平成25年 No.34 週間火山概況 (平成25年8月16日〜8月22日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(8月16日〜8月22日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
17日 12時35分 18日 16時52分 21日 10時30分 |
桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 8月22日現在の噴火警報・予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(8月22日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙高度は視界不良のため不明の期間がありますが、その他の期間に噴煙は観測されませんでした。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
22日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,000トン(前回7月30日、400トン)とやや多い状況でした。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年4月頃からほぼ停滞していましたが、5月頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は 2011 年12 月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012 年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞していましたが、2013 年4月頃からわずかな縮みの傾向がみられます。
現在でも火口には高温の溶岩が溜まっており、引き続き、小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が32回発生しました。そのうち、18日16時31分の爆発的噴火では、多量の噴煙が火口縁上5,000mまで上がり、小規模な火砕流が発生し昭和火口の南東側へ約1km流下し、大きな噴石2)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m)まで達しました。昭和火口で5,000mの噴煙を観測したのは2006年6月に昭和火口の活動が再開して以来初めて、火砕流が1kmに達したのは、2009年4月9日の爆発的噴火以来です。今回の爆発的噴火に伴い、鹿児島市から薩摩川内(せんだい)市(甑島(こしきじま))にかけて降灰を確認しました。21日10時06分の爆発的噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上3,500mまで上がりました。昭和火口では、夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
南岳山頂火口では、16日05時30分にごく小規模な噴火が発生しました。南岳山頂火口での噴火は2013年1月15日以来です。
19日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,400トン(前回7月22日、1,600トン)とやや多い状況でした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、桜島島内の基線で、2011年11月頃から伸び、2012年7月頃からその鈍化がみられましたが、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられます。鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
図2 桜島 昭和火口の噴火の状況と降灰状況
左図:鹿児島地方気象台(東郡元)から見た噴煙上昇中の状況(18日16時35分頃)右図:鹿児島中央駅付近(昭和火口の西約11km)の降灰状況(18日17時10分頃)