2006年 No.19 火山の概況 (平成18年5月5日 〜 平成18年5月11日)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
9日夕方に規模の小さい火山性微動が発生し、その後10日にかけて地震回数が一時多発したが、噴煙の状況やGPSによる地殻変動観測には特段の変化はみられなかった。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
9日に変色域が確認された。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながら次第に減少している。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
6日に火山性微動が観測された。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
火山性地震はやや多い状態が続いているが、今期間噴火は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
噴火活動は活発な状態にあるが、今期間、噴火は観測されなかった。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
4月17日(期間外)から続いている地震活動はほぼ収まりつつあり、今期間の地震活動は低調な状態であった。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100〜200mで推移した。
 9日16時43分に規模の小さい火山性微動が発生した後、18時頃から火山性地震が増加し、9日453回、10日320回と多発した。地震回数は10日15時以降、1時間あたり概ね5回以下に減少した。地震の規模はいずれも小さく、身体に感じる地震は発生しなかった。これらの地震の震源はポンマチネシリ火口直下の海抜0km付近と推定される。なお、火山性微動の発生および地震の増加の前後で、噴煙の状況やGPSによる地殻変動観測には特段の変化はみられなかった。
 9日に行った現地調査によると、赤沼火口の火口底北西部の複数の箇所から白色の噴煙が比較的強い勢いで噴出していた。また、赤外熱映像装置1)による観測では、26日(期間外)の観測結果と同様、赤沼火口および山頂の北西側斜面の噴気孔群は依然として高温の状態が続いていることが確認された。

1)赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が10日未明に観測された。火映が観測されたのは2月6日以来である。火口内は依然として高温の状態が続いていると推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり21〜49回とやや多い状態で経過した。火山性微動は5日、7日、10日及び11日にそれぞれ1回観測された。傾斜計3)およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
3)地中の膨張や収縮による地面の傾きを観測する機器。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況] <期間外の記述を含む>

 4月17日(期間外)から伊東市川奈崎沖周辺で発生している地震活動は、次第に収まりつつあり、今期間は低調な状況が続いた。
 東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計4)や伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計3)の観測データには特段の変化はみられなかった。また、噴火に結びつくような低周波地震や火山性微動は観測されていない。

4)周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 火山性地震の回数は4日(前期間)に31回と一時的にやや増加したが、今期間は1日あたり2〜18回と少なかった。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]

 9日に海上自衛隊が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場から南西へ幅約100m、長さ約300mの火山活動によるとみられる緑色変色域が確認された。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 9日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり5)の量は約7割であった(前回4月28日:約8割)。湯だまりの表面温度6)は72℃と高い状態が続いている(前回4月28日:70℃)。また、小規模な土砂噴出が確認された。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

5) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
6) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間11回、前期間13回)。今期間、火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 6日に火山性微動を観測した。火山性地震は少ない状態で経過している。なお、今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、噴火は観測されなかった(前期間は爆発的噴火が1回発生)。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動の発生状況や、GPSによる地殻変動には特段の変化はなかった。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳山頂火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上100〜400mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間41回、前期間36回)。火山性微動は観測されなかった。今期間、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 時々噴火が発生するなど噴火活動は活発な状態にあるが、今期間、噴火は観測されなかった。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第27号 8日16:00 活発な火山活動が継続。1日〜8日(15時)の活動状況(噴火はなし)。
火山観測情報第28号 10日11:00 9日から地震回数が一時増加。活発な火山活動が継続。
浅 間 山 火山観測情報第18号 8日16:00 4月28日〜5月8日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第125〜131号
(1日1回発表)
5日〜11日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。


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