2005年 No.43 火山の概況 (平成17年10月21日 〜 平成17年10月27日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は活動に消長はみられるものの、やや多い状態が続いている。
- ● 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 今期間は噴火が観測されなかったが、その他の期間では噴火は時々発生しており、火山活動は活発な状態が続いている。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。
24〜25日に山頂部付近で行った調査観測では、火口内は濃い噴煙のため目視による確認ができなかったが、赤外熱映像装置1)により火口底に引き続き高温部が確認された。新たな場所での熱源の発生は確認されなかった。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が24〜26日にかけて観測されており、火口内は依然として高温状態が続いている。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、それぞれ1日あたり26〜48回、0〜3回であった。
1)赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
25日に上空から行った観測3)では、火口内の最高温度は約190℃(赤外熱映像装置1)による)と、依然として高温状態が続いていた。二酸化硫黄の放出量は1日あたり3,300〜4,300トン(前回10月14日2,800〜4,300トン)で、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
26日03時32分に空振を伴った振幅のやや大きな低周波地震が発生した。地震発生時の噴煙の状況には特に変化はみられず、その他の観測データにも大きな変化はみられなかった。期間中、火山性地震の回数は1日あたり0〜6回と少ない状態であった。火山性微動は27日に1回観測された。
3) 東京消防庁の協力による。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
27日に行った現地観測では、火口内の湯だまり4)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は68℃(赤外放射温度計1)による)と依然としてやや高い状態が続いている(前期間68℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
火山性連続微動は振幅のやや大きい状態が続いているが、今期間は振幅に大きな変化はなかった。
孤立型微動は発生状況に大きな変化はなく(今期間1日あたり54〜91回、前期間は66〜100回で推移)、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
4) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口の噴気活動はやや活発で、21日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等5)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等5)はなし)。噴煙の最高は27日のごく小規模な噴火で観測された火口縁上600m(灰白色)であった。21日及び26日に鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰が観測され、降灰量6)はいずれも0.5g/㎡未満の微量であった(前期間は15及び19〜20日にいずれも微量を観測)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
6) 前日09時〜当日09時に降った1㎡あたりの総降灰量を観測。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から断続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
火山性地震及び火山性微動の活動は低調であった(前期間は15〜16日に火山性地震及び微動がやや増加)。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間38回、前期間45回)。火山性微動は少ない状態が続いている。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
期間中、噴火は観測されなかった(前期間もなし)。火山性地震及び火山性微動の活動も低調であった。噴火は今期間観測されなかったが、他の期間では時々発生しており、火山活動は活発な状態が続いている。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第193号 | 21日16:00 | 14〜21日15時までの活動状況。20日実施の上空から観測結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第539〜545号 (1日1回発表) |
21日〜27日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第49号 | 21日11:00 | やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度やや高い、連続微動の振幅やや大きい状態継続)。レベルは2。 |