2005年 No.44 火山の概況 (平成17年10月28日 〜 平成17年11月3日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 今期間の活動は低調であったが、他の期間では噴気活動が時々活発になっており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は活動に消長はみられるものの、やや多い状態が続いている。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が10月31日〜11月2日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、それぞれ1日あたり27〜46回、2〜6回であった。
1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
29日02時〜05時に火口直下を震源とするやや低周波の地震が増加し、03時06分と04時33分に空振を伴った振幅のやや大きな低周波地震が発生した。03時06分の地震では三宅村神着で震度1を観測した。これらの地震活動が発生した時の噴煙の状況は雲による視界不良のため確認できなかったが、その他の観測データに大きな変化はみられなかった。その他の期間の火山性地震は1日あたり0〜7回と少ない状態であった。火山性微動は観測されなかった。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
11月1日に行った現地観測では、火口内の湯だまり2)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は70℃(赤外放射温度計3)による)と依然として高い状態が続いている(前期間68℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
火山性連続微動は振幅のやや大きい状態が続いているが、今期間は振幅に大きな変化はなかった。
孤立型微動は発生状況に大きな変化はなく、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。
2) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
3) 赤外放射温度計は物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
今期間の活動は低調であったが、他の期間では噴気活動が時々活発になっており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等4)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等4)はなし)。ごく小規模な噴火で観測された噴煙の最高は10月31日及び11月1日の火口縁上300mであった。11月1日に鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰が観測され、降灰量5)は1g/㎡であった(前期間は21日及び26日にいずれも0.5g/㎡未満の微量を観測)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
4) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
5) 前日09時〜当日09時に降った1㎡あたりの総降灰量を観測。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口からほぼ連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200〜400mで推移した。火山性地震及び火山性微動の発生状況には特に変化はなかった。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間33回、前期間38回)。火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
10月31日及び11月2〜3日に噴火が観測された。爆発的噴火はなかった。噴煙の最高は2日に観測された火口縁上1,500mであった。
また、火山性微動は、継続時間の長いものが10月28日、11月2日及び3日に観測され、11月3日には継続時間の短いものも1日あたり35回と多発した。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第194号 | 28日16:00 | 21〜28日15時までの活動状況。24〜25日に行った調査観測結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第546〜552号 (1日1回発表) |
28日〜3日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第50号 | 28日11:00 | やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度やや高い、連続微動の振幅やや大きい状態継続)。レベルは2。 |