2006年 No.14 火山の概況 (平成18年3月31日 〜 平成18年4月6日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出及び火山性地震のやや多い状態が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
火山活動は活発な状態にあるが、今期間、噴火は観測されなかった。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
30日15時前頃から川奈崎付近で小規模な地震が多発している。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 3月21日の噴火以降、ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では、活発な噴煙活動が続いており、白色の噴煙が火口縁上高さ200〜400mで推移した。
 火山性地震は、4月2日に27回とややまとまって発生した他は、1日あたり5回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動の発生はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。期間中、火映は観測されなかった。
 火山性地震の回数は1日あたり34〜52回とやや多い状態で経過した。火山性微動は1日、2日にそれぞれ2回、3回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況 <期間外の記述を含む>

 前期間の3月30日15時前頃から発生し始めた伊東市の川奈崎沖の、深さ7〜10km付近を震源とする小規模な地震の活動は、3日以降発生回数は減少しているものの、6日未明現在も続いている。これまでの最大の地震は31日13時00分に発生したM(マグニチュード)3.1(暫定値)の地震で、東伊豆町奈良本などで震度1を観測した。
 また、3日昼頃から伊東市大崎の北、深さ6〜8km付近を震源とする地震が発生し始め、3日12時55分に発生したM2.8(暫定値)の地震により、熱海市網代などで震度1を観測した。
 これらの地震活動に伴って、東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計や伊東市と伊豆市に設置している防災科学技術研究所の傾斜計でわずかな変化がみられたが、火山性微動及び低周波地震は観測されなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 3日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,200〜2,500トンと、依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回3月13日1,900〜3,400トン)。
 火山性地震の回数は1日あたり2〜46回とやや多い状態が継続している。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 火山活動はやや活発な状況にあり、31日及び6日に行った現地観測によると、湯だまり1)の量は、31日は約7割まで減少した(前期間の27日約8割)が、期間中の降水により6日には約8割に増加していた。湯だまりの表面温度2)は31日約73℃、6日約65℃とやや高い状態が続いている(27日約71℃)。土砂噴出は31日に高さ約5mのものが観測されたが、6日には確認されなかった。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。
 孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

1) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
2) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間23回、前期間51回)。火山性微動は観測されなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では、火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は、火口縁を超える噴気は観測されなかった。2日には火山性微動を観測したが、火山性地震は少ない状態で経過した。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等3)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等3)はなし)。噴火で観測された噴煙の最高高度は3日の600m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11㎞)で降灰は観測されなかった。
 火山性地震はB型地震4)がやや多い状態で経過した(今期間874回、前期間682回)。火山性微動は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

3) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
4) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波やS波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、P波やS波が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間36回、前期間54回)。火山性微動は観測されなかった。期間中、監視カメラによる観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 4日から振幅のやや大きな火山性微動が観測されるなど、火山活動は活発な状態にあるが、今期間、噴火は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第20号 31日16:00 活発な火山活動が継続。前日〜当日(15時)の活動状況(噴火はなし)。
火山観測情報第21号 3日16:00 活発な火山活動が継続。31日〜3日15時の活動状況(噴火はなし)。
浅 間 山 火山観測情報第13号 31日16:00 3月24日〜3月31日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第90〜96号
(1日1回発表)
31日〜6日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。


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