2005年 No.35 火山の概況 (平成17年8月26日 〜 平成17年9月1日)

【噴火が観測された火山】

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)(注1)
27〜29日に小規模な噴火があった。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震、火山性微動及び火山ガス放出量のやや多い状態が続いている。
伊豆東部火山群 [静穏な状況]
29日に伊東市付近で地震が一時的に増加した。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
桜 島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
31日に火山性地震がやや多く発生した。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震の発生回数は減少したが、火山活動は長期的にはやや活発な状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 28日16時から21時にかけて火山性地震が一時的に増加し、28日の地震回数は103回となった。傾斜計等その他の観測データに異常な変化は観測されなかった。地震回数はその後もやや多い状態が続き、1日あたり74〜94回で推移した。火山性微動の回数もやや多く、期間中1日あたり1〜7回であった。
 30日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,600〜2,100トンで(前回は8月22日300〜900トン)、依然としてやや多い状態が続いている。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が29日から31日にかけて観測されており、火口内は依然として高温状態が続いている。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 伊豆東部火山群  [静穏な状況]

 29日04時から06時にかけて、伊東市の南西側約1kmを震源とする浅い地震がややまとまって発生した。最大地震は04時18分に発生したM(マグニチュード)2.9(暫定値)で、伊東市大原などで震度1を観測した。その後、地震活動は落ち着いた状態に戻っている。地殻変動等の観測データに特段の変化はみられなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。30日に上空から行った火山ガス観測2)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり4,800〜7,400トン(前回は8月23日3,200〜5,900トン)で、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 火山性地震の回数は少なく、1日あたり7〜17回であった。28日以降、振幅の小さな連続微動が10分から40分程度の周期的な間隔で時々観測されているが、噴煙の状況等その他の観測データに変化はみられていない。このような現象が発生したのは2004年6月18日以来のことである。

2) 海上保安庁の協力による。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
 27〜28日及び30日〜9月1日の夜間に、監視カメラ(阿蘇火山博物館が火口縁に設置)で火口底の一部に赤熱現象3)が観測された。
 29日に行った現地観測では火口内の状況に大きな変化はなく、湯だまりの量は引き続き約2割で、湯だまりの表面温度は74℃(赤外放射温度計4)による)と依然として高温であった(前期間72℃)。湯だまり内では引き続き高さ2〜3mの土砂噴出が多数観測された。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動の発生状況には特に変化はなく(今期間は1日あたり40〜112回、前期間は42〜99回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

3) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。阿蘇山では、赤熱域が拡大すると、火孔が開孔し、噴火活動が活発化したことがある。

4) 赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、29日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、噴火は観測されなかった(前期間は25日にごく小規模な噴火が観測された)。地震活動及び地殻変動にも特段の変化はなかった。噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 31日に火山性地震がやや多く発生し、31日の日回数は86回であった。その他の日は1日あたり5〜16回で推移した。地震がやや多く発生したのは、昨年5月20日(35回)以来であった。火山性微動の発生状況には特に変化はなかった。監視カメラ(硫黄岳の西南西約3kmに設置)による観測では、31日は天候不良のため噴煙の状況は不明であったが、その他の日の噴煙活動に特に変化はなかった。鹿児島中央警察署硫黄島駐在所によると、期間中、集落(硫黄岳の西南西約3km)で降灰はなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震の回数は、8月19日頃からやや少ない状態が続いており、今期間は1日あたり3〜12回で推移した(前期間は同3〜8回)。火山性微動は継続時間の短いものが時々発生しており、1日あたり0〜3回で推移した(前期間は同0〜3回)。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では、噴気等は観測されなかった。火山性地震の発生回数は減少したが、火山活動は長期的にはやや活発な状態が続いている。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、27〜29日かけて火山灰を含む噴煙が火口縁上500〜700mまで上がっているのが確認された。期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。火山性地震及び火山性微動の活動には特に変化はなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第185号 26日16:00 8月19〜26日15時の活動状況。22日実施の火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第473〜486号
(1日2回発表)
26〜1日
(09:30及び
16:30)
前日16時〜当日09時もしくは当日09〜16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第41号 26日11:10 やや活発な火山活動が継続(中岳第一火口の熱的な活動引き続きやや活発)。レベルは2。
口永良部島 火山観測情報第27号 29日14:00 火山性地震の発生が少なくなっている。レベルは2。


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