平成29年 No.17 週間火山概況 (4月21日~4月27日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 4月27日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、浅間山、御嶽山、霧島山(新燃岳) 、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、新潟焼山、焼岳、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(4月27日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 東京工業大学によると、2014年以降、湯釜湖水は、高温の火山ガスに由来する成分の濃度上昇が続き、火山活動が活発な状態であることを示していましたが、2016年半ばには、濃度の上昇傾向は止まり、2017年に入って、減少傾向がみられ始めています。全磁力観測1)によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示唆する変化は、2014年7月には停滞しています。火山性地震は2014年8月以降少ない状態が続き、地殻変動観測でも2016年4月以降、湯釜付近の収縮を示す変化がみられています。
 草津白根山の火山活動は、静穏化の傾向がみられ始めたものの、引き続き、小噴火が発生する可能性があります。湯釜火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。また、ところどころで火山ガスの噴出がみられ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂直下のごく浅い所を震源とする火山性地震の活動は、2015年4月頃から高まった状態で経過しています(図2)。山頂の南南西にある塩野山の傾斜計3)では、2016年12月頃から北または北西上がりのわずかな変化が観測されています。国土地理院のGNSS4)連続観測によると、浅間山を南北に挟む基線で2016年秋頃から小さな伸びがみられています。
 27日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量5)は1日あたり600トン(前回4月12日1,400トン)とやや多い状態でした。山頂火口では、2016年12月末頃から高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映6)が時々観測されています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年4月20日)
(矢印はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年4月20日) (矢印はごく小規模な噴火を示す)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で経過しています。
 山頂直下の地震活動は、回数は少ないながらも継続しています。
 GNSS連続観測によると、2014年10月以降、山体付近の収縮によると考えられる縮みの傾向がみられています。
 2014年10月以降噴火の発生はなく、火山活動は緩やかな低下傾向が続いていますが、山頂火口の噴煙活動や地震活動は続いているため、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁が4月20日及び21日に実施した上空からの観測では、明神礁付近の海水面に気泡が観測されました。気泡が観測された箇所の海水面は周辺に比べて低温でした。
 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部による3月の観測によると、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水が時々観測されました。現在も火山活動の活発な状態が続いていると考えられ、今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 西之島では、活発な噴火活動が続いています。
 海上保安庁が21日に実施した上空からの観測によると、島の中央部やや南に位置する火砕丘でストロンボリ式の噴火が数十秒間隔で発生し、白色の幅500m、高さ1,000mの噴煙が北へ流れていました。火口内には赤熱した溶岩が観測され、火砕丘の北側に新たな噴火口と溶岩流出口が開口しているのが確認されました。さらに、東京大学地震研究所が21日及び25日に実施した上空からの観測では、上記に加えて溶岩流の島西側への流下が継続し、溶岩先端が幅200mにわたり海に流入しているのが確認されました。東京大学地震研究所の解析によると、溶岩の平均噴出量は溶岩が流出し始めたと推定される18日から21日までは1日あたり約13万m3でしたが、その後、21日から25日までは1日あたり約19万m3とやや増加しました。この値は2013年から2015年噴火時の平均噴出率と同程度です。
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力による陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測結果を用いた解析によると、火砕丘を中心に沈降と推定される地殻変動が認められました。
 今後も噴火が続くおそれがありますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は、やや少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、地殻変動は長期的に隆起及び停滞を繰り返しています。最近では、2017年1月頃から隆起速度がやや上がった状態が続いています。
 監視カメラでは特段の変化は認められません。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 噴煙は火口縁を越えるものは認められません。
 24日に実施した現地調査では、前回(2016年12月24日)と同様に、火口内で消散する程度の噴煙と西側斜面の割れ目付近での弱い噴気を確認しました。また、赤外熱映像装置による観測では、火口内に蓄積された溶岩、火口壁及び西側斜面の割れ目付近で熱異常域7)を確認しました。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 新燃岳では、火口内及び西側斜面で弱い噴気や熱異常域が引き続き確認されていることから、今後の火山活動に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、26日以降、小規模な噴火が4回発生しました。噴煙は最高で火口縁上2,000mまで上がりました。大きな噴石が火口周辺に飛散しました。昭和火口で噴火を観測したのは、2016年7月26日以来です。
 南岳山頂火口では、噴火は観測されていません。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。噴火に伴う火山性微動が発生しました。
 姶良カルデラの地下深部の膨張が継続していることから、今後も噴火活動が継続すると考えられます。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流8)に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき9))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、噴火は観測されていません。
 新岳火口では、白色の噴煙は最高で火口縁上300mまで上がりました。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 24日に実施した現地調査では、前回(4月12日)と比べて噴煙及び熱異常域の状況に変化は認められませんでした。また、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり100トンでした。
 新岳火口付近のごく浅い地震の増加が時々みられることや、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低くなっているものの、引き続き噴火の可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では、噴火は観測されていません。
 御岳(おたけ)火口では、白色の噴煙が最高で火口縁上400mまで上がりました。
 同火口では、高感度の監視カメラで夜間に火映が時々観測されました。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]

 えびの高原(硫黄山)周辺では、25日11時頃から硫黄山南西観測点の傾斜計で、硫黄山方向が隆起する傾斜変動が繰り返しみられています。その他の傾斜計には特段の変化は認められません。
 27日に気象庁機動調査班(JMA-MOT)が実施した現地調査では、硫黄山の火口周辺で引き続き噴気活動や大きな噴気音が認められました。赤外熱映像装置による観測では、硫黄山火口周辺で引き続き熱異常域が認められ、熱異常域のわずかな広がりを確認しました。
 監視カメラによる観測では、28日に噴気が稜線上で最高200mまで上がるなど、噴気活動が活発化しています。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 監視カメラや現地調査では、長期的に熱異常域の拡大や噴気の量の増加が認められます。
 火口内では、火山灰、噴気、火山ガス等の規模の小さな噴出現象が突発的に発生し、硫黄山南西側にある登山道などにも影響する可能性があります。
 噴気地帯の周辺では、火山ガス(硫化水素)にも注意してください。地元自治体が実施している立ち入り規制等に留意してください。引き続き今後の火山活動の情報に注意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火山体の南側で全磁力を観測した場合、全磁力値が減少すると火山体内部で温度上昇が、全磁力値が増加すると火山体内部で温度低下が生じていると推定されます。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
6) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
7) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置とは、物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
8) 火砕流とは、火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
9) 桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (4月21日~4月27日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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