平成20年 No.35 火山の概況 (平成20年8月22日 〜 平成20年8月28日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(8月22日〜28日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
22日17時15分 霧島山(新燃岳) 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
28日15時00分 桜島 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 8月28日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード* 当該火山
火口周辺警報 レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、霧島山(新燃岳)、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。


図1  噴火警報発表中の火山

図1 8月28日現在噴火警報発表中の火山





【各火山の活動状況及び予報警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、山頂火口の噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 火山性地震は24日に200回と、一時的に多い状態であったが、その後は減少している。また、火山性微動は多い状態が続いている。なお、地殻変動には特段の変化はみられなかった。
 浅間山では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。また、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、それより小さく風の影響を受ける噴石は、例えば「風の影響を受ける小さな噴石」という表現を用いる。


図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年8月27日)

三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震はやや多い状態が続いている。山頂火口からの噴煙の状況は雲のため確認できなかった。
 今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では、引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)] ←22日に噴火警戒レベル1(平常)から引上げ)

 19日(期間外)から火山性地震の多い状態が続いていた新燃岳では、22日16時34分に山頂火口で噴火が発生した(新燃岳での噴火は1991年12月2日以来)。また、噴火に伴い振幅の大きな火山性微動が観測されている。
 噴火後に行った現地調査によると、新燃岳の北東方向にあたる小林市や高原町などで降灰が確認された。
 24日、九州地方整備局と宮崎県防災救急航空隊の協力を得て気象庁及び京都大学が行った上空からの観測では、山頂火口縁西側の外側に、長さ400m程度の新しい割れ目と、火口内の南側で複数の新しい火孔が存在し、そこから白色の噴煙が上がっているのを確認した。また、火口縁の西側200〜300mの範囲では大きな噴石1)が確認された。
 23日以降、火山性地震の発生回数は次第に減少し、火山性微動も少ない状態で、火口からは白色噴煙が勢いよく噴出し、火口縁上700mで推移している。また、GPS観測による地殻変動には、噴火の前後で特段の変化はみられていない。
 新燃岳では、今後も火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があることから、22日17時15分に火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを1(平常)から、レベル2(火口周辺規制)に引き上げた。火口から1km程度の範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるので、これらの地域では弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)に注意が必要である。


図3 霧島山(新燃岳) 山頂火口内の状況(山頂火口北東側から撮影)
   左:2008年8月24日(九州地方整備局の協力による)  右:2007年9月12日
   (赤い矢印は同じ所を示す)


図4 霧島山(新燃岳) 噴石の飛散状況(山頂火口西側から撮影、九州地方整備局の協力による)
   山頂火口縁西側の外側に新しくできた割れ目(図中矢印)及びその周辺。黄色枠は、大きな噴石が確認された範囲を示す。
   赤丸の枠で示した部分を拡大すると、所々に大きな噴石が確認される。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←28日に噴火警戒レベル3(入山規制)から引下げ)

 昭和火口では、7月28日に噴煙高度が3,000mを超える噴火が2回発生し、活発な傾向にあったが、その後は8月10日に1回発生する程度であった。火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いており、山体の膨張を示す地殻変動も観測されていない。これらのことから、昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲に影響を及ぼす噴火の可能性は低くなったと考えられるため、28日に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げた。
 桜島では、今後、南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に噴石を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの火口周辺では噴火に伴う大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。桜島の昭和火口の噴火活動は、2006年6月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向がみられている。

2)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上400mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では24日から25日にかけて4回の小規模な噴火が発生した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口から半径約1kmの範囲に大きな噴石1)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、噴火に対する警戒が必要である。



 上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。




【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード 海底火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 周辺海域警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常 平常



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