平成23年 No.38　週間火山概況　(平成23年9月16日〜 平成23年9月22日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

表１　火山現象に関する警報及び予報の発表履歴（9月16日〜9月22日）

表２　9月22日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

図１　噴火警報発表中の火山（9月22日現在）

　噴煙の状況は、悪天候のため確認できない期間が多かったが、火口縁上200〜400ｍで経過した。
　火山性地震は、少ない状態で経過した。
　23日（期間外）頃から連続微動の振幅が二十分間程度の間隔で間欠的に増大する現象が発生し、26日13時現在継続している。このような現象は、2001年以降夏期に多く みられている。なお、微動の振幅の増大に際して、その他の観測データに特段の変化はなかった。
　三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
　山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺（雄山環状線内側）では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。

　地震活動は、2011年２月末頃から高い状態が続いている。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、2006年８月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年１月末頃から隆起速度が増加し、現在も続いている。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
　火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部（井戸ヶ浜等）及び南東沖（翁浜沖）では噴火に対する警戒が必要である。

　今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、 福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では 噴火に対する警戒が必要である。

　新燃岳では、７日の噴火以降、噴火の発生はない。
　火山性地震は、増減を繰り返しながらやや多い状態が続いている。振幅のごく小さな火山性微動が18日に２回発生した。
　傾斜計^１）では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
　22日に航空自衛隊航空救難団新田原救難隊の協力を得て実施した上空からの調査では、火口内に蓄積された溶岩の縁辺部から中央部にかけてわずかに低くなっている のが確認できたが、大きな変化はなかった。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の北西側を中心に２月１日以降伸びの傾向がみられている。
　新燃岳火口から概ね３㎞の範囲では、大きな噴石^２）に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^２）（火山れき^３））に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径４cm程度の小さな噴石^２） （火山れき^３））が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。

　昭和火口では、爆発的噴火が27回発生し、大きな噴石^２）が５合目（昭和火口より500〜800ｍ）まで達した。 また、同火口では夜間に高感度カメラ^４）で確認できる程度の微弱な火映を21日に、明瞭に見える火映を22日に観測した。
　南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
　火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
　国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ（鹿児島湾奥部）深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられているが、 一部の観測データではこの夏頃から伸びが鈍化している。
　昭和火口及び南岳山頂火口から概ね２kmの範囲では、大きな噴石^２）及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^２）（火山れき^３））に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

　火山性地震は、少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
　火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね１km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^２）に注意が必要である。

　御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。
　火山性地震及び火山性微動は、少ない状態で経過した。
　今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね１kmの範囲では大きな噴石^２）に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石^２）に注意が必要である。

　18日夜から、伊豆東部の伊東市新井から伊東市汐吹崎沖を震源とする地震活動が始まり、19日以降、地震活動は低下しながら継続している。 18日夜からの地震活動に先行して、東伊豆町に設置している体積ひずみ計^５）で縮みの変化が、また伊東市に設置している傾斜計^１）でも 変化が認められ、19日頃まで継続したが、地震活動の低下とともにその変化も鈍化している。その後、台風第15号の降水等の影響によると考えられる変動がみられる。
　これらの地震活動や地殻変動は地下深くのマグマの活動によるものと考えられるが、火山性微動や浅部低周波地震等、噴火に結びつくような現象は観測されていない。
　また、22日未明には、伊東市宇佐美付近のやや浅い場所を震源とする地震が一時的に増加したが、この地震活動は地下深くのマグマの活動と直接関係はないと考えられる。
　伊豆東部での地震活動は、今回の活動より活発だった2011年７月16日から19日にかけての地震活動以来である。

　15日（期間外）に火山性微動が発生し、この微動の発生に伴い、湯だまり表面に濁りが確認された。16日にも振幅の小さな微動が19時頃まで時々発生したが、 湯だまり表面の濁り等は確認されていない。17日以降微動は発生せず、地震・微動及び噴煙等の火山活動に特段の変化はみられない。
　火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、火口内では土砂や火山灰を噴出する可能性がある。また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要である。