平成26年 No.10 週間火山概況 (平成26年2月28日〜3月6日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年2月28日〜3月6日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
3月1日 00時06分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 3月6日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島※、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(3月6日)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の高さは、火口縁上100〜200mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊などによると西之島では活発な噴火活動が続いています。
 2月26日(期間外)に読売新聞社の協力により産業技術総合研究所が、28日には海上保安庁が上空からの観測を実施しました。これらの機関の報告によると、中央部火口及び北側火口の2ヶ所から噴煙が上がっていました。また、中央部火口からは、青白色の噴煙を連続的に噴出し、北側火口からは15〜30秒間隔で間欠的に噴火が発生し、高さ400〜1,500mまで灰白色の噴煙を噴出していました。 噴煙の下ではわずかに刺激臭が感じられました。熱観測の結果、高温の溶岩流が南東、南、南西側方向へ拡張していることを確認しました。東側湾口からは明るい褐色の変色水域が北北東方向へ幅約200m、長さ約3,000mの範囲に分布していました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

図2 阿蘇山 火山活動経過図(2013年9月1日〜2014年2月6日)

図2 西之島 中央部火口及び北側火口からの噴煙の状況(2月28日14時07分撮影)


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年11月頃から沈降していましたが、2014年1月頃から停滞気味となっています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 阿蘇山では、やや活発な火山活動が続いています。
 中岳第一火口では、今期間、噴火は発生しませんでした。
 3月3日及び4日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり700〜1,500トン(前回2月21日1,500トン)と多い状態が継続していました。
 2月28日に実施した中岳第一火口の現地調査では、前回(2月24日)確認された火口底中央部付近の噴気孔温度は約180℃2)(前回約160℃)でした。
 阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石3)に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震及び火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計4)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS5)観測によると、新燃岳の北西地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
 新燃岳では火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性がありますので、新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき6))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が10回発生し、大きな噴石3)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。2月28日23時49分の爆発的噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上3,000mまで上がりました。同火口では、夜間に高感度カメラ7)で明瞭に見える火映を3月2日から6日にかけて観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 4日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,900トン(前回1月17日、800トン)とやや多い状況でした。
 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計4)及び伸縮計では、2月27日頃から山体の膨張と考えられるわずかな変化が継続しています。
 GNSS5)連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、2013年6月頃から停滞気味です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では、やや活発な噴火活動が続きました。
 御岳(おたけ)火口では、3月1日01時43分に爆発的噴火が発生しました。また、ごく小規模噴火が時々発生しました。
 火山性地震は少ない状態で経過し、1日から5日にかけて火山性微動を観測しました。
 同火口では、夜間には高感度カメラで火映を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。



1)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5〜1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s以上のものを孤立型微動としています。
2)赤外放射温度計で観測しています。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定できる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
5)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
6)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
7)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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