2005年 No.25 火山の概況 (平成17年6月16日〜平成17年6月22日)

十勝岳では、噴煙活動が活発で、火口の高温状態が続いている。
樽前山では、噴煙の状況に変化はなく、火口の高温状態が続いていると推定される。
浅間山では21日に火山活動度レベル(以下、レベルと記載)を3から2に引き下げた。活発な噴煙活動、微弱な火映の発生、火山性地震及び微動のやや多い状態は続いている。
三宅島では多量の火山ガスの放出が継続していると推定される。
阿蘇山では、土砂噴出が観測される等、火口内の熱的な活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル


注1 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山及びレベル2以上の火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。

注3 本文の火山名の後ろの[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
   変化があった観測データ項目を、数字は火山活動度レベルを示す。


十勝岳 [熱・噴煙]

 札幌管区気象台が22日に行った調査観測によると、62-2火口の最高温度は約300℃1)で引き続き高温の状態であった(前回2004年9月12日の観測では約200℃1))。
 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね300mで推移した。

1) 赤外熱映像装置による。測定距離160m。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


樽前山 [熱]

 A火口およびB噴気孔群の噴煙の状況に変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


浅間山 [噴煙・火映・地震・微動] レベル:3 (山頂火口で小〜中噴火の可能性)→ 2 (やや活発な火山活動)

 今期間、噴火は観測されなかった。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上400mであった。また、微弱な火映が18日と20日を除く毎日、山麓の高感度カメラ2)で観測された。
 火山性地震及び微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり40〜58回、0〜6回であった。
 21日に開催された火山噴火予知連絡会において浅間山の火山活動が評価され、「浅間山では火山活動が次第に低下する傾向が認められ、山頂火口付近に影響する程度の小規模な噴火は引き続き発生する可能性はあるが、現状では、当面、昨年9月以降11月まで見られたような爆発的噴火が発生する可能性は低いと考えられる」との統一見解が発表された。このことから、21日にレベルを3(山頂火口で小〜中噴火の可能性)から2(やや活発な火山活動)に引き下げた。
 なお、同統一見解では、「火山ガスの放出、火山性地震及び微動の活動のやや活発な状態は続いており、また深部へのマグマ注入を示唆する地殻変動も観測されていることから、再び火山活動が活発化する可能性があり、今後も気象庁の火山活動度レベルの変化に注意する必要がある」と発表している。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


三宅島 [噴煙・火山ガス]

 期間中、山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。火山性地震の回数は少なく、1日あたり2〜26回であった。火山性微動は観測されなかった。
 今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されたほか、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガス放出が続いていると推定される。


阿蘇山 [土砂噴出・微動] レベル:2 (やや活発な火山活動)

 中岳第一火口では、監視カメラ3)による観測で湯だまりの存在及び土砂噴出の発生が確認されたが、今期間は天候不良により現地観測が行えなかったため、火口内の詳細な状況は不明であった。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態で推移し、孤立型微動の発生回数はやや減少したものの大きな変化はなかった(今期間の発生回数は370回、前期間は463回)。火山性地震の発生回数は5月以降1週間あたり100回未満の少ない状態が続いている(今期間の発生回数は79回)。
 噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

3) 阿蘇火山博物館が火口縁に設置。


霧島山 レベル:御鉢:2 (やや活発な火山活動)新燃岳:1 (静穏な火山活動)

 今期間、御鉢火口の噴気は観測されなかった。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特に変化はなかった。


桜島 レベル:2 (比較的静穏な噴火活動)

 今期間、噴火は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動等その他の観測データにも特に変化はなかった。


薩摩硫黄島 レベル:2 (やや活発な火山活動)

 地震活動、噴煙活動等の観測データには特段の変化はなかった。


口永良部島 レベル:2 (やや活発な火山活動)

 地震活動、噴煙活動等の観測データには特段の変化はなかった。


諏訪之瀬島 レベル:3 (小規模な噴火の可能性)

 今期間、噴火は観測されなかった。火山性地震及び微動の活動も低調であった。



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第170号
↓(1日1回発表)
火山観測情報第174号
16日16:00

20日16:00
前日及び当日00時〜15時の活動状況(噴火はなし、噴煙・火映・地震・微動・地殻変動の状況及び上空の風の予想)。レベルは3。
火山観測情報第175号 21日17:30 昨年9〜11月までに見られたような爆発的噴火発生の可能性が低いと判断されたことから、レベルを3から2に引き下げた。第101回火山噴火予知連絡会の統一見解。
三 宅 島 火山観測情報第331号
↓(1日2回発表)
火山観測情報第344号
16日09:30

22日16:30
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第31号 17日11:00 やや活発な火山活動が継続(赤熱域、湯だまりの状況に変化なし)。レベルは2。


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