平成24年 No.27 週間火山概況 (平成24年6月29日〜7月5日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(6月29日〜7月5日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 7月5日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺警報及び火山現象に関する海上警報 | 火口周辺危険及び周辺海域警戒 | 硫黄島 |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報発表中の火山(7月5日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は、火口縁上50mを観測した日がありましたが、その他の期間は悪天候のため、不明でした。
火山性地震はやや少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓では時々やや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
4月下旬から5月初めにかけて火山活動が活発化し、国土地理院の地殻変動観測でも、急速な隆起の後に沈降を観測しましたが、その後沈降傾向は鈍化し、今期間はほぼ停滞しています。火山性地震は少ない状態で経過しており、火山性微動は観測されませんでした。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、2012年1月以降ほぼ停滞していましたが、一部の基線では5月頃からわずかに縮みの傾向がみられます。
しかしながら新燃岳の北西地下深くのマグマだまりには相当量のマグマが蓄積されています。また、新燃岳直下の火山性地震の活動や火山ガスの放出も少ないながらも続いており、火口には高温の溶岩が溜まっていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。
新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が13回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。
4日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり1,800トン(前回6月22日、1,800トン)とやや多い状態でした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いています。29日に同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳火口では今期間噴火は観測されませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。
火山性地震は少ない状態が続いています。振幅の小さな火山性微動が時々発生しています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
十勝岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
6月30日19時35分頃から大正火口付近が高感度カメラで明るく見える現象が観測され、7月1日未明にかけて次第に強まりながら継続し、日の出と共に認められなくなりました。同現象は、7月1〜4日の夜間にも観測されましたが、明るく見える領域は次第に小さくなっており、7月5日の夜間は観測されていません。この現象は火口内での高温の火山ガスの噴出や硫黄の燃焼等によるものと推定されます(図2)。
1日朝以降、大正火口から噴出したやや多量の火山ガスが、十勝岳北西斜面を流れ下る状態が続いていましたが、3日頃から風向が西風に変化し東方(十勝地方側)に流れています(図3)。 1日に北海道の協力により実施した上空からの観測では、大正火口東壁に従来からみられている地熱域の中に、高温領域4)が確認されました(図4)。また、大正火口周辺に火山灰などの噴出物は認められませんでした。同日、十勝岳西側山麓で実施した火山ガス観測では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり600トンとやや多い状態でした。
4日に十勝岳北西山麓で実施した観測では、1日の現地調査に比べ大正火口東壁の高温領域4)が縮小し、温度が低下しているのを確認しました(図5)。
今期間は上記の現象以外、火山性地震は少なく、傾斜計やGPSによる地殻変動に特段の変化は認められませんでした。また、62-2火口の噴煙の状況にも特段の変化はありませんでした。
現在のところ火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、大正火口や62-2火口付近には近付かないよう注意してください。
図2 十勝岳 大正火口付近が夜間に高感度カメラで明るく見える現象の状況(北海道開発局望岳台遠望カメラ)
図3 十勝岳 大正火口の火山ガス及び噴気の状況(北海道開発局望岳台遠望カメラ)
図4 十勝岳 赤外熱映像装置4)による大正火口及び周辺の地表面温度分布図(北西側上空から撮影)
図5 十勝岳 赤外熱映像装置4)による大正火口及び周辺の地表面温度分布図(火口から3.5kmの富良野川西岸から撮影した画像を拡大)
阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
中岳第一火口では、火山活動がわずかながら高まっています。
孤立型微動および火山性地震は少ない状態ですが、2月頃からわずかながら増加傾向を示しています。
中岳第一火口の湯だまりの表面温度は、6月上旬から70℃前後の高温状態が続いており、今後の推移に注意が必要です。
火口内では土砂や火山灰の噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、 「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)赤外熱映像装置により観測しています。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度や温度分布を測定する計器です。熱源から離れた場所から測定できる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
注)データについては精査により、後日修正することがあります。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。