平成23年 No.22　週間火山概況　(平成23年5月27日〜 平成23年6月2日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

表１　火山現象に関する警報及び予報の発表履歴（5月27日〜6月2日）

表２　6月2日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

図１　噴火警報発表中の火山（6月2日現在）

　噴煙高度は、火口縁上100〜300ｍで経過した。
　火山性地震は、やや少ない状態で経過した。
　31日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり900トン（前回５月13日、600トン）と、やや多い状態であった。
　三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
　山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺（雄山環状線内側）では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。

　地震活動は、2011年２月末頃から高い状態が続いている。
　国土地理院の観測によると、2006年８月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年１月末頃から隆起速度が増加している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
　火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部（井戸ヶ浜等）及び南東沖（翁浜沖）では噴火に対する警戒が必要である。

　今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。

　中岳第一火口では、５月15日以降、ごく小規模な噴火が発生している。噴煙高度は火口縁上100〜400ｍで、特段の変化はない。また、同火口では31日に夜間に高感度カメラ^１）で確認できる程度のごく弱い火炎現象^２）を観測している。
　火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった
　気象庁及び国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、火山活動に伴う変化はみられない。
　中岳第一火口から概ね１㎞の範囲では、大きな噴石^３）に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^３）に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

　新燃岳では、４月19日以降噴火の発生はない。
　火山性地震は、増減を繰り返しながらやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。
　31日に海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て行った上空からの調査では、火口内に蓄積された溶岩に大きな変化はなかった。白色噴煙は、主に火口縁辺の南東側から火口縁上100ｍ程度上がり、南東に流れていた。
　傾斜計^４）では、火山活動に伴う大きな変化は認められなかった。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の西側を中心に２月１日以降わずかな伸びの傾向がみられている。
　新燃岳火口から概ね３㎞の範囲では、大きな噴石^３）と火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^３）（火山れき^５））に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径４cm程度の小さな噴石^３） （火山れき^５））が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。

　昭和火口では、爆発的噴火が22回発生し、大きな噴石^３）が４合目（昭和火口より800〜1,300ｍ）まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ^６）で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
　南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
　火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
　30日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は１日あたり1,100トン（前回５月９日、900トン）とやや多い状態であった。
　31日に海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て行った上空からの調査では、昭和火口の火口底に赤熱した溶岩を確認した（図２）。今回確認された溶岩は少量であり、 現在まで、火山灰の噴出物量や地殻変動に特段の変化はないことから、大量のマグマが桜島直下に移動した可能性は低く、ただちに火口外に溶岩を流出することはないものと考 えられる。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ（鹿児島湾奥部）深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
　昭和火口及び南岳山頂火口から概ね２kmの範囲では、大きな噴石^３）及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^３）（火山れき^５））に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

　火山性地震は、少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
　火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね１km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^３）に注意が必要である。

　御岳(おたけ)火口では、今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。
　火山性地震は少ない状態で経過した。
　今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね１kmの範囲では大きな噴石^３）に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^３）に注意が必要である。

　27日00時31分頃に火山性微動が発生し、その後同日08時頃まで、湯釜の南付近を震源とする火山性地震が増加したが、その後、微動は観測されず、地震活動は収まっている。
　27日に実施した現地調査では、霧雨のため湯釜火口内を確認することはできなかった。また、28日に東京工業大学が実施した現地調査では、湯釜及びその周辺に異常はみられなかった。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、この微動に伴う変化は認められなかった。
　今期間、遠望カメラにより湯釜北側噴気地帯の噴気孔からごく弱い噴気が時々観測されるなど、山頂火口周辺では引き続き熱活動がみられている。
　山頂火口から概ね500ｍの範囲では、火山灰の噴出等に警戒が必要である。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺の窪地や谷などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがあるので、注意が必要である。

　３月15日（期間外）の静岡県東部（富士山の南部付近）を震源とする最大震度６強の地震の後、余震活動は低下しながら継続しており、今期間、最大震度１を観測する余震が１回発生している。火山性微動や低周波地震は観測されなかった。 また、その他の観測データで浅部の異常を示すものはなく、噴火の兆候は認められない。