2006年 No.15 火山の概況 (平成18年4月7日 〜 平成18年4月13日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。また、火山性地震のやや多い状態が続いている。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
7日に変色水が確認された。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
火山活動は活発な状態にあるが、今期間、噴火は観測されなかった。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
3月30日から始まった微小な地震活動は10日頃には収束した。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 3月21日の噴火以降、ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では、活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。7日には、北海道がオンネトーに設置している監視カメラ(雌阿寒岳の西約3.5km)により、北西側斜面の噴気孔群から約150m下方でも高さ30〜50m程度のごく弱い噴気が観測された。この噴気は、監視カメラでは8日以降確認されていないが、10〜12日に山麓から行った観測では極めて弱い噴気が確認された。赤外熱映像装置1)による観測では、北西斜面の噴気孔群とその下方の噴気が上がっている付近に周辺よりも温度が高い領域が認められた。これらは3月27日に北海道の協力を得て実施した上空からの観測でも確認されていたものであり、その他には新たな温度が高い領域は観測されなかった。また、10〜12日に山麓から行った火山ガス観測では、二酸化硫黄は検出されなかった。
 火山性地震は1日あたり5回以下で推移した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では、特段の変化は観測されなかった。
 11日の北海道大学による上空からの調査で、3月21日の噴火以降初めて赤沼火口内が観測された。赤沼火口の火口底北西部に数か所の火口状の地形があり、これら火口状地形を含め、火口底には噴出域や地熱域が環状に点在しているのが確認された(図2)。

1) 赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。

図2 雌阿寒岳 南上空から見た赤沼火口。火口底の北西部(青波線の円内)には数か所の火口状の地形があり、白色の噴煙を噴出している。これらを含め、火口底には噴出域や地熱域(赤波線の円内)が環状に点在している(4月11日に北海道大学が撮影した写真に加筆)。

図2 雌阿寒岳 南上空から見た赤沼火口。火口底の北西部(青波線の円内)には数か所の火口状の地形があり、白色の噴煙を噴出している。これらを含め、火口底には噴出域や地熱域(赤波線の円内)が環状に点在している(4月11日に北海道大学が撮影した写真に加筆)。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。期間中、火映は観測されなかった。
 7日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり100〜300トンだった(前回3月22日200〜600トン)。
 火山性地震の回数は1日あたり31〜49回とやや多い状態で経過した。火山性微動は7日1回、8日4回、11日1回、12日1回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況] <期間外の記述を含む>

 3月30日(期間外)から始まった伊東市川奈崎沖及び4月3日(前期間)から始まった伊東市大崎の北東沖をそれぞれ震源とする微小な地震活動は、7日以降も発生回数は少ないながら継続していたが、10日頃には収束した。火山性微動及び低周波地震は観測されなかった。
 この付近では過去にもしばしば地震活動が活発化しているが、今回の活動は規模の小さなものであった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり4〜77回とやや多い状態が継続している。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 福徳岡ノ場  [やや活発な状況]

 7日に海上自衛隊が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場を中心に半径約1,000mの火山活動によるとみられる緑色変色水が確認された。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間4回、前期間23回)。今期間、火山性微動は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では、火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は、火口縁を超える噴気や火山性微動及び火山性地震は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等2)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等2)はなし)。噴煙の最高高度は8日の200m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11㎞)で降灰は観測されなかった。  火山性地震はB型地震3)がやや多い状態で経過した(今期間741回、前期間874回)。火山性微動は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
3) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波やS波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、P波やS波が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳山頂火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震および火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間80回、前期間36回)。火山性微動は観測されなかった。今期間、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間をとおして火山性連続微動が観測されるなど、火山活動は活発な状態にあるが、噴火は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第22号 7日15:40 活発な火山活動が継続。3日〜7日(15時)の活動状況(噴火はなし)。北西側斜面の噴気孔群から約150m下方でもごく弱い噴気を観測。
火山観測情報第23号 10日16:00 活発な火山活動が継続。7日〜10日15時の活動状況(噴火はなし)。
浅 間 山 火山観測情報第14号 7日16:00 3月31日〜4月7日15時の活動状況。4月7日に実施した火山ガス観測の結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第97〜103号
(1日1回発表)
7日〜13日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。


このページのトップへ