平成29年 No.12 週間火山概況 (3月17日~3月23日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 3月23日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、浅間山、御嶽山、霧島山(新燃岳) 、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、新潟焼山、焼岳、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(3月23日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 東京工業大学によると、2014年以降、湯釜湖水の化学組成は火山活動の活発化を示す状態であることが確認されています。また、全磁力観測1)によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示唆する変化は、2014年7月に停滞したものの、温度低下を示唆する変化には転じていません。
 なお、監視カメラによる観測では、引き続き湯釜北側噴気地帯や湯釜火口内の状況に特段の変化は認められません。火山性地震は少なく、地殻変動観測に特段の変化は認められません。
 小規模な噴火が発生する可能性があるため、湯釜火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。また、ところどころで火山ガスの噴出がみられ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂直下のごく浅い所を震源とする火山性地震は、多い状態で経過しています(図2)。山頂の南南西にある塩野山の傾斜計3)では、2016年12月頃から北または北西上がりのわずかな変化が観測されています。国土地理院のGNSS4)連続観測によると、浅間山を南北に挟む基線で2016年秋頃から小さな伸びがみられています。
 22日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量5)は1日あたり3,200トン(前回3月16日900トン)と多い状態でした。山頂火口では、2016年12月末頃から高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映6)が時々観測されています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年3月23日)
(矢印はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年3月23日) (矢印はごく小規模な噴火を示す)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね700m以下で経過しています。
 山頂直下の地震活動は、回数は少ないながらも継続しています。
 GNSS連続観測によると、2014年10月以降、山体付近の収縮によると考えられる縮みの傾向がみられています。
 2014年10月以降噴火の発生はなく、火山活動は緩やかな低下傾向が続いていますが、山頂火口の噴煙活動や地震活動は続いているため、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は、やや少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、地殻変動は長期的に隆起及び停滞を繰り返しています。最近では、2017年1月頃から隆起速度がやや上がった状態が続いています。
 監視カメラでは特段の変化は認められません。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は、13日から15日にかけて一時的に増加しましたが、その後は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 17日と21日に実施した現地調査では、新燃岳の西側斜面の割れ目付近の形状、噴気及び熱異常域7)の状況に特段の変化は認められませんでした。
 傾斜計では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 噴煙は火口縁を越えるものは認められず、火口内で消散しました。
 GNSS連続観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2015年1月頃から停滞しています。
 新燃岳では、火口内及び西側斜面で弱い噴気や熱異常域が引き続き確認されていることから、今後の火山活動の推移に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火は観測されていません。
 南岳山頂火口では、白色の噴煙が最高で火口縁上400mまで上がりました。
 火山性地震は、19日以降やや多い状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測によると、姶良カルデラの膨張を示す基線の伸びの傾向は、2016年11月頃から一部の基線で鈍化が認められるものの、継続しています。
 桜島の噴火活動は2016年8月以降低下していますが、姶良カルデラの地下深部の膨張が継続していることから、火山活動が再び活発化する可能性があります。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流8)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき9))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、噴火は観測されていません。
 新岳火口では、白色の噴煙は最高で火口縁上400mまで上がりました。
 22日に実施した現地調査では、前回(3月7日)と比べて噴煙及び熱異常域の状況に変化は認められませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 新岳火口付近のごく浅い地震の増加が2月にみられていたことや、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低くなっているものの、引き続き噴火の可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では噴火は観測されていません。
 御岳(おたけ)火口では、白色の噴煙は最高で火口縁上600mまで上がり、夜間に高感度の監視カメラで火映が時々観測されました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

白山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]

 17日に山頂付近の深さ3~4km付近を震源とする振幅の小さな火山性地震(最大でマグニチュード0.6(暫定値))が一時的に増加しました。17日の日回数は42回でした。18日以降は静穏に経過しています。低周波地震や火山性微動は観測されていません。
 白山では、過去にも一時的な地震増加がみられています。それらに比べると、今回の活動は小規模で、その他の観測データの変化はなく、噴火の兆候は認められません。
 噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)の予報事項に変更はありません。


阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]

 阿蘇山では、火山性微動の振幅が20日の08時頃から20時頃までやや大きくなりましたが、21日以降は小さな状態で経過しています。
 中岳第一火口では、白色の噴煙は最高で火口縁上700mまで上がり、夜間に高感度の監視カメラで火映が時々観測されました。
 火山性地震は、やや多い状態で経過し、孤立型微動はやや少ない状態で経過しています。
 17日と22日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたりそれぞれ700トン、1,000トン(前回3月14日1,200トン)とやや少ない状態でした。
 22日に実施した現地調査では、中岳第一火口内に緑色の湯だまりを確認し、湯だまりの量は中岳第一火口底の約9割(前回3月16日:約9割)でした。赤外熱映像装置による観測では、湯だまり表面の最高温度は約40度で前回(3月16日:約40度)と同程度でした。
 傾斜計では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 GNSS連続観測では、2016年7月頃から認められていた、草千里深部にあると考えられているマグマだまりの膨張を示す基線の伸びは、11月中旬以降は停滞しています。
 活火山であることから、火口内では土砂や火山灰を噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。なお、地元自治体等が実施している立入規制等に留意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火山体の南側で全磁力を観測した場合、全磁力値が減少すると火山体内部で温度上昇が、全磁力値が増加すると火山体内部で温度低下が生じていると推定されます。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
6) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
7) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置とは、物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
8) 火砕流とは、火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
9) 桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (3月17日~3月23日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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