2006年 No.4 火山の概況 (平成18年1月20日 〜 平成18年1月26日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。火山性地震がやや多く発生した。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
【静穏な状態であるが、観測データに変化のあった火山】
【その他の記事を掲載した火山】
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。期間中、火映は観測されなかった。
火山性地震は1日あたり24〜74回とやや多い状態が続いている。火山性微動は22日に1回されたのみで少ない状態であった。
◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況]
25日20時頃から伊豆半島東方沖の川奈崎付近、深さ約10kmを震源とする微小な地震がやや増加した。最大地震は26日12時46分に発生したM(マグニチュード)1.1(暫定)で、この地震を含め震度1以上を観測した地震はなかった。
地震の増加に前後して、東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計に縮みの変化がみられ、伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計にも変化がみられた。
火山性微動及び低周波地震は観測されなかった。この付近では過去にもしばしば地震活動が活発化しているが、今回の活動は規模の小さなものであった。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
20日に上空から行った観測1)では、火口内の最高温度は約130℃(赤外熱映像装置2)による)と依然として高温状態が続いている(前回12月15日約110℃)。
24日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,300〜3,300トンと依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回17日1,600〜2,600トン)。
火山性地震は少ない状態が続いており、火山性微動は観測されなかった。
1) 東京消防庁の協力による。
2) 赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
◇ 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)→静穏な状況 (レベル1)]
中岳第一火口の熱活動は低調な状態が続き、火山性連続微動の振幅も小さい状態が続いていることから、噴火の可能性は低く、火山活動は静穏な状態になったと判断し、20日にレベルを2(やや活発な火山活動)から1(静穏な火山活動)に引き下げた(前号でも速報として掲載。詳細は前号参照)。
◇ 霧島山(新燃岳) [静穏な状況(レベル1)]
20日から新燃岳付近を震源とする火山性地震が増加し、22日には日回数が49回となった。また、25日には火山性微動が1回観測されたが、振幅の小さな継続時間の短いものであった。地震はその後減少傾向にある。26日に行った調査観測では、噴気活動等に特段の変化はなかった。期間中、火口縁を超える噴気は観測されず、地殻変動にも特段の変化はなかった。新燃岳付近で顕著な地震の増加がみられたのは2000年7月以来である。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。20日、23日及び25日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。
火山性微動が21日及び26日にそれぞれ1回観測されたが、いずれも振幅の小さな継続時間の短いものであった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
26日に爆発的噴火が1回観測された(前期間は、噴火は観測されなかった)。爆発的噴火は06時51分に発生し、灰白色の噴煙が火口縁上400mまで上がった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった。
また、24〜26日にB型地震3)が増加し、特に26日は日回数が100回を超え、やや多い状態であった。火山性微動は観測されなかった。地殻変動には特段の変化はなかった。
3) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波、S波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、位相が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間52回、前期間38回)。火山性微動は少ない状態が続いている。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
25日に噴火が観測された。爆発的噴火はなかった。
25日07時45分頃から同日の日没まで、監視カメラ(御岳の北北東約25kmの中之島に設置)で灰白色の噴煙が観測された。噴煙の最高は火口縁上500mであった。
火山性微動が24日19時頃〜26日16時頃に連続的に観測され、振幅のやや大きなものが観測された。