平成24年 No.30 週間火山概況 (平成24年7月20日〜7月26日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(7月20日〜7月26日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
7月26日14時45分 | 桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 7月26日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺警報及び火山現象に関する海上警報 | 火口周辺危険及び周辺海域警戒 | 硫黄島 |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報発表中の火山(7月26日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は、24日に火口縁上100〜200mを観測しましたが、その他の期間は視界不良のため、不明でした。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓では時々やや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
2012年4月下旬から5月初めにかけて火山活動が活発化し、国土地理院の地殻変動観測でも、急速な隆起の後に沈降を観測しましたが、その後沈降傾向は鈍化し、今期間はほぼ停滞しています。火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動は、22日と26日にそれぞれ1回、23日に2回観測され、継続時間は2分から11分程度でした。火山性微動が観測された時間帯に、火山性地震の増加や空振、表面現象は認められませんでした。硫黄島で火山性微動が観測されたのは、2012年5月3日以来です。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、2012年1月以降ほぼ停滞していましたが、一部の基線では5月頃からわずかに縮みの傾向がみられます。
しかしながら新燃岳の北西地下深くのマグマだまりには相当量のマグマが蓄積されています。また、新燃岳直下の火山性地震の活動や火山ガスの放出も少ないながらも続いており、火口には高温の溶岩が溜まっていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。
新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
南岳山頂火口では、24日19時15分に爆発的噴火が発生し、多量の噴煙が上がり、大きな噴石2)が4合目(南岳山頂火口より1,300〜1,700m)まで達しました。この噴火に先立ち、山体浅部が膨張源とみられるわずかな地殻変動が観測され、噴火後には急激な収縮が観測されました。南岳山頂火口の爆発的噴火は2011年2月7日以来です。その後、南岳山頂火口では爆発的噴火は発生していません。
昭和火口の爆発的噴火の発生回数は、南岳山頂火口の爆発的噴火以降、やや増加しています(20日〜24日19時:8回、24日19時〜26日:17回)。26日14時21分の爆発的噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上3,200mまで上がりました。期間中、大きな噴石は最高で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
昭和火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。
24日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり2,300トン(前回7月18日、3,100トン)と前回と同様に多い状態でした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
また、降雨時には土石流に注意してください。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いています。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳火口では今期間噴火は観測されませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。
同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動が24日01時01分から25日15時05分まで継続しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
中岳第一火口では、火山活動がわずかながら高まっています。
23日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまり量が9割に増加し、湯だまり温度も61℃にやや低下しましたが、これは大雨の影響と考えられます。また、南側火口壁の温度5)は昨年11月頃より上昇傾向が見られており、23日の現地調査では前回(10日243℃)よりもやや低下したものの、213℃と引き続き高い状態でした。
孤立型微動および火山性地震は少ない状態ですが、2月頃からわずかながら増加傾向を示していますので、今後の火山活動の推移には引き続き注意が必要です。
火口内では土砂や火山灰の噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
5)赤外熱映像装置により観測しています。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度や温度分布を測定する計器です。熱源から離れた場所から測定できる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
注)データについては精査により、後日修正することがあります。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。