平成24年 No.10 週間火山概況 (平成24年3月2日〜3月8日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月2日〜3月8日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 3月8日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(3月8日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
7日に陸上自衛隊の協力により実施した上空からの観測では、前回(2010年1月)と比べて山頂火口内の地形の状況等に大きな変化はなく、 山頂火口南側内壁に位置する主火孔及びその周辺で引き続き高温領域1)及び火山ガスの放出が認められた。
噴煙高度は、悪天候のため確認できない期間もあったが、その他の期間は火口縁上100〜200mで経過した。
火山性地震は少ない状態で経過した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
7日の08時20分頃に島西部の旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)で泥噴出が発生したとの海上自衛隊からの通報を受けて、現地調査を実施した。 13時25分頃まで断続的に噴気や泥・小さな噴石等の噴出を確認したが、その後は収まっている。噴出口は2月上旬にごく小規模な水蒸気爆発が発生したの と同じ場所で、そこから西北西方向へ最大60m程度の距離まで泥が飛散しているのを確認した。噴気は最大で約20mの高さまで上がり、また、小さな噴石 等は10数mの高さまで上がった後、約20m四方へ飛散するのを確認した。
地震活動は、2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いている。今期間、火山性地震はやや少ない状態で経過した。
国土地理院のGPS観測結果では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、 2011年1月末頃から隆起速度が増加していたが、同年12月下旬頃からやや鈍化している。 また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部 の海岸付近、島西部及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
6日に海上自衛隊が上空から実施した観測によると、福徳岡ノ場付近の海面に、火山活動によるとみられる湧出点付近で乳白色の変色水が確認された。 これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測でも、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動 によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しなかった。
火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
7日に航空自衛隊航空救難団芦屋救難隊の協力を得て実施した上空からの調査では、前回(2月21日)と比較して、火口内に蓄積された 溶岩の大きさ(直径約600m)や形状及び周辺の噴気の状況に変化がないことを確認した。白色の噴煙が、主に溶岩の北側及び東側から火口 縁上50m程度上がっており、一部には二酸化硫黄を含む青白色のガスを確認した。また、西側斜面の割れ目の一部では、前回の調査と同様に やや温度の高い部分1)が認められた。
国土地理院のGPS観測結果では、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、 その後停滞している。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石3)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方で も小さな噴石3)(火山れき4))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程 度の小さな噴石3)(火山れき4))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴 う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島は、活発な噴火活動が続いている。
昭和火口では、爆発的噴火が30回発生し、大きな噴石3)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。 また、同火口では2日に夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は、6日から7日にかけてやや増加したが、それ以外は少ない状態で経過した。噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
国土地理院のGPS観測結果では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石3)及び火砕流に警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)(火山れき4))に注意が必要である。降雨時には土石流に 注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
火山性地震は少ない状態で経過した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、6日に爆発的噴火が発生した。爆発的噴火の発生は2月6日以来である。 同火口では3日から4日にかけて夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は6日に1回発生した。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲 では大きな噴石3)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)赤外熱映像装置により観測している。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
3)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。