変わることを指し、地球温暖化による各現象の長期間の変化傾向等を示す際に使用する。一方、変動は両方向への上下動等を含むものを指し、十年間の変動や年々変動等を示す際に使用する。 なども含め、複数の影響が重なり合って生じる自然現象である。そのため、各地で観測される気温や降水等のデータは、その複数の要因から生じた結果であることを考慮する必要がある。例えば、ある期間に観測された気温が上昇傾向にあるように見えても、それが数十年以上の長期間にわたる気候変動を示しているとは一概にはいえない。数年規模のエルニーニョ現象や、十年規模の周期で変動を繰り返す太陽活動の影響によるものかもしれないし、又は、それらが複数重なった結果かもしれない。同様に、ある一地点で観測された気温が上昇傾向に見えても、それが地球規模での気候変動を表すという確証はない。検出された気温上昇には、気候変動による変化傾向よりも、当該観測地点の所在する地域独特の気象状況のほうが強く表れている可能性もある。

 このような気候の性質を踏まえ、地球温暖化に伴う長期的かつ広域における気候の変化傾向を正しくとらえるためには、世界全域のあまねく多くの観測地点での長期間の観測データが必要である。しかし、実際の観測データの数や期間は限られており、これらだけを基に長期的変化傾向について確証や断定を行うことは原理的に不可能である。このような場合には、推察される変化傾向がどの程度「確からしい」のかについて、統計学的に「評価」を行うのが一般的である。詳細は「詳細編」や統計学に関する専門書を参照していただきたいが、統計的な解析を行うことにより、有限なデータから長期的な変化傾向の「確からしさ」をパーセンテージで表すことができる。このパーセンテージの値が100に近いほど、その傾向は「確からしい」ということになる。

 本報告書では、統計的な解析から算出された「確からしさ」を99%、95%及び90%を区切りとして分類し、表1.1のように表現している。これらの表現から受ける印象は人によって多少の違いもあると思われるが、本報告書を読み進める際の参考にしていただきたい。

表1.1 確からしさと本報告書の表現の対応

確からしさ本報告書の表現
評価
99%以上
95%以上99%未満
90%以上95%未満
90%未満

 上表の「確からしさ」とは統計学での「有意性」のことを指す。有意性を評価する指標となる「信頼水準」はパーセンテージで表され、一般的には信頼水準が95%以上の場合に、「統計的に有意」、すなわち「確からしい」とされる。ただし、本報告書ではたとえ95%未満であっても、人類の生命・生活を脅かすリスクのある気候変動の長期変化傾向についてメッセージを発する意義は大きいと考え、90%以上であれば「増加しているとみられる」等の表現で記述することとした。


『日本の気候変動2020』からの主な改善点

 本報告書において、『日本の気候変動2020』から改善した主な点は次のとおり。

  • 『日本の気候変動2020』以後に公開されたIPCC第6次評価報告書をはじめ、新たに公表された論文等の文献から収集した最新情報を掲載。
  • 『日本の気候変動2020』ではIPCC第5次評価報告書で用いられた代表的濃度経路(RCP)シナリオに基づいた評価を行っていたが、『日本の気候変動2025』ではIPCC第6次評価報告書で用いられた共通社会経済経路(SSP)シナリオに基づいた評価を可能な限り行った。

  • 日本域における大気の予測では、使用したモデルについて、水平解像度が5 kmから2 kmに向上したほか、都市化による影響を含めることができる都市モデルが新たに導入されるなど、様々な改良が加えられた(いずれも、 『気候予測データセット2022』13 「気候変動に関する懇談会」(文部科学省・気象庁)の議論を踏まえ、地方公共団体や民間企業等において進められている気候変動対策を積極的に支援するために、これまで我が国で創出された気候変動への適応に資する予測データをまとめ、公開したデータセット。詳細編コラム4参照のこと。 に収録。詳しくは詳細編コラム4参照)。これにより、地域的な再現性等も向上したと考えられる。
  • 日本域における海洋の予測では、使用した予測データを文部科学省気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)の海洋データセットから、海洋炭素循環及び海洋生態系の予測情報が含まれている日本域海洋予測データ(『気候予測データセット2022』に収録)に変更した。これにより、海洋酸性化等において、モデルを用いた日本近海の将来予測の評価が海洋の水温や流れなどの物理環境と整合的な形で可能となった。
  • 100年当たり一回等の頻度で生じるような発生頻度が低い極端現象が、地球温暖化の進行に伴いどのように変化するかについて、確率的表現(コラム4参照)を用いて評価した。

『日本の気候変動2020』から評価等が更新された点

 本報告書において、『日本の気候変動2020』における解析結果や評価から更新があった点は表1.2のとおり。これらの更新は主に、近年の解析・研究結果の蓄積や、IPCC評価報告書における評価の更新によるものである。

表1.2 『日本の気候変動2020』から評価等が更新された点

更新点
4. 気温 観測結果
将来予測
5. 降水 観測結果
将来予測
6. 雪 将来予測
7. 熱帯低気圧 観測結果
将来予測
9. 海面水位 将来予測
10. 海氷 将来予測
11. 高潮・高波 観測結果
将来予測
12. 海洋酸性化 観測結果
将来予測
14. 海洋循環 観測結果

謝辞

 本報告書は、文部科学省及び気象庁が2018年より運営している「気候変動に関する懇談会」及び同懇談会下の「評価検討部会」における議論を踏まえ、同懇談会・部会の委員をはじめとする有識者の協力を得て作成した。


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