平成26年 No.02 週間火山概況 (平成26年1月3日〜1月9日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年1月3日〜1月9日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 1月9日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 西之島※、硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月9日)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過しました。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
西之島では、活発な噴火活動が続いています。
3日に第三管区海上保安本部が行った上空からの観測では、新島にある2カ所の火口から薄い褐色と灰白色の噴煙をそれぞれ放出しているのが確認されました。西之島と新島の接続部分は、幅約300mと長くなっており、溶岩流は、新島の東側及び西側の両側に大きく拡張していることが確認されました。また、新島南東岸から東南東方向に幅約200m、長さ800mに伸びる帯状の変色水域が認められました。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年9月頃からほぼ停滞していましたが、11月頃から沈降に転じています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]
阿蘇山では、2013年12月20日頃から火山性微動の振幅が大きくなっていましたが、1月2日から急激に小さくなり、3日以降は小さな状態で経過しています。
孤立型微動及び火山性地震は少ない状態で経過しています。
7日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は1割以下で、火口底の中央付近では、高さ5m程度の土砂噴出を確認しました。また、火口底のごく一部に高温域が認められました。また、同日の現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,200トン(前回12月31日、900トン)と多い状態でした。
阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)に注意してください。

図2 阿蘇山 平均振幅(中岳西山腹地震計)及び二酸化硫黄放出量経過図(2013年7月1日〜2014年1月3日)

図3 阿蘇山 中岳第一火口底の写真(左)及び熱映像(右)(2014年1月7日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、噴火活動が続いています。 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計及び伸縮計では、2013年12月19日頃から山体の膨張と考えられるわずかな変化が継続していましたが、12月31日以降は収縮に転じ、1月2日以降は停滞しています。
昭和火口では今期間、爆発的噴火が2回発生し、大きな噴石1)は最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
南岳山頂火口では今期間、噴火は発生しませんでした。
6日と9日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり、それぞれ1,200トンと1,900トン(前回12月24日、1,700トン)とやや多い状況でした。
GPS連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、6月頃から停滞気味です。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島の御岳(おたけ)では、2013年12月26日以降、活発な噴火活動が続いています。
御岳火口では今期間、爆発的噴火が7回発生しました。遠望カメラでは、火口付近に飛散する噴石を時々観測しました。夜間には、期間を通して高感度カメラで火映を観測しました。また、噴煙の最高高度は火口縁上1,000mでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、6日から7日にかけて火山性微動を観測しました。
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西約4kmの集落では、3日に爆発音や鳴動が確認されています。また、6日にごく少量の降灰が確認されています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
樽前山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
2013年7月から活発化した山体西側を震源とする地震活動は、9月以降、低調に経過していますが、9日09時29分にマグニチュード2.7の地震が発生し、伊達市大滝区本町、白老町緑丘で震度1を観測しました。震度1以上の地震が発生したのは2013年9月23日以来です。山頂溶岩ドーム直下の地震活動には、特段の変化はありません。
山頂溶岩ドーム周辺では、1999年以降、高温の状態が続いていますので、突発的な火山ガス等の噴出に注意してください。
蔵王山 [噴火予報(平常)]
蔵王山では、3日の14時05分頃に火山性微動が発生しました。火山性微動の発生は2013年12月8日以来です。坊平観測点での継続時間は約1分と短く、最大振幅(上下動)も0.5μm/sと小さなものでした。微動発生前後に火山性地震が4回発生しましたが、期間内の地震回数は9回となっており、地震活動の活発化はみられませんでした。
今期間、傾斜計2)、GPS連続観測、空振計の各データに特段の変化はみられませんでした。
ただちに噴火する兆候は認められませんが、2013年1月頃以降、火山活動の高まりがみられますので、今後の活動の推移に注意してください。

図4 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日〜2014年1月9日)
伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
2013年12 月21 日頃から伊豆大島の東部を中心に火山性地震が増加していましたが、1月3日08時21分に伊豆大島の東部を震源とするマグニチュード2.7の地震が発生し、大島町波(は)浮(ぶ)港と大島町差木地(さしきじ)で最大震度2を観測しました。火山性地震の回数は、3日には80回を観測しましたが、5日以降、少ない状態で経過しています。
GPSによる観測では、地下深部へのマグマの供給によると考えられる島全体の長期的な膨張傾向が続いていますが、2011 年頃から鈍化してきています。その他の観測データには、活動状態の変化を示すデータはみられず、火山活動は概ね静穏に経過しており、噴火の兆候は認められません。

図5 伊豆大島 地震活動の状況
左:震央分布図(2007年1月1日〜2014年1月9日)
右:日別地震回数(2013年12月1日〜2014年1月9日)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。