平成24年 No.18 週間火山概況 (平成24年4月27日〜5月3日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(4月27日〜5月3日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 5月3日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺警報及び火山現象に関する海上警報 | 火口周辺危険及び周辺海域警戒 | 硫黄島 |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報発表中の火山(5月3日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は、火口縁上最大300mを観測した日があったが、その他の期間は悪天候のため、不明であった。
火山性地震は少ない状態で経過した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
4月27日、国土地理院の地殻変動観測により、島内で大きな隆起が観測された。また、地震活動が早朝から活発な状態となり、この日一日の火山性地震の回数は600回を超え、2011年3月8日の観測開始以来最多となった。
4月28日以降、島内の地殻変動は隆起から沈降に転じ、地震活動もやや低下傾向となったが、28日、30日に一時的な微小地震の活発化がみられ、また、29日以降は火山性微動が断続的に観測されるなど、火山活動は活発な状態が続いた。
そのような中で、4月29日15時40分頃、硫黄島の北東沖で変色水域が確認され、同海域で海底噴火が発生した可能性もあると考えられる。変色水は30日にも引き続き確認されている。また、30日13時15分頃、島北部で高さ10m程度の噴気が新たに確認された。
5月1日以降も、島内の微小な地震活動はやや活発な状態で火山性微動の断続的な発生も続いていたが、4日以降(期間外)は共に低調になってきている。
以上のように、硫黄島の火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、今回新たな噴気が確認された硫黄島北部や、変色水がみられた硫黄島北東沖、及び今回の場所以外で従来から小規模な噴火がみられていた領域においても噴火が発生する可能性があり、今後の火山活動に警戒が必要である。
【備考】
硫黄島は東京の南約1200kmに位置する、長径8.5km、幅4.5kmの火山島である。島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、各所で小規模の水蒸気爆発が起こってきている。異常な速さの隆起が続いている特徴がある。
近年の火山活動としては、2001年9月に硫黄島の南東沖約200m、同年10月に北西岸の井戸ヶ浜、2004年6月に阿蘇台陥没孔、2012年2月、3月及び4月に島西部の旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)で小規模な水蒸気爆発が発生した。国土地理院及び防災科学技術研究所の地殻変動観測によると、2006年までは島の沈降、2006年以降は隆起傾向がみられており、2011年以降は隆起速度が大きくなり、2011年12月以降はその速度がやや低下していた。また、地震活動は2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いていた。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、その後停滞している。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。2011年の噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2)(火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島は、活発な噴火活動が続いている。
昭和火口では、爆発的噴火が24回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。
また、爆発的噴火に伴う大きな空振や、降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
火山性地震は少ない状態で経過した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
火山性地震は少ない状態で経過した。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、 「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。