岩手山[いわてさん] Iwatesan【常時観測火山】
北緯39°51′09″ 東経141°00′04″ 標高2,038m (岩手山)(三角点) |
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![]() 岩手山全景 盛岡市内から 2010年5月19日 気象庁撮影 |
概要
玄武岩~安山岩質(極希にデイサイト質噴出を伴う)の西岩手・東岩手の2つの成層火山から成り、西岩手の山頂部には小規模なカルデラ地形(西岩手カルデラ)が存在する。爆発型噴火が特徴であるが、溶岩の流出も多数認められる。周囲には爆発的噴火による多数の降下火砕堆積物層が分布する。また、少なくとも7回の大規模山体崩壊が発生し、その崩壊堆積物が山麓を広く覆っている。山体崩壊の回数は、国内の活火山の中で最多である。西岩手に比較して東岩手の方が最近までマグマ噴火を継続しており、薬師岳は本火山の最高峰(標高2038m)である。
有史以降の噴火は、西岩手山大地獄谷(現在も噴気活動活発)での小爆発1回のほかは、すべて東岩手山である。東岩手山における歴史時代の2回の噴火は、どちらもマグマ噴火であった。薬師火口と同火口内にある妙高岳では、高温の噴気活動が認められた時期(昭和9-10年、昭和34年、昭和47年)もあるが、現在は数箇所で弱い噴気が認められるにすぎない。玄武岩~安山岩のSiO2量は50.2~62.7 wt.% である。
噴火活動史
各火山について、地質学的な研究によってわかっている過去1万年の火山活動史を記載した。また、過去1万年間の噴火活動と有史以降の火山活動とに分けて記載した。
- 過去1万年間の噴火活動
約7000年前に東岩手火山の山頂部が崩壊し、山頂部には馬蹄形火口が形成された。この崩壊で、東麓に平笠岩屑なだれ堆積物が拡がった。その後、この馬蹄形カルデラ内でマグマ噴火によって現在の薬師岳を形成する噴火が続いている。歴史に残る噴火は、17世紀以降であるが、地質調査では平安時代から江戸時代にかけて、小規模な山体崩壊や山頂噴火のあったことが確かめられている。また約7000年前以降に西岩手火山でも、やや規模の大きな水蒸気噴火が少なくとも4回発生している。文献に記載され、また噴火の規模について明らかにされているのは、1686(貞亨3)年の山頂噴火と1732(享保16~17)年の山腹噴火である。1686(貞亨3)年の噴火では、山頂の御室火口のマグマ水蒸気噴火に始まり、旧西根町・旧玉山村・滝沢村・盛岡市にまで降灰があり、火砕サージ、火山泥流が発生した。
噴火イベントの年代、噴火場所、噴火様式等については、(国研)産業技術総合研究所の活火山データベース(工藤・星住, 2006)を参考。
- 岩手山 有史以降の火山活動
「概要」、「過去1万年間の噴火活動」、「有史以降の火山活動」については日本活火山総覧(第4版)(気象庁編,2013)及び最近の観測成果による。
なお、噴出物量については、降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3)で記載している。また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI(火山爆発指数)も付加している。詳しくはこちらを参照のこと。
火山観測
気象庁では、地震計、傾斜計、空振計、GNSS、監視カメラを設置し、関係機関の協力の下、岩手山の火山活動の監視・観測を行っています。
噴火警報・予報、火山の状況に関する解説情報
- 岩手山の噴火警戒レベル(PDF)
火山活動解説資料
- 岩手山の火山活動解説資料
気象庁が実施した火山観測データの解析結果や、火山活動の診断結果を掲載します。毎月1回、上旬に公表します。