平成30年 No.9 週間火山概況 (2月23日~3月1日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

3月1日に霧島山(新燃岳)の火口周辺警報を切替え、警戒が必要な範囲をこれまでの2kmから3kmに拡大しました(噴火警戒レベル3(入山規制)は継続)。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 3月1日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 草津白根山、霧島山(新燃岳)、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 蔵王山、浅間山、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(3月1日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


蔵王山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御釜付近が震源とみられる火山性地震を19回観測しました。火山性微動は観測されていません。
 また、坊平観測点の傾斜計1)では2月4日頃から地殻変動に変化はありません。
 監視カメラによる観測では、噴気は観測されませんでした。
 火山活動はやや高まった状態となっています。今後も小規模な噴火が発生する可能性があるため、想定火口域(馬の背カルデラ)から概ね1.2kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、噴火時には、火口の風下側では火山灰や小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


草津白根山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 1月23日の本白根山での噴火以降、噴火は発生していません。
 火山性地震は噴火前に比べて多い状態で継続しており、また、火口近傍の観測点では微小な地震が観測されています。
 GNSS3)連続観測では、噴火に伴う変化以外に特段の変化は観測されておらず、マグマの動きを示す変化はありません。
 本白根山では、現時点でマグマ噴火に移行する兆候は認められませんが、当面は1月23日と同様な噴火が発生する可能性は否定できません。本白根山鏡池付近から概ね2kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
 白根山(湯釜付近)の火山活動に特段の変化はみられません。
 白根山湯釜火口から概ね500mの範囲ではごく小規模な火山灰等の噴出に注意してください。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で推移しています。
 山頂付近直下の火山性地震は、多い状態で経過しました(図2)。火山性微動も多い状態で経過しました。
 山頂の南南西にある塩野山の傾斜計では、2016年12月頃からみられている北または北西上がりのわずかな変化は鈍化しています。GNSS連続観測によると、浅間山西部の一部の基線で2017年秋頃からみられていたわずかな伸びは停滞しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2018年3月1日)
(▲はごく小規模な噴火を示す)
 

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2018年3月1日) (▲はごく小規模な噴火を示す)


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測で、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、2017年8月11日以降火口からの火山灰や噴石の噴出は認められず、8月24日には溶岩流の海への流入も止まっていたとみられます。しかし、約1年半の休止期間の後、2017年4月に噴火した経緯を踏まえると、今後も噴火が再開する可能性が考えられますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね100m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、島の隆起が継続しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄山では、火山活動がやや高まった状態が続いています。
 ごく微小な地震を含む火山性地震が多い状態で経過し、2月25日には73回発生しました。また、浅い所を震源とする低周波地震が時々発生しています。火山性微動は観測されていません。
 26日から27日にかけて実施した現地調査では、硫黄山周辺の噴気域でこれまでと同様に熱異常域を確認しましたが、前回(2月20日)と比べて特段の変化は認められませんでした。
 噴気は稜線上300mまで上がりました。
 GNSS連続観測では、2017年7月頃から霧島山を挟む基線の伸びが継続しています。このことから、霧島山の深い場所でマグマの蓄積が続いていると考えられます。
 えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき4))に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←3月1日に火口周辺警報を切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続、警戒範囲を2kmから3kmに拡大)

 新燃岳では、3月1日に噴火が発生しました。新燃岳で噴火が発生したのは2017年10月17日以来です。
 2月24日から新燃岳火口付近を震源とする火山性地震が増加し、25日には103回、27日には178回発生しました。3月1日08時頃からは浅い場所を震源とする低周波地震が増加しました。また、1日08時15分頃から火山性微動が発生し、その後も継続しています。
 1日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量5)が1日あたり5,500トン(前回2月2日、90トン)と急増しました。また、同日11時頃、宮崎県高原町から降灰があるとの情報を受けて降灰調査を実施した結果、新燃岳火口から東約18kmの高原町付近で降灰を確認しました。これらのことから、今後、さらに噴火活動が活発になる可能性があると判断し、1日16時40分に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表し、警戒が必要な範囲を新燃岳火口周辺の概ね2kmから概ね3kmに拡大しました。
 また、九州地方整備局の協力により実施した上空からの観測では、17時07分に新燃岳から噴火が継続していることや、新燃岳火口縁の東から南東側で火山灰による変色域を確認しました。弾道を描いて飛散する大きな噴石は確認されませんでした。
 監視カメラによる観測では、灰白色の噴煙が火口縁上概ね100mから300m上がりました。
 GNSS連続観測では、2017年7月頃から霧島山を挟む基線の伸びが継続しています。このことから、霧島山の深い場所でマグマの蓄積が続いていると考えられます。
 現在のところ、新燃岳浅部の明瞭な膨張は認められませんが、今後、多量のマグマが新燃岳直下へ供給されれば、規模の大きな噴火が発生する可能性もあります。
 弾道を描いて飛散する大きな噴石が火口から概ね3kmまで、火砕流6)が概ね2kmまで達する可能性があります。そのため、火口から概ね3kmの範囲では警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振による窓ガラスの破損や降雨時の土石流にも注意してください。地元自治体等が発表する火山ガスの情報にも留意してください。


霧島山(御鉢) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御鉢では、2月27日に御鉢の南西側が震源と推測される火山性地震が3回発生しました。火山性微動は観測されていません。
 火口縁を越える噴煙は観測されていません。
 傾斜計による観測では、御鉢の明瞭な山体膨張を示す変動は認められていません。
 御鉢では2月9日以降、火山性地震の活発化がみられることから、小規模な噴火が発生するおそれがあります。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。引き続き地元自治体等が行う立入規制に従ってください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火活動が続いています。
 南岳山頂火口では、噴火が4回発生し、このうち爆発的噴火は2回でした。2月27日00時31分の爆発的噴火では、弾道を描いて飛散する大きな噴石が8合目(南岳山頂火口より500mから700m)まで達し、噴煙は火口縁上1,300mまで上がりました。
 昭和火口では、噴火は観測されていません。
 23日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり600トン(前回2月9日、700トン)とやや少ない状態でした。
 火山性地震は少ない状態で経過しました。噴火に伴う継続時間の短い火山性微動が発生しました。
 姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しています。桜島では、南岳山頂火口を中心に、引き続き噴火活動が継続すると考えられます。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新岳火口では、噴煙は白色で火口縁上500mまで上がりました。
 火山性地震は、2月27日以降増加して1日あたり20回以上発生する状態が継続しており、多い状態となりました。2月以降、低周波地震が増加しています。火山性微動は観測されていません。
 2月28日から3月1日に実施した現地調査では、前回(2月8日から9日)と比べて噴煙及び熱異常域の状況に特段の変化は認められませんでした。
 地殻変動観測では、火山活動によると考えられる特段の変化は認められません。
 2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低いものの、2017年10月以降火山性地震の活発化がみられること、噴煙量や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりも多い状態で経過していることから、引き続き噴火が発生する可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、2月26日にごく小規模な噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上500mまで上がりました。同火口では、期間を通して、夜間に高感度の監視カメラで火映7)を観測しました。
 26日以降、火山性微動が時々発生しています。火山性地震は、少ない状態で経過しています。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
4) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
6) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
7) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (2月23日~3月1日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
3月1日 16時40分 霧島山(新燃岳) 火口周辺警報 火口周辺警報切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
2月20日12時00分
2月20日14時から3時間毎
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想
毎日 02時から3時間毎に8回 蔵王山
草津白根山
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)
霧島山(新燃岳)
霧島山(御鉢)
桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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