平成23年 No.6 週間火山概況 (平成23年2月4日〜 平成23年2月10日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(2月4日〜2月10日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
2月4日10時10分、15時05分 | 霧島山 (新燃岳) |
降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
2月5日11時20分、15時00分 | 霧島山 (新燃岳) |
降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
2月6日03時45分、09時10分、18時40分 | 霧島山 (新燃岳) |
降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 2月10日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(2月10日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜400mで経過した。
火山性地震は、少ない状態で経過した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
2月8日に海上保安庁が実施した観測によると、滑走路東端の北側に噴気が新たに視認された。
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、2010年8月頃から地震活動は比較的活発である。
国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、現在も継続している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
1月26日から継続した噴火は2月7日16時30分に一旦停止したものの、その後もごく小規模な噴火を繰り返しており、活発な噴火活動が続いている。期間中爆発的噴火は発生しなかった。
2月4日から9日にかけて、鹿児島県、海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊及び九州地方整備局の協力を得て行った上空からの観測では、火口内に蓄積した溶岩は直径600m程度で大きな変化はなかった。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、1月26日の噴火以降地盤の縮みが観測されたが、2月1日以降停滞している。
新燃岳火口から概ね4kmまでの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。新燃岳火口から概ね3kmまでの範囲では、火砕流にも警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。これまでの噴火では、直径4㎝から 6㎝の小さな噴石は新燃岳火口から7km付近にまで達している。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では爆発的噴火が21回発生し、大きな噴石が4合目(昭和火口から800〜1300m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
南岳山頂火口では、爆発的噴火が2回発生し、噴煙が火口縁上2,000mまで上がり、大きな噴石が8合目(南岳山頂火口から500〜700m)まで達した(南岳山頂火口の爆発的噴火は2009年10月3日以来)。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられていたが、2010年7月頃から鈍化している。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、噴火が時々発生した。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
2月9日未明から夕方にかけて、島西部を震源とする地震が一時的に増加した。10日00時32分には島西部を震源とするマグニチュード2.3の地震が発生し、伊豆大島町元町で震度1を観測した。この地震活動に伴って、体積歪計4)や 傾斜計5)に特段の変化は認められなかった。その他の観測データにも特段の変化はなかった。
GPS及び体積歪計による観測では、2009年秋頃から2010年5月にかけて収縮傾向がみられていたが、5月下旬から伸びの傾向がみられた。9月頃から体積歪計の伸びの傾向が鈍化し、2011年1月に入り、伸びはほぼ停滞している。
国土地理院のGPSでは、2010年5月頃から伸びの傾向がみられていたが、2010年秋頃から一部の基線で伸びの傾向に鈍化がみられ、2011年に入りほとんどの基線で伸びは停滞している。
三原山の噴気の状態および熱活動には特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがある。
5)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。