2008年 No.14 火山の概況 (平成20年3月28日 〜 平成20年4月3日)


 平成20年3月31日より、三宅島と御嶽山の噴火警戒レベルの導入を開始した。
 いずれの火山についても予報警報事項に変更はない。現在の各火山の噴火警報及び噴火予報の発表状況は以下のとおりである。
 平成20年3月31日より、火山ガス予報の発表を開始した。火山ガス予報は、居住地域に長期間影響するような多量の火山ガスの放出がある場合に、火山ガスの濃度が高まる可能性のある地域を発表するもので、三宅島について毎日07時頃と17時頃に発表している。
 なお、同日より降灰予報業務も開始しており、一定規模以上(噴煙の高さが概ね3千メートル以上、あるいは噴火警戒レベル3相当以上の噴火など)の噴火が発生した場合に、噴火発生から概ね6時間後までに火山灰が降ると予想される地域を発表することとしている。

図1  噴火警報の火山
図1  火口周辺警報及び噴火警報発表中の火山


○火口周辺警報

 ・噴火警戒レベル2(火口周辺規制) :三宅島、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
 ・火口周辺危険           :硫黄島

○噴火警報(周辺海域)

 ・周辺海域警戒           :福徳岡ノ場
 

○噴火予報

 ・噴火警戒レベル1(平常)     :樽前山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢、新燃岳)、口永良部島
 ・平常               :上記以外の火山


※噴火警戒レベルには、レベル毎に防災機関等の行動がキーワードとして示されており、導入にあたっては、噴火警戒レベルの活用が地域防災計画等に定められることが条件となる。平成20年3月31日より、三宅島と御嶽山の噴火警戒レベルを導入したことから、レベル導入の火山は従来の16火山から18火山となる。




【各火山の活動状況及び予報警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 今期間、火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では火口周辺に大きな噴石1)を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。雨による泥流にも注意が必要である。
 


1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、それより小さく風の影響を受ける噴石は、例えば「風の影響を受ける小さな噴石」という表現を用いる。なお、「火山れき」の用語がその地域の住民に定着していると考えられる火山については、「風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)」という表現を用いる。

硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、島全体が大きく隆起する地殻変動は鈍化したものの現在も継続している。
 硫黄島では火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火がみられていた領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に、火山活動によるとみられる変色水が確認されている。
 福徳岡ノ場では小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 孤立型微動の回数が3月31日から一日あたり600回程度と増加している。
 孤立型微動は、2007年8月頃から一日あたり概ね200回を超える状態で経過し、2008年1月末には一時的に300回以上に増加した。その後再び200回前後で経過していた。
 中岳第一火口の湯だまりの湯量や表面温度に変化はなく、土砂噴出も観測されていない。また地震などのその他の観測データにも変化は認められないことから、阿蘇山では火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。ただし、火口内では噴気や火山ガスの噴出が見られることから、火口内等では火山灰噴出等に警戒が必要である。また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要である。
 阿蘇山は噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)が継続している。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 昭和火口では4月3日10時55分にごく小規模な噴火が発生し、噴煙は火口上高さ800mまで上がり、南東に流れた。監視カメラによると、火砕流、大きな噴石1)の飛散は確認されていない。
 今期間、南岳山頂火口では噴火は観測されなかった。
 火山性地震は少ない状態が続いており、火山性微動は観測されなかった。
 4月1日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり200〜400トン(前回3月25日、300〜500トン)と、2月3日の昭和火口の噴火以前の状態で経過している。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。
 桜島では、南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に大きな噴石1)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの火口周辺では噴火に伴う大きな噴石1)の飛散に警戒が必要である。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)1)に注意が必要である。雨による泥流や土石流に注意が必要である。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 硫黄岳火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では今後も御岳(おたけ)火口から半径約1kmの範囲に大きな噴石1)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では噴火に対する警戒が必要である。



 上記以外の火山については、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。

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