平成16年台風第21号と前線による大雨の紹介

はじめに

2024年は「平成16年台風第21号と前線による大雨」から20年!


 平成16年(2004年)9月28日から29日は、台風第21号と前線の影響で各地で大雨となりました。三重県では、29日07時55分までの1時間に尾鷲で133.5mm、09時40分までの1時間に大台町宮川で139mmの猛烈な雨を観測し、29日の日降水量は尾鷲で700mmを超えるなど、記録的な大雨となりました。

 三重県では、大台町(旧宮川村)を中心に土石流や崖崩れなどの甚大な被害が発生し、また河川の増水や氾濫による床上浸水や床下浸水などの甚大な被害が各地で発生しました。 当時の大雨や被害の状況などを振り返り、近年の激甚化している大雨災害に備えていただくために、このページを開設しました。

平成16年台風第21号の概況

 9月21日03時にグアム島の西南西海上で発生した台風第21号は、発達しながら北西に進み、26日は強い勢力で沖縄本島と宮古島の間を通過しました。27日に東シナ海でほとんど停滞した台風は、その後進路を北東に変えて進み、29日08時半頃、暴風域を伴って鹿児島県串木野市付近に上陸しました。29日15時過ぎに高知県宿毛市付近に再上陸した後、20時半頃に大阪市付近に再上陸し、北陸地方を通って、30日09時に東北地方で温帯低気圧となりました。

平成16年台風第21号の経路図

経路上の○印は午前9時、●印は午後9時(いずれも日本標準時)の位置で→|は消滅を示します。経路の実線は台風、破線は熱帯低気圧・温帯低気圧の期間を示します。

衛星画像
(平成16年9月28日09時ごろ~9月30日09時ごろ)

     

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気象の状況

●9月28日

 台風第21号は東シナ海を北東へ進み、前線が紀伊半島付近を北上しました。 三重県では28日夜から激しい雨や非常に激しい雨が降り、大台町宮川では22時までの1時間に86mmの猛烈な雨が降りました。 また、28日の日降水量は大台町宮川で190mm、紀北町紀伊長島で164mmとなりました。


●9月29日

 台風第21号は九州の西海上を北東へ進み、九州、四国、近畿地方を通って北陸地方へ進みました。また、東海地方に停滞していた前線の活動が活発となりました。 三重県では7時55分までの1時間に尾鷲で133.5mm(観測史上2位)、8時20分までの1時間に御浜で107mm(観測史上2位)、9時40分までの1時間に大台町宮川で139mm(観測史上1位)、 12時16分までの1時間に津で98mm(観測史上2位) を観測するなど、昼過ぎにかけて各地で猛烈な雨が降りました。台風が最接近した29日夜は、各地で激しい雨が降りました。

 また、29日の日降水量は、尾鷲で740.5mm(観測史上2位)、津で427mm(観測史上1位)、松阪市粥見で498mm(観測史上1位)を観測しました。


降水量の時系列(平成16年9月28日14時~29日24時)

●総降水量(9月28日14時~29日24時)

 降り始め(9月28日14時)から9月29日24時までの総降水量は、 尾鷲で863mm、三重県が管理している三戸観測所(紀北町(旧紀伊長島町))では1180mmを観測しました。降水量の分布をみると、三重県の中部から紀勢・東紀州の地域に降水が集中して総降水量は400mmを超え、紀北町周辺では1000mmを超えていることがわかります。

 なお、9月29日に発生した回線障害等により、大台町宮川や紀北町紀伊長島及び大紀町藤坂峠の総降水量は求められませんでした。

平成16年9月28日14時~29日24時までの降水量の分布図


※この分布図は気象官署とアメダス及び三重県が管理している三戸観測所のデータを使用しています。
なお、図中の×印は回線障害等により、欠測となった観測所です。

    

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大雨となった要因

 9月28日から29日は、台風第21号の北上に伴って本州の南岸に停滞していた前線が北上し、東海地方に停滞しました。前線付近では、千島の東海上に中心を持つ高気圧から流れ込む冷たく湿った東風と、台風第21号の接近により次第に強まる暖かく湿った南風が合流して対流活動が活発となり、積乱雲が次々と発生しました。

 三重県では、紀伊半島の南で発生した積乱雲が北上して流れ込み、地形などの影響も加わって局地的に猛烈な雨が降ったと考えられます。

気象レーダーによる雨雲の動き
(平成16年9月28日14時~30日03時)

地上天気図
(平成16年9月29日09時)

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河川の水位状況

 9月29日は、各地で雨が強まったため、三重県内の河川の水位は各地で急激に上昇しました。

 雲出川の大仰(おおのぎ)水位観測所や櫛田川の両郡(りょうぐん)水位観測所及び宮川の岩出(いわで)水位観測所では、氾濫危険水位(川からいつ水があふれ出してもおかしくない危険な状況を示す水位)を大きく超える記録的な水位を観測しました。 また、宮川水系の三瀬谷ダムでは、増水によりダム天端から越水しました。

雲出川・櫛田川・宮川の水位(平成16年9月28日~10月1日) 氾濫危険水位等は、現在の設定水位です。

出典:国土交通省 水文水質データベース (2024.5.28 閲覧) から作成



三瀬谷ダムの増水状況(提供:大台町(紀勢地区広域消防組合))

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被害の状況

 三重県では、記録的な大雨の影響で、南部を中心に土砂災害や浸水害により甚大な被害が発生しました。大台町(旧宮川村)では、土石流や崖崩れにより、死者6名、行方不明1名、重傷者2名の人的被害が発生し、全壊家屋や半壊家屋も多く発生しました。
 紀北町(旧海山町)では、船津川の氾濫により町の中心部で浸水害が発生し、死者2名、床上浸水などの被害が多く発生しました。また、松阪市では川に流されて1名が死亡、津市では短時間強雨により床下浸水の被害が多く発生するなど、県内の広い範囲で床上浸水や床下浸水の被害が発生しました。
 公共交通機関では、紀勢本線の赤羽川橋梁の橋脚流失による鉄道運休、国道42号の道路陥没による通行止めなどの被害が発生しました。水道断水や電話回線の不通、停電なのどの被害も多く発生しました。


平成16年10月15日 16時00分現在 消防庁調べ
出典:消防庁 平成16年 台風第21号と秋雨前線に伴う大雨による被害状況(第13報)(2024.7.1 利用)

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三重県内の被害画像

土石流で埋まった家屋(大台町(旧宮川村))

土石流の跡(大台町(旧宮川村小滝地区))

赤羽川橋梁の橋脚流失(紀北町(旧紀伊長島町))

三重県道114号の冠水(津市島崎町付近)

紀北町(旧海山町相賀地区)の浸水状況 
出典:三重県「平成16年9月29日からの台風21号による災害の記録」

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大雨による災害から身を守るために

 ニュースで大雨や台風などの言葉を見聞きした場合は、ハザードマップから身のまわりの災害リスクを確認するとともに、警報やキキクルなどの防災気象情報を確認して災害から身を守る行動につなげてください。また、いざという時には、周囲の人にも声をかけ、躊躇せず避難しましょう。
 下のリストから、現在発表中の防災情報の一覧をご確認したい場合は「発表中の防災情報」を選択してください。防災情報の解説を含めたの最新の情報をご覧になりたい場合は「災害の発生が心配される場合に、確認すべき情報のリンク集」を選択してください。


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参考資料

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