2006年 No.16 火山の概況 (平成18年4月14日 〜 平成18年4月20日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
爆発的噴火が1回観測された。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。また、火山性地震のやや多い状態が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発な状態であるが、今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
断続的に火山性連続微動が観測されている。今期間噴火は観測されなかった。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
17日夕方から川奈崎沖を中心に小規模な地震が多発しているが、地震活動は消長を繰り返しながら低下してきている。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。
 火山性地震は20日夜に一時的にややまとまって発生し日回数が16回となったほかは、1日あたり6回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では、特段の変化は観測されなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
 18日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200〜900トンと、依然としてやや多い状態が続いている(前回7日:100〜300トン)。
 火山性地震の回数は1日あたり22〜73回とやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況] <期間外の記述を含む>

 伊豆半島東方沖では17日夕方から地震活動が始まった。今回の活動域は伊東市の川奈崎の東沖合1〜5kmで、震源の深さは約6〜12kmである。21日(期間外)12時までに震度1以上を観測した地震が20回発生している。このうち最大の地震は21日2時50分のM(マグニチュード)5.4(暫定値)で、伊東市や東伊豆町などで震度4を観測した。この周辺では、1978 年からまとまった地震活動がたびたび繰り返されている。
 気象庁の東伊豆の歪計には、この地震活動に伴い、縮み変化が観測されている。このような歪変化は過去の地震活動でも観測されている。伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計でも変化が観測された。国土地理院によれば、GPS観測でも活動域周辺で地殻変動が観測され、解析の結果、変動源の位置は活動域と概ね一致しているとされている。
 今回の地震活動の震源は比較的深部に分布しており、また、低周波地震や火山性微動など噴火に結びつくような現象は現在のところ観測されていない。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 19日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,700〜2,600トンと、依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回3日:1,200〜2,500トン/日)。
 18日に上空から行った観測1)では、火口内の最高温度2)は約140℃と依然として高温状態が続いている(前回2月2日:約130℃)。
 火山性地震の回数は1日あたり2〜35回とやや多い状態が継続している。火山性微動は18日に1回観測された。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

1) 東京消防庁の協力による。
2) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 18日に行った現地観測によると、湯だまり3)の量は約8割であった(前回6日:約8割)。また、湯だまりの表面温度4)は約67℃とやや高い状態が続いている(前回6日:約65℃)。なお、土砂噴出は確認されなかった。このように中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

3) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
4) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間10回、前期間4回)。今期間、火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では、噴煙活動は引き続きやや活発な状態であるが、今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。また火山性微動及び火山性地震は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、爆発的噴火が1回観測された(前期間は爆発的噴火等5)なし)。19日9時50分に爆発的噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上1,200mまで上がった。この他、16〜20日にごく小規模な噴火も発生したが、今期間、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動の発生状況や、GPSによる地殻変動には特段の変化はなかった。

5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳山頂火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間106回、前期間80回)。火山性微動はやや多い状態で経過した。今期間、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、断続的に火山性連続微動が観測されるなど、火山活動は活発な状態にあるが、噴火は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第24号 17日16:00 活発な火山活動が継続。8日〜17日(15時)の活動状況(噴火はなし)。10日から12日に行った山麓からの観測結果および11日に北海道大学が行った上空からの観測結果。
浅 間 山 火山観測情報第15号 14日16:00 7日〜14日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第104〜110号
(1日1回発表)
14日〜20日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。18日に行った上空からの観測結果。19日に行った火山ガス観測結果。


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