平成23年 No.10 週間火山概況 (平成23年3月4日〜 平成23年3月10日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月4日〜3月10日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 3月10日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(3月10日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜400mで経過した。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過した。
 10日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,100トン(前回2月24日、1,000トン)と、多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 海上自衛隊からの連絡によると、7日に島の北側海岸(北ノ鼻)から真北約500m付近で約5〜10mの変色水が確認された。
 防災科学技術研究所の観測によると、2011年2月末頃から地震活動は高い状態にある。
 国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。 


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火が時々発生しており、活発な噴火活動が続いている。期間中爆発的噴火は発生しなかった。
 4日と7日に航空自衛隊芦屋救難隊及び航空自衛隊春日ヘリコプター空輸隊の協力を得て上空からの調査を行った。火口内に蓄積された溶岩に大きな変化はなかった。主に溶岩表面の亀裂及び東側の縁辺部から、白色噴煙が火口縁上100〜300mまで上がっていた。
 同火口では4日から5日にかけて、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
 振幅の小さな火山性微動が断続的に発生している。火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 10日に実施した現地調査では二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり500トン(前回3月2日、1,300トン)とやや少ない状態であった。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、1月26日の噴火以降地盤の縮みが観測されたが、新燃岳の西側で2月1日以降わずかに伸びの傾向がみられる。
 新燃岳火口から概ね4kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。新燃岳火口から概ね3kmの範囲では、火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。これまでの噴火では、 風に流されて直径4㎝程度の小さな噴石1)(火山れき2))が新燃岳火口から10㎞を超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が15回発生し、大きな噴石が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震はやや多い状態で経過した。噴火に伴う火山性微動が発生している。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。同火口では4日と5日に夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、噴火が時々発生した。これらの噴火に伴う噴煙の高さは最高で火口縁上400mであった。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】




 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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