2005年 No.42 火山の概況 (平成17年10月14日 〜 平成17年10月20日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口の高温状態が続いている。B噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態、火山性地震、火山性微動及び火山ガス放出量のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 15〜16日に火山性地震及び微動がやや増加した。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は活動に消長はみられるものの、やや多い状態が続いている。
- ● 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 今期間は噴火が観測されなかったが、その他の期間では噴火は時々発生しており、火山活動は活発な状態が続いている。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
18日に行った調査観測では、A火口の最高温度は約570℃(赤外放射温度計1)による)と引き続き高温の状態であった(前期間の12〜13日の観測でも約570℃)。B噴気孔群の噴煙の状況には特に変化はないことから、B噴気孔群も熱的な活動に大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
1)赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が15〜16日及び20日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いている。
20日に上空から行った観測3)では、火口底の地形に変化はなく、火口周辺への新たな噴出物は認められなかった。赤外熱映像装置1)による観測では、火口内の温度分布に変化はなく、最高温度は約460℃と引き続き高温状態が続いている(前回上空から観測した10月12日は約440℃)。同日行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,000〜1,500トンとやや多い状態が続いている。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり40〜68回、0〜7回であった。
2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
3) 陸上自衛隊の協力による。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。
14日に上空から行った観測4)では、火口内の最高温度は約100℃であった(赤外熱映像装置1)による)。前回(8月30日約260℃)に比べやや低い値が観測されたが、火口内に噴煙が充満するなど観測条件が悪かったためと考えられ、依然として高温状態が続いていると推定される。二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,800〜4,300トン(前回10月6日2,800〜3,900トン)で、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
期間中、火山性地震の回数は1日あたり0〜6回と少ない状態であった。火山性微動は観測されなかった。
4) 海上自衛隊の協力による。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
20日に行った現地観測では、火口内の湯だまり5)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は68℃(赤外放射温度計1)による)と依然としてやや高い状態が続いている(前期間68℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
火山性連続微動は振幅のやや大きい状態が続いているが、今期間は振幅に大きな変化はなく、他の観測データには特に変化はみられていない。
孤立型微動は発生状況に大きな変化はなく(今期間1日あたり66〜100回、前期間は51〜84回で推移)、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
5) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口の噴気活動はやや活発で、19日に火口縁上200mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等6)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等6)はなし)。噴煙の最高は19日のごく小規模な噴火で観測された火口縁上600m(灰白色)であった。15日及び19〜20日に鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰が観測され、降灰量7)はいずれも0.5g/㎡未満の微量であった(前期間はなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
6) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
7) 前日09時〜当日09時に降った1㎡あたりの総降灰量を観測。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
15〜16日に火山性地震及び火山性微動がやや増加したが(1日あたり地震は23〜28回、微動は3〜4回)、その他の日は少なく(同2〜9回及び0〜1回)、噴煙活動には特に変化はみられなかった。三島村役場硫黄島出張所によると、期間中、集落(硫黄岳の西南西約3km)で降灰はなかった。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間45回、前期間25回)。火山性微動は少ない状態が続いている。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
期間中、噴火は観測されなかった(前期間は爆発的噴火を7日に9回、8日に8回観測)。地震活動は静穏で、火山性微動も14日に15回とやや多かったがその後は少ない状態であった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。
今期間は観測されなかったが、諏訪之瀬島では噴火が時々発生しており、火山活動は活発な状態が続いている。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第192号 | 14日16:00 | 7〜14日15時までの活動状況。12日実施の上空から観測結果及び13日実施の火山ガス観測結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第532〜538号 (1日1回発表) |
14日〜20日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第48号 | 14日11:00 | やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度やや高い、連続微動の振幅やや大きい状態継続)。レベルは2。 |