表面海水中のpHの長期変化傾向(全球)

令和5年11月30日 気象庁発表
(次回発表予定 令和6年12月2日)

診断(2022年)

  • 全球の表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は10年あたり0.019となっており、1990年以降、約0.06低下しています。
  • 太平洋、大西洋、インド洋ともに、広い海域で表面海水中のpHが低下し、海洋酸性化が進行しています。
表面海水中のpHの長期変化 表面海水中のpHの長期変化

全球の表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)偏差の長期変化(左図)と2022年におけるpH分布図(右図)

左図は全球の表面海水中のpHの偏差時系列を示します。現場水温におけるpHの値を用いています。1991年から2020年までの平均からの差を偏差としています。
太線は偏差の平均値、塗りつぶしは偏差の空間的変動幅(±1σ)を示しています。破線は長期変化傾向を示しています。
左図中の数字は10年あたりの変化率(減少率)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
解析手法の詳細は、表面海水中のpHの分布及び長期変化傾向の見積もり方法をご覧ください。
右図は、pHの分布を示し、色が暖色系であるほどpHの数値が低いことを示しています。
なお、掲載しているデータは、解析に使用しているデータの更新及びそれに伴う再計算のため、過去に遡って修正されます。

解説

表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)は、全球で1990年から2022年までの期間で、10年あたり0.019の割合で低下しています。

海盆ごとでは、太平洋では、10年あたり0.019、大西洋では、10年あたり0.018、インド洋では、10年あたり0.020の割合でpHが低下しており、海洋酸性化が海洋の広い範囲で進行しています。(下図参照)

(参考)


pHの低下傾向と海洋酸性化

海水のpHが長期間にわたり低下する傾向を『海洋酸性化』といい、おもに海水が大気中の二酸化炭素を吸収することによって起きています。現在の海水は弱アルカリ性(海面においてはpH約8.1)を示しています。二酸化炭素は水に溶けると酸としての性質を示し、海水のpHを低下させます。なお、「海洋酸性化」とは海洋が酸性(pHが7以下)になることではなく、より酸性側に近づいて(pHが低下して)きていることを指しています。

現在、大気中の二酸化炭素濃度は増加し続けており、海洋はさらに多くの二酸化炭素を吸収することになるため、より酸性側になることが懸念されています。

表面海水におけるpHの低下と海面水温の上昇により、海水の化学的性質が変化して、大気中の二酸化炭素の増加の影響を受けやすくなり、海洋が大気から二酸化炭素を吸収する能力が低下したり、海水の二酸化炭素の季節変動幅が拡大することが指摘されています(IPCC, 2021)。海洋の二酸化炭素を吸収する能力が低下すると、大気中に残る二酸化炭素の割合が増えるため地球温暖化が加速される可能性があります(IPCC, 2021)。また、海洋酸性化の進行によってプランクトンやサンゴなど海洋生物の成長に影響が及ぶため、水産業や観光業などへの影響も懸念されています(IPCC, 2022)。

参考文献

  • IPCC (2021), Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change[Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S.L. Connors, C. Péan, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M.I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T.K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekçi, R. Yu, and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 2391 pp. doi:10.1017/9781009157896.
  • IPCC (2022), Climate Change 2022: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [H.-O. Pörtner, D.C. Roberts, M. Tignor, E.S. Poloczanska, K. Mintenbeck, A. Alegría, M. Craig, S. Langsdorf, S. Löschke, V. Möller, A. Okem, B. Rama (eds.)]. Cambridge University Press. Cambridge University Press, Cambridge, UK and New York, NY, USA, 3056 pp., doi:10.1017/9781009325844.
表面海水中のpHの長期変化 表面海水中のpHの長期変化
表面海水中のpHの長期変化

(a)太平洋域、(b)大西洋域、(c)インド洋域における表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)の長期変化

各海域における表面海水中のpHの時系列を示します。太線は偏差の平均値、塗りつぶしは偏差の空間的変動幅(±1σ)、破線は長期変化傾向を示しています。 図中の数字は10年あたりのpHの変化率(減少率)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
なお、掲載しているデータは、解析に使用しているデータの更新及びそれに伴う再計算のため、過去に遡って修正されます。


お知らせ

診断(2020年)(令和3年11月1日発表)、診断(2021年)(令和4年11月30日発表)において、水素イオン濃度指数(pH)偏差について、1991年から2020年の平均からの差とすべきところ1991年から2015年の平均からの差によるデータが掲載されていたため修正しました。(令和5年11月2日)

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