平成22年 No.20 週間火山概況 (平成22年5月7日 〜 平成22年5月13日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(5月7日〜5月13日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 5月13日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(5月13日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。
火山性地震はやや少ない状態で推移した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
国土地理院の観測によると、2006 年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、現在はほぼ停滞している。島内南北方向の伸びの傾向はやや鈍化している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間観測は行われなかった。海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)])]
火山性地震はやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されていない。
遠望カメラによる観測では、火口縁を超えるような噴煙は観測されなかった。
8日に宮崎県の協力を得て宮崎地方気象台が行った上空からの観測では、火口内に特段の変化は認められなかった。
新燃岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、大きな噴石1)が5合目(昭和火口から500〜800m)まで達した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は少ない状態で経過している。また、噴火に伴う火山性微動が発生している。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されており、2010年初め頃から、桜島島内においても伸びが観測されている。
桜島の昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。
硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。また、同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
6日に実施した現地調査では大穴火口の噴気孔周辺で硫黄の燃焼が確認されたが、7日に福島県警察本部が上空から撮影した画像や遠望カメラによる観測からは、燃焼は止まったと推定される。
噴気活動はやや高まった状態が続いており、火山性地震はやや多い状況が続いている。 吾妻山では火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられないが、火口内では噴気、火山ガスの噴出等がみられるため、火口内では警戒が必要である。
草津白根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
6日から7日にかけて、湯釜から逢ノ峰にかけての浅部を震源とする振幅の小さな火山性地震が一時的にやや増加した。その後は少ない状態で経過している。地震の増加に際し、噴煙等の表面現象やGPSによる地殻変動観測では特段の変化はないが、湯釜火口内の北壁等で引き続き熱活動の高まりがみられている。
最近では、2日から4日にかけて同様な活動があった。
草津白根山では、山頂火口からごく小規模な火山灰等の噴出の可能性があるので、山頂火口から概ね500mの範囲では警戒が必要である。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺の窪地や谷地形などでは高濃度の火山ガスが滞留することがあるので、注意が必要である。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。