平成29年 No.41 週間火山概況 (10月6日~10月12日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
11日に霧島山(新燃岳)に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。表1 10月12日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島、口永良部島 |
入山危険 | 西之島※ | |
レベル2(火口周辺規制) | 浅間山、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(活火山であることに留意) | アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
活火山であることに留意 | 上記以外の活火山* |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(10月12日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で推移しています。また山頂火口では、高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映1)が観測されました。12日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量2)は1日あたり2,000トン(前回10月4日、500トン)と多い状態でした。
山頂付近直下の火山性地震は、やや少ない状態で経過しました(図2)。火山性微動は観測されていません。
山頂の南南西にある塩野山の傾斜計3)では、西または北西上がりのわずかな変化が続いています。
火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石4)に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石4)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年10月12日)
ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測で、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。
西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
10月3日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、観測中に噴火は確認されず、火口東側内壁及び火口西側内壁から白色噴気が上がっていました。また、西之島西岸及び東岸に薄い青白色の変色水域が分布していました。
海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、8月11日以降火口からの火山灰や噴石の噴出は認められず、8月24日には溶岩流の海への流入も止まっていたとみられます。しかし、約1年半の休止期間の後、4月に噴火した経緯を踏まえると、今後も噴火が再開する可能性が考えられますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね40m以下で経過しました。
火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されていません。
GNSS5)連続観測によると、島の隆起が継続しています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊が6日に実施した上空からの観測では、変色水等は確認されませんでした。
海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
えびの高原(硫黄山)周辺では、9月5日に火山性地震が一時的に増加しました。その後、火山性地震は少ない状態で経過していますが、火山ガスや熱水が関与していると考えられる浅い低周波地震が時々観測されています。火山性微動は観測されていません。
また、10月6日以降、硫黄山の南西3km付近で地震が多発しており、9日20時02分と20時07分に発生した地震により、えびの高原周辺でわずかに身体に感じる程度の揺れがありました。
監視カメラによる観測では、噴気が稜線上200mまで上がりました。
10日に、鹿児島県の協力により実施した上空からの観測では、噴気の状態に特段の変化は認められませんでした。
硫黄山南西観測点の傾斜計で、4月25日から続いていた硫黄山方向が隆起する傾斜変動は、8月中旬から概ね停滞しています。
GNSS連続観測によると、7月頃から霧島山を挟む基線で伸びの傾向がみられており、霧島山の深い場所で膨張している可能性があります。
えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき6))に注意してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←11日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ
新燃岳では、11日05時34分頃に噴火が始まりました。新燃岳で噴火が発生したのは2011年9月7日以来です。噴煙量が増大し、火山性微動の振幅も大きくなるとともに、9日15時12分頃に発生した火山性微動に伴う傾斜変動以降、新燃岳方向が隆起する傾斜変動が継続しました。これらのことから、今後、さらに活動が活発になる可能性があると判断し、11日11時05分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。その後も噴火は継続しています。
11日に、鹿児島県及び九州地方整備局の協力により実施した上空からの観測では、火口内の東側から、灰白色の噴煙が火口縁上700mまで上がっていることを確認しました。弾道を描いて飛散する大きな噴石は確認されませんでした。
11日に実施した降灰調査の結果、宮崎市、都城市、小林市、高原町で降灰を確認しました。
11日及び12日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量はそれぞれ1日あたり800トン、1,400トンでした(前回7日は検出限界未満、最後に検出されたのは2012年9月26日、10トン)。
火山性微動は9日13時以降断続的に発生し、10日22時過ぎから発生した連続的な火山性微動の振幅は、11日03時以降消長を繰り返しながら、時々大きくなりました。また、噴煙の勢いが12日07時頃から増加し、10時50分から12時過ぎにかけて火口縁上2,000mまで上がりました。
これらの噴火に伴う大きな噴石の飛散は確認されていません。また、新燃岳周辺では噴火に伴う鳴動が聞こえているとの情報がありました。
GNSS連続観測によると、7月頃から霧島山を挟む基線で伸びの傾向がみられており、霧島山の深い場所で膨張している可能性があります。
新燃岳では活発な噴火活動が継続しています。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、噴火が19回発生し、このうち4回が爆発的噴火でした。弾道を描いて飛散する大きな噴石が最大で5合目(昭和火口より500mから800m)まで達しました。噴煙は最高で火口縁上1,900mまで上がりました。
南岳山頂火口では、噴火は観測されていません。
火山性地震は、8日まではやや多い状態でしたが、それ以降は少なくなりました。また、噴火に伴う火山性微動が発生しました。
姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流7))に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
口永良部島では、火山性地震が概ね多い状態で経過しています。また、やや振幅の大きな火山性地震も時々発生しています。
火山性微動は観測されていません。
7日と9日に東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、それぞれ1日あたり400トン及び200トン(前回9月30日、400トン)と、2017年4月以降わずかに増加した状態です。
新岳火口では、白色の噴煙が火口縁上900mまで上がりました。
GNSS連続観測では、火口に近い基線で収縮が認められています。
2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低いものの、火山性地震が増加していること、及び噴煙量や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、引き続き噴火が発生する可能性があります。
新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では、噴火活動が続いています。
御岳(おたけ)火口では、11日に噴火が2回発生し、01時43分の噴火では、噴煙が火口縁上1,900mまで上がりました。
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西4kmの集落では降灰は確認されませんでした。
同火口では、概ね期間を通して夜間に高感度の監視カメラで火映を観測しました。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過しています。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
秋田駒ヶ岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]
秋田駒ヶ岳では9月14日に地震活動が一時的に活発化しましたが、その後は観測データに特段の変化は認められません。12日に実施した現地調査では、女(め)岳(だけ)及びその周辺で噴気活動や地熱活動に特段の変化は認められませんでした。
女岳では地熱活動が続いていますので今後の火山活動の推移に注意してください。
山に立ち入る際には、最新の火山情報を確認してください。異常を感じたら、ただちに下山するなどの行動をとってください。
白山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]
10日22時03分に山頂付近の深さ約3kmを震源とするマグニチュード2.3(暫定値)の地震が発生し、その後、11日08時頃にかけて振幅の小さな地震が増加しました。低周波地震や火山性微動は観測されておらず、11日09時以降地震は観測されていません。発生した地震の日回数は10日118回、11日12回でした。白峰監視カメラ(白山山頂の西約12km)による観測では、特段の変化は認められません。
白山ではこれまでにも一時的な地震の増加が時折みられており、今回の活動も、これらと同様の活動とみられます。その他の観測データに変化はなく、噴火の兆候は認められません。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html
1) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
2) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
3) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
4) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
5) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
6) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
7) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (10月6日~10月12日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
10月11日 11時05分 | 霧島山(新燃岳) | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベル3(入山規制)に引上げ |
10月12日 08時17分 10月12日 09時42分 10月12日 15時35分 |
霧島山(新燃岳) | 降灰予報(詳細) | 噴火発生から6時間先までに予想される 降灰量分布や降灰開始時刻を予想 |
毎日 02時から3時間毎に8回 | 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 桜島 口永良部島 諏訪之瀬島 降灰予報(定時) |
降灰予報(定時) | 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想 |
10月6日11時以降11日08時まで、毎日 02時から3時間毎に8回 10月11日12時以降、毎日 02時から3時間毎に8回 |
霧島山(新燃岳) | 降灰予報(定時) | 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想 |
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(活火山であることに留意) | 活火山であることに留意 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。