2005年 No.36 火山の概況 (平成17年9月2日 〜 平成17年9月8日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)(注1)
2日に噴火があった。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
7〜8日に噴火があった。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
4日に火山性地震がやや多く発生した。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動はやや低調であったが、火山活動は長期的にはやや活発な状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙は最高で火口縁上400mまで上がった。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が2、5及び8日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
 火山性地震は、8月28日(前期間)に多発した後やや多い状態が続いているが、3〜5日にはさらに増加し1日あたり100〜118回で推移した。その他の日は48〜76回であった。火山性微動もやや多い状態が続いており、1日あたり0〜10回であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


◆ 伊豆東部火山群  [静穏な状況]

 前期間の8月29日04時〜06時にかけて、伊東市街の南西約1kmを震源とする地震がややまとまって発生したが、その後の地震活動は静穏に経過している。また、地殻変動等の観測データに変化はみられなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙は最高で火口縁上1,000mまで上がった。今期間は火山ガスの放出量観測は実施しなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、また噴煙活動に大きな変化がみられなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
 期間中の火山性地震の回数は、3日に37回観測(後述)された以外は、1日あたり3〜14回と少ない状態であった。
 3日17時53分に、空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震が発生し、三宅村神着と三宅村坪田で震度1を観測した。その後、振幅のやや大きな低周波地震は19時までに7回発生し、一部の地震は空振を伴った。これらの地震発生時、噴煙の状況には特に変化はみられなかった。三宅島測候所が行った現地調査では降灰は確認されなかった。火山性地震は同日19時以降少ない状態に戻った。また、5日13時34分にも振幅のやや大きな低周波地震が発生した。地震発生時の噴煙の状況は雲による視界不良のため確認できなかった。
 8月28日(前期間)から、時々、振幅の小さな連続微動が10〜40分程度の周期的な間隔で観測されていたが、9月2日を最後に観測されていない。この連続微動に関係して、噴煙活動等の観測データに変化はみられなかった。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
 2〜3日の夜間に、監視カメラ(阿蘇火山博物館が火口縁に設置)で火口底の一部に赤熱現象2)が観測された。
 8日に行った現地観測では、火口内の湯だまり3)は、台風14号による降水の影響で量が約7割に増加し(前期間は約2割)、色が乳緑色に変色していた(前期間は灰色)。表面温度は70℃(赤外放射温度計4)による)と依然として高温であった(前期間74℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、噴湯現象が多数観測された。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動は回数が減少しやや少ない状態であった(今期間1日あたり29〜57回、前期間は40〜112回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

2) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。阿蘇山では、赤熱域が拡大すると、火孔が開孔し、噴火活動が活発化したことがある。

3) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。

4) 赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 2日に噴火が観測された5)(前期間は9月1日にごく小規模な噴火を観測)。噴火に伴い灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がった。その他ごく小規模な噴火も時折発生しており、2〜3日に鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰が観測され、期間中の総降灰量は2g/㎡であった(同気象台で降灰が観測されたのは6月8日以来)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 4日に火山性地震がやや多く発生し、4日の日回数は112回であった。その他の日は1日あたり0〜17回で推移した。地震の増加は前期間の8月31日(86回)にもみられている。火山性微動の発生状況には特に変化はなかった。監視カメラ(硫黄岳の西南西約3kmに設置)による観測では、4日は天候不良のため噴煙の状況は不明であったが、その他の日の噴煙活動に特に変化はなかった。三島村役場硫黄島出張所によると、期間中、集落(硫黄岳の西南西約3km)で降灰はなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや少ない状態が続いており、1日あたり0〜10回で推移した(前期間は3〜12回)。火山性微動も発生状況に変化はなく同0〜4回で推移した(前期間は0〜3回)。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は観測されなかった。今期間の活動はやや低調であったが、火山活動は長期的にはやや活発な状態が続いている。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、7〜8日に火山灰を含む噴煙が火口縁上200〜1,000mまで上がっているのが確認された。期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。火山性地震の発生状況に変化はなく、火山性微動は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第186号 2日16:00 8月27日9月2日15時の活動状況。30日実施の火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第487〜492号
(1日2回発表)
2〜4日
(09:30及び
16:30)
前日16時〜当日09時もしくは当日09〜16時の活動状況、及び上空の風の予想。
火山観測情報
第493〜496号
(1日1回発表)
5〜8日
(16:30)
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第42号 2日11:00 やや活発な火山活動が継続(中岳第一火口の熱的な活動引き続きやや活発)。レベルは2。


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