平成24年 No.48 週間火山概況 (平成24年11月23日〜11月29日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 29日、薩摩硫黄島に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)へ引き下げました。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(11月23日〜11月29日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
29日11時00分 薩摩硫黄島 噴火予報 噴火警戒レベル1(平常)へ引き下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 11月29日現在の噴火警報・予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(11月29日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は、火口縁上100〜300mで経過しました。
 火山性地震はやや多い状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓では時々やや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動は、27日に1回観測されましたが、継続時間は1分10秒程度と短いものでした。火山性微動が観測された時間帯に、火山性地震の増加や空振、表面現象は認められませんでした。硫黄島で火山性微動が観測されたのは、2012年9月28日以来です。
 国土地理院の観測によると、今期間、地殻変動はほぼ停滞しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011 年12 月頃から鈍化し、2012 年1月以降ほぼ停滞しています。6月頃からはわずかながら地盤の縮みの傾向がみられます。
 しかし、火口には多量の溶岩が溜まっており、火口直下の火山性地震がわずかながらも続いていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。  新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。降雨に関する情報に留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が14回発生しました。このうち、29日03時58分および05時37分の爆発的噴火では、大きな噴石2)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m)まで達しました。
 南岳山頂火口では、期間中、ごく小規模な噴火が時々発生しました。
 火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。
 国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
 また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間、爆発的な噴火はありませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。また、十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、25日にはごく少量の降灰を確認しました。
 火山性地震は少ない状態で経過しました。また、9月28日からほぼ連続して火山性微動を観測しています。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

薩摩硫黄島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 薩摩硫黄島では、2003年頃から活発な噴煙活動が続いていましたが、2009年中頃からやや低下した状態で経過しています。火山性地震も2009年3月頃から増加し多い状態で経過していましたが、2010年9月以降少なくなっています。
 11月17日から20日にかけて実施した現地調査では、前回(2012年7月)と同様に、噴気地帯等の一部に高温域が認められる程度で、特段の変化は認められませんでした。
 以上のことから、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、29日11時に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)へ引き下げました。
 第十管区海上保安本部が25日に実施した上空からの観測によると、従来と同様に東部の海岸を中心に褐色〜緑色の変色水が見られました。また、硫黄岳の東側斜面、山頂火口から噴気が見られました。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、硫黄岳火口では噴煙活動が続いており、火口内では火山灰等の噴出する可能性があります。
 また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要です。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)データについては精査により、後日修正することがあります。


【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。


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